日本で出会ったイルカとクジラ【第8回】御蔵島で出会ったイルカの話

2024年4月下旬、約1年ぶりに伊豆諸島の御蔵島を訪れました。

例年、ドルフィンスイムは3月中旬ごろから開始されます。しかし今年は4月中旬まで悪天候が続き、ほとんどの日において海に出られない状況でした。私が訪れる予定だった日も、1週間前の時点では北西10メートル以上の風が予報されており、「今回は行けないかな」と不安になっていました。しかし、訪問の3日前に急に天気が好転したのです。最終的には波も風も穏やかで、気温も少し暑く感じる25℃前後と、最高のコンディションで当日を迎えられました。

イルカの授乳タイム

4月ごろはイルカの出産シーズンなので、子連れのイルカに出会えることを期待しながら御蔵島を訪れました。そして初日の午後に、さっそく子連れのイルカの群れに出会えました。

雄イルカは交尾後の子育てに参加しないため、妊娠した雌イルカは他の雌イルカと群を形成して、出産後はみんなで子どもを守りながら子育てをします。

私がスイムしていたときは少し珍しい授乳シーンを観察できました。イルカの親子から私を遠ざけるかのように、他のイルカが親子と私の間に入ってきたのです。その様子から「みんなで育てる」という思いが伝わってきたため、少し離れたところからシャッターを切りました。

実はこの写真に写っている、背鰭の欠けたお母さんイルカは、連載の第2回に登場したジョーです。2年前にも子どもを連れていましたが、そのときは上手く育てられなかったようです。今回は母子共に元気に過ごしてほしいと願うばかりです。

イルカまみれ

御蔵島の周辺には100~150頭ほどのミナミハンドウイルカが生息しています。今回出会えたのは、20~30頭の群れでした。

太陽の光が差し込んでおり、透明度も海況も良い海で、海底に沈んでイルカを眺めます。このときは遊ぶ気分ではなかったのか、人には見向きもせずに、仲間と一緒に泳ぎ去っていきました。しかし、美しい海とイルカの群れを眺めるだけで穏やかな気持ちになれました。

好奇心が旺盛なイルカたち

こちらは、翌日に出会ったイルカの群れの写真です。遊びたい気分だったのか、カメラに興味をもったのか、私の周りを泳いだり、カメラを覗き込んだりする個体が多かったように感じました。

イルカの体長は2~2.5メートルほどであり、自分よりも大きいため、近くで観察できると迫力があります。少しドキドキしながら一緒に泳いだのが、良い思い出となりました。

【文・写真】
あき
1996年大阪府生まれ、東京都在住。水族館や水中、音楽ライブの撮影のほか、雑誌、Webメディアへの寄稿などを行う。2017年、水族館の生きものを綺麗に撮影したいと思い、写真を始める。2023年、国際フォトコンテスト8TH 35AWARDS「UNDERWATER PHOTOGRAPHY」で100Best photo選出、Top35 photographers選出。ほか『幻想的な水族館の世界カレンダー2024』(緑書房)など。
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