【学校インタビュー】日本獣医生命科学大学 ~人と動物がいつまでもそばにいられる社会のために~

「敬譲相和」という学是を掲げ、他者や動物を敬い、互いに協調し合う調和の取れた関係を築くことのできる人材育成を目指す日本獣医生命科学大学。付属動物医療センターや歴史ある博物館など、質の高い学修を促すための施設が充実し、最先端の獣医学や動物学、食品科学などを探求することができます。

そんな同大学は、どのように設立され、今日まで生命科学分野を支えてきたのでしょうか。
学長の鈴木 浩悦先生にお聞きしました。

日本獣医生命科学大学

日本初の獣医を養成する私立学校

―日本獣医生命科学大学はどのような歴史を持つ大学なのでしょうか?

鈴木学長

本学は、日本最古の私立獣医養成学校として、1881年(明治14年)に9人の青年陸軍獣医官が共同で設立した「私立獣医学校」をルーツに持つ大学です。私立獣医学校は、「生類憐れみの令」を発布した徳川綱吉公が建立した護国寺の一角で開学したと伝えられています。現在、護国寺には「私立獣医学校の発祥の地」と刻まれた石碑が設置されており、裏面には、創立から今日までの本学の歩みが記されています。

インタビュー中の様子
鈴木学長

当時は、富国強兵の時代背景のもと、軍馬や海外から導入された産業動物(畜産動物)を診療できる獣医師を育成する学校として運営されていました。

―長い歴史を経て、産業動物から愛玩動物まで幅広く教えるようになったのですね。

鈴木学長

当時は、日本の風土に合った軍馬と産業動物の品種改良、感染症対策などのニーズに応えることが急務でした。
畜産の振興を支えながら、時代の変化とともに、愛玩動物を対象とした獣医学の領域も発展していきました。

―卒業生である鈴木学長は、どのような学生時代を過ごされましたか?

鈴木学長

とにかく研究を楽しみにしている学生でした。現在私が教授を担当している獣医生理学研究室に入って、夜遅くまで研究していましたよ。

―研究以外の学生生活ではどうでしたか?

鈴木学長

剣道部に入部したので、朝早くから練習をしていました。そのせいか、昼の授業は眠気と戦ったり……。

―学長にもそのようなエピソードがあるのですね(笑)
現在の学生たちも、盛んに部活動をされているのでしょうか?

鈴木学長

コロナ禍以降は、精力的に活動している姿を見かけます。2025年度には、馬術部が全日本学生馬術大会の障害馬術競技で34年ぶりの個人優勝を果たしました!
軍馬を専門とする獣医官によって、馬をはじめとする動物のお医者さんを育成する学校としてはじまった本学ならではの、特色のある部活動だと思います。

同大学に飾られた馬術部の垂幕
鈴木学長

それから、「ケネルクラブ」も特徴的です。各学年で犬種を1つ選んで子どもから育てます。大学祭では、部員主導でドッグショーを開催しています。

ケネルクラブのドッグショーの様子

―学生が主体的にいろいろなことに取り組まれているのですね。そういったところは、貴学の学風や教育理念などに関わってくるのでしょうか?

鈴木学長

そうですね。本学は学生と教員の距離が近い「アットホーム」な学風で、学生数に対して教員数が多く、学生が相談しやすい環境をつくっています。

―いろいろな先生に相談できるのは、学生にとっても安心できますね。

鈴木学長

あとは、動物好きの学生がほとんどなので、優しい子が多く、互いに良い人間関係を築いていると思います。動物好きに悪い人はいないとよくいいますが、その通りだと思います。

自ら考え、判断する経験を積む

―貴学の教育における特徴は何でしょうか?

