日本で出会ったイルカとクジラ【第7回】クジラの目

りんごサイズの目

写真:真横から見たクジラの目

皆さんは、クジラの目を見たことがありますか?

ザトウクジラを間近で観察したときに気づいたのですが、大きな体をしている割に、クジラの目はとても小さいのです。ザトウクジラのメスは、成長すると10〜13メートルほどになりますが、目の大きさはりんごくらいだと言われています。仮にりんごの直径を12センチメートルとすると、体の80~100分の1ほどしかありません。

なぜ体が大きくなっても目は小さいままなのか、はっきりとした理由は明らかになっていませんが、「水の抵抗を減らすため」「深く潜ったときの水圧に耐えるため」だと考えられています。

写真:真下を通り過ぎるザトウクジラ

こちらは、呼吸をするために浮上してきたザトウクジラが、私の真下を通過した瞬間の写真です。

クジラの眼球は下向きについているため、真上が見えにくいと言われています。私たち人間が水面側にいるときは、水深20メートル程度のところでお腹を水面へ向けて観察してくることもあります。

クジラを観察するときには、浮上してくる場所を予測して、クジラから遠くはないもののぶつからない場所で待ちます。しかしこのときは、クジラがドンピシャで私のいる方に向けて浮上してきたのです。そのまま、私のいる場所の5メートルほど下を泳ぎ去っていきました。クジラは真上が見えにくいため、私がもう少し深いところにいたらクジラに乗り上げていたかもしれないと考えると、今でもドキドキします。あまりの大きさに畏怖の念を抱いた出来事でした。

Uターンする子クジラ

ザトウクジラの子育ては、家庭によってさまざまです。

うまく体を使って子どもの泳ぐ方向をコントロールして離れていかないようにしている家庭や、泳いでいく子どもの姿を心配そうに見守っている家庭、人間のいる方向に子どもが遊びに行っても我関せずとばかりに自由にさせている家庭など。

写真:こちらに近づいてきた子クジラ

こちらの写真のザトウクジラはまだ子どもなのですが、放任主義の家庭だったようです。私の近くに浮上してきて、一度は立ち去ったかと思いきやこちらにUターンをし、私のことを見つめながら深い海に戻っていきました。

そのときにしか会えないクジラがいたり、見られない瞬間があったりするからこそ、何度でもワクワクした気持ちで海に出られるのです。

【文・写真】
あき
1996年大阪府生まれ、東京都在住。水族館や水中、音楽ライブの撮影のほか、雑誌、Webメディアへの寄稿などを行う。2017年、水族館の生きものを綺麗に撮影したいと思い、写真を始める。2023年、国際フォトコンテスト8TH 35AWARDS「UNDERWATER PHOTOGRAPHY」で100Best photo選出、Top35 photographers選出。ほか『幻想的な水族館の世界カレンダー2024』(緑書房)など。
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