フォトエッセイ 猫とのほほん日和【第10回】ニンゲン語を話すセロくん

1匹になってしまったセロくん

第9回でご紹介した白黒猫のオーちゃんとセロくん、通称「オセロ兄弟」とは、その後も頻繁に会っていました。地域の猫好きの皆さんも、兄弟の面倒を見たり、見守ったりしていました。

ところが、ある日突然、オーちゃんがいなくなりました。いろいろなところを必死で探し、いろいろな人に聞き込みをしましたが、いっこうに見つかりません。セロくんに「オーちゃんはどこへ行ったの?」と尋ねても、答えが得られるはずもなく……。

最終的には「オーちゃんがどこかの家に貰われていたら安心だよね」とセロくんに話しかけることとなりました。オーちゃんの幸せを願っています。

いつもそばにいたオーちゃんがいなくなった後に、セロくんが1匹で地域の方とうまく付き合いながら暮らす姿をみていると、つい「かわいそう」「健気」と考えてしまいます。しかし、セロくん自身がどう考えているのかはわかりません。一度、セロくんとしっかり話してみたいものです。

ニンゲン語でもネコ語でもセロくんに首ったけ!

ところで、セロくんはときどき人の言葉に近い音を発します。僕にはニンゲン語で話しているようにしか聞こえません。

僕が遠方への旅行から帰ってきて久しぶりに会ったときは、第一声で「セロ」と言われました。「ごはん!」と言われたこともあります。またあるときには「ありがとう」と言われて驚きました(これは動画にも残っています)。

驚いたことに「あほ!」と言われたこともあります。そのときは、僕としても関西の流れで「やかましいわ」と突っ込みました。

「猫が人の言葉を話す」というありそうにないことも、頭ごなしには否定せずに、いったんそのまま飲み込むことにしています。しかし動物と人の関係では、言葉で思いを伝えることよりも、一緒にいた時間や、その時間でできた信頼、フィーリングなどが大切です。今の僕は、「セロ」と呼ぶとネコ語で「ニャン」と返事をしながら来てくれるセロくんに首ったけです。

なお、今年はセロくんと一緒に4回ほど花見を楽しみました。今年の春は、セロ色に染まってしまいました。

【文・写真】
山本正義(やまもと・まさよし)
大阪在住の猫写真家。猫が立ち上がる瞬間をとらえた「立ち猫」写真でブレーク。ちょっぴり力の抜けた「脱力猫」、凄い勢いの「猫来る」、気の抜けた感じの「舌猫(ぺろにゃん)」、猫が集団で行進する「ずんずんずん」など、愛らしい猫たちをとらえた写真とユニークなワードセンスがSNSなどで注目を集めている。写真展、メディア出演、講演などで各地を飛び回る日々。ほか『立ち猫カレンダー2024』(緑書房)、写真集『立ち猫』(ナツメ社)など。
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