鈴木学長

本学では、実践教育を重視しています。少人数グループで実習を行い、実物に触れたり、実際に体験する機会を増やしています。
今では動画や画像で学修させることもできますが、知識を体にしみこませるためには実際に手で感じたり、感動したりすることが重要だと考えています。
これは、全学科共通して意識していることです。

―人対人はもちろんですが、人対動物だからこそ実際に経験することが大切ですね。

鈴木学長

それから、AIとの向き合い方も注視しています。今はAIがどんどん発展して、誰でも簡単に使えるようになっています。学生が調べ物をするときにも利用できますし、もちろん私も使います。

インタビュー中の様子
鈴木学長

誰でも使える便利なツールですが、最終的に判断をするのは人間です。そのため、しっかりとコミュニケーションを取れることや、周囲の状況から相手の気持ちや状態を考えられることなど、対人スキルが今まで以上に求められてくるのではないでしょうか。

―正しく活用できる人材を育てたいということですね。

鈴木学長

なので、実際に手を動かして研究をしたり、調べ物をしたり、先生や仲間と議論したり、それらをもとに論文を書いたりと、研究室での実践的な学修と経験を重視しています。

愛玩動物看護師の国家資格化を先導

―獣医保健看護学科が、2025年に20周年を迎えたと拝見しました。どのような経緯で設立されたのでしょうか?

鈴木学長

4年制学科として獣医保健看護学科を設立したのは、本学が初めてです。
動物福祉や愛護への意識が高まり、獣医療が高度化する中で、獣医師をサポートする動物看護師についても、より専門的な知識と高度な技術が求められるようになっていました。そこで、2003年に、当時の学長の池本卯典先生主導で「動物保健学別科」が作られ、これを土台として、2005年に獣医保健看護学科が設立されました。

―愛玩動物看護師の国家資格化にも携わられたとお聞きしました。

鈴木学長

本学が4年制大学における獣医保健看護学科のポリシーやカリキュラムなどを最初に作ったこともあり、本学の多くの先生が国家資格化に貢献しました。
また、他大学で同学科が設立された際には本学が参考にされたり、同学科を有する大学が共通して取り組むべき教育課程を示したコアカリキュラムを作成した際にも大きな役割を果たしました。

―他大学への影響もとても大きいのですね。

鈴木学長

それから、獣医保健看護学の修士号だけでなく、博士号を取得できる大学院も設置しており、これは国内唯一です。本大学院で博士号を取った人が本学や他大学で教員になるケースも多いので、教員の育成を通じて、同分野の発展に大きく貢献していると思います。

―毎年、愛玩動物看護師国家資格の合格率がとても高い印象です。

鈴木学長

2022、2023年度は100パーセント、2024、2025年度は98パーセントを越えています。このまま高い水準を維持したいですね。

様々な経験を積むことができる付属施設

―正門から見ると、最初に「付属博物館」が目に入ります。どのような目的で設立されたのでしょうか?

鈴木学長

2015年に博物館並びに学芸員養成課程の実習施設として、「ワイルドライフ・ミュージアム」という名称で開館しました。野生動物の紹介や、獣医畜産学分野の歴史的資料の収集・展示に力を入れていましたが、2023年からは「日本獣医生命科学大学付属博物館」と名称変更し、本学の歴史および獣医学、畜産学、生命科学の総合博物館を目指しています。

日本獣医生命科学大学付属博物館

―洋風な見た目がとても目立ちますね。

鈴木学長

この建物は、1909年(明治42年)に建てられた麻布区役所の庁舎を利用しています。麻布区役所の庁舎が新しく建設されて使われなくなると、本学が目黒から武蔵野に移転する際に、当時の母校である日本高等獣医学校が買い取って、現在の場所に移築しました。2020年には、都内に唯一現存する明治期の役所建築として、国の登録有形文化財(建造物)に認められました。

―建物としてもとても貴重なものだったのですね!

鈴木学長

展示物にも歴史的なものが多数あります。最近だと、古くから展示されていたキリンの骨格標本が、上野動物園で飼育されていた「長次郎」だったことが明らかになりました。
長次郎は国内で2番目に誕生したキリンで、井の頭動物園で亡くなり、本学で解剖され、標本になりました。現存する国内で生まれたキリンの骨格標本としては最古のものだそうです。

―貴学の歴史の古さには脱帽です……!

