フォトエッセイ 猫に呼ばれて世界の街へ【第29回】あたたかな街(ジョージア)

好きな色はありますか?
私は海が好きなので、自然と「青」に惹かれます。

そんな私は、「青の都」と呼ばれるサマルカンド(ウズベキスタン)という街に興味があり、いつか自分の目で見たいと思っていました。
そこで、今年の秋の旅はウズベキスタンを目指すことにしました。聞くところによると、9月頃から果物が豊富でおすすめとのこと。時期的にもちょうど良さそうです。

ウズベキスタンへ向かう途中、ジョージアとアゼルバイジャンに寄り道をしました。どちらも短い滞在でしたが、印象深い時間でした。今回はまず、ジョージアからお話ししたいと思います。

ユーラシア大陸・南コーカサスに位置するジョージア(旧グルジア)。首都トビリシの旧市街は、古い石造りの家々が並び、どこを切り取っても絵になるような美しい街です。丘の上には旧市街を見下ろすように教会が建ち、その歴史は5世紀にさかのぼるといいます。

トビリシには温泉街もあり、かすかに硫黄の香りが漂ってきました。街の名前「トビリシ」は、現地の言葉で「あたたかい」を意味する「トビリ」に由来するそうです。なるほど、温泉の文化が根付いているのも頷けます。

さて、ここからはトビリシの街で出会った猫たちを紹介したいと思います。坂の多い街を上ったり下ったりしていると、あちこちで猫の姿を見かけました。

ちょうどこの時期、ジョージアはザクロの季節。街じゅうで見かけるザクロの木は赤い実をたわわにつけ、果汁を搾った生絞りジュースの屋台もあちこちに出ていました。そんなザクロの木のある家の屋根の上で、猫がひなたぼっこをしていました。

このあと旅が進むうちに気づいたのですが、アゼルバイジャンでもウズベキスタンでも、同じようにザクロが旬を迎えていました。ザクロの赤い実は、私の旅の行く先々に案内人のように現れ、気づけば「ザクロの旅」になっていました。

そして、ジョージアといえば、世界最古のワイン産地としても知られています。街のいたるところにワインショップがありました。

突然雨が降ってきて、雨宿りのつもりでたまたま入った店では、テーブルの上で猫が眠っていました。お客さんが試飲をしながら、その猫をやさしく撫でていました。

2階建ての建物ほどもある高い棚には、ボトルがびっしりと並んでいて、ワインの香りに包まれた空間で、猫も人もそれぞれの時間を楽しんでいました。

街を歩いていると、扉や壁などに猫をモチーフとした絵が描かれているのをよく見かけました。どの絵もユーモアと愛嬌があり、猫がこの街の一員として溶け込んでいるのを感じます。

宿泊予定のホテルにチェックインしようと入ると、フロントの椅子で猫が眠っていました。スタッフは猫を起こさぬよう、椅子の手前に浅く腰かけて手続きをしてくれました。もう一匹黒猫もいて、猫たちはホテルのスタッフとしてのびのびと働いていました。

カップルが一匹の猫をふたりで撫でている光景にも出会いました。猫はご満悦の表情で、見ているこちらまで頬がゆるみます。

街の人々と猫との距離は程よく、優しかったです。どの猫も毛並みがつややかで、健康そうでした。水やごはんも用意されていて、人と猫がこの街で共に暮らしていることが伝わってきました。

そして、犬の姿もよく見かけました。耳には小さなタグがつけられており、それは避妊・去勢手術やワクチン接種を受けた印だと聞きました。彼らは穏やかに街角で眠り、それを邪魔するような人もいません。支配せず、排除せず、その絶妙なバランスの上に、街の日常が成り立っているように感じました。

ほんの1日ちょっとの「つまみ食い」のような滞在でしたが、街の景色は本当に美しく穏やかで、また訪れたいと強く思いました。そして、ワインやザクロの実、赤レンガの建物など、あたたかみのある『赤』が印象に残った街でした。

そんなことを思いながら、次の目的地アゼルバイジャンへ向かいます。そこでも、きっとまた違う色彩と猫たちが待っているはずです。

【文・写真】
町田奈穂(まちだ・なほ)
猫写真家。水中写真家・鍵井靖章氏との出会いをきっかけにカメラを始める。「猫×彩×旅」をテーマに、世界中を旅しながら各地で出会った猫たちを撮影。これまでに35ヶ国以上を訪れ、2023年には念願の世界一周を果たす。2023年、2024年に富士フォトギャラリー銀座にて個展を開催。その他企画展やSNS等を通じて作品を発表している。
Instagram:cat_serenade
X:naho_umineko

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