フォトエッセイ 猫に呼ばれて世界の街へ【第15回】猫たちが教えてくれた南仏の過ごし方 (フランス)

地中海とアルプス山脈に挟まれたフランスのコート・ダジュール地方は、地中海の碧い海と穏やかな気候で知られる世界屈指のリゾート地です。
南仏のこの一帯には、ニース、カンヌ、アンティーブといった街が軒を連ねています。

温暖な気候を活かして柑橘類の栽培が盛んで、鮮やかな実をつけた街路樹のオレンジの木が、街に温かな彩りを添えていました。

ニースとモナコの間に位置するエズ村は、歴史の趣と絵本の世界のような街並みが調和した、人気スポットです。
崖の上にそびえるこの村では、散策中に見下ろす地中海の景色が一際美しく、その深い碧さに心を奪われました。

そんな崖の途中で、三毛猫と目が合いました。
ひとりで過ごしたくてこんなところにいるのかと思いきや、飼い主さんの姿を見つけると尻尾をピンと立てて駆け寄っていき、その姿に思わず微笑んでしまいました。
ツンデレな仕草はどこか人間味もあって愛おしさを感じます。

コート・ダジュール地方には、こうした美しい街や村が点在しており、電車や路線バスを乗り継いで訪ね歩きました。
フランスでは、基本的にどんな物件でもペットが飼えるそうです。
玄関に猫が自由に行き来できるドアが付いていたり、窓辺に猫用ベッドが置かれていたりと、猫との生活の様子が伺える家が多く見られました。

黒猫が家の出入口でひなたぼっこをしていました。
家の中で最も陽の当たる場所に置かれたクッションから、飼い主さんの愛情が感じられました。

草むらに紛れて熟睡している猫もいました。猫の目の前ではパーティーが開かれていましたが、少々騒がしいほうがこの猫には心地いいのでしょう。

花が咲く路地裏では、猫が景色に溶け込んでいました。
自分だけのお気に入りの場所で静かな時を過ごす様子が、南仏の穏やかな気候を象徴するかのようでした。

各所で出会った猫たちの姿を眺めていると、まるで彼らが
「こうやって過ごせばいいんだよ」
と教えてくれているようで、いつしか心が緩み、時間を忘れてただのんびりと過ごしたくなりました。

【文・写真】
町田奈穂(まちだ・なほ)
埼玉県出身。世界中を旅しながら、地域の猫を撮影している。猫の表情や仕草、猫が暮らす環境の色と光に重点を置いた写真が特徴。2023年に世界一周旅行を達成し、初の個展を開催。その他、企業カレンダーやグループ展など精力的に活動中。
Instagram:cat_serenade
X:naho_umineko