キリンの長次郎の骨格標本

―「付属動物医療センター」や「富士アニマルファーム」はどのように活用されていますか?

鈴木学長

付属動物医療センターは、獣医学科に設置が義務付けられている教育・研究施設です。獣医学科・獣医保健看護学科のラウンド実習などで活用されている他、研修獣医師のプログラムもあります。
また、小動物の2次診療施設としても機能しています。他大学の病院と比べて犬や猫などの伴侶動物の症例数が特に多いので、将来小動物臨床を目指す学生にとって大きな経験になると思います。

日本獣医生命科学大学 付属動物医療センター
鈴木学長

富士アニマルファームは、都内にある本学において産業動物に関する実践教育を充実させるために設立され、個室の宿泊施設を完備しています。
通常の牧場としてもミルクや牛肉などの畜産物を生産している他、各学科のオリエンテーションや、実習、研究で活用されています。
また、ビール粕などのエコフィードを利用した経産牛肥育、専門学校等の研修や都内の子ども達の酪農体験実習の受け入れ、産業動物の糞尿のたい肥化と販売など、地域貢献の側面も持ち合わせています。

富士アニマルファーム

―都内の大学で産業動物にふれる機会が多く作れることは、とても意義のあることだと思います。
2025年1月には、「ワンヘルス・ワンウェルフェアセンター」が設立されたとお聞きしました。こちらの取り組みはどのようなものですか?

鈴木学長

近年、「人と動物と環境の健康は一体」という考え方や、「野生動物との共生」などへの意識が高まっています。
さらに、伴侶動物はもちろんのこと、家畜や野生動物を含む「動物福祉」の向上も、共生社会には不可欠だと注目されています。

―ワンヘルスとワンウェルフェアの実現を目指していくということですね。

伴侶動物、産業動物、野生動物それぞれにおける、ワンヘルスとワンウェルフェアについて簡単にまとめた図
鈴木学長

本学には、ワンヘルスやワンウェルフェアを研究している先生が各学科にいますが、学科間をまたいでこれらの研究を推進するために当センターを設立しました。

本学は、産業動物の病気や人獣共通感染症が蔓延する中で、それらに対処でき人材を育てるために誕生した大学です。戦前に作られた学歌に、「人の世恵む鳥獣を愛しみ護るも国のため、敬譲相和ゆるみなく、愛と科学の聖業にいそしむ日々ぞ栄あれ」という一節があります。学歌は戦後に大部分が修正されましたが、この一節はそのまま、今も歌い継がれています。
この中にある「敬譲相和」は本学の学是であり、「愛と科学の聖業を培う」を到達目標として掲げています。「敬譲相和」の精神のもと、当センターを中心にワンヘルスとワンウェルフェア、すなわち人、動物、環境の健康と福祉の向上を全学的な取り組みとして進めていこうと考えています。

―さいごに、この記事を読んでいる方、動物に関わる仕事に興味がある方へメッセージをお願いします。

鈴木学長

動物が身近にいて、人と動物が共に生きることのできる持続的な共生社会の実現が求められていると思います。そのためには、ワンヘルスやワンウェルウェアを基盤とした教育や研究を進めることが重要です。また、それを単なる知識として理解するだけでなく、実際の体験を通して学ぶことが大切です。
人と動物と環境の健康、動物福祉、動物の生理や生態、人と動物の共生、そして人類における動物のより良い活用などに興味のある方は、ぜひ本学で学んでみてください。人と動物が健康に暮らせる社会の実現に向けて、一緒に学び、考え、取り組んでいきましょう。

―ありがとうございました!

日本獣医生命科学大学
獣医学科、獣医保健看護学科、動物科学科、食品科学科を有し、いずれの分野でも高度で専門性の高い人材を育成する大学。
・ホームページ…https://www.nvlu.ac.jp/
・Instagram…@nvlu.official
・LINE…日本獣医生命科学大学
・YouTube…日本獣医生命科学大学【公式】

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