スイスを訪れたきっかけは、知人の結婚式に招かれたことでした。式はオルテンという小さな町のレストランで行われました。
準備はすべて自分たちで進めるとのことで、到着後の数日間は知人と行動を共にし、式の手伝いに追われることに。ブーケやブートニア、レストランの装飾花選びやウエディングケーキの仕上がりの確認、式場の下見など、やることは盛りだくさん。さらに、出席者の最終確認やギフトの準備なども重なり、気づけばここがスイスであることを忘れてしまうほどの慌ただしさがありました。それでも、その時間はどこか温かく、心に残るひとときでした。
無事に結婚式が終わり、滞在4日目にして、ようやく自分自身のスイスの旅が始まりました。初めての訪問ということもあり、拠点には移動のしやすい都市チューリッヒを選びました。

まずは首都ベルンを観光しようと、チューリッヒ中央駅へ向かいました。通勤や通学と思われる多くの人々が行き交う中、目に留まったのは犬たちの姿でした。

飼い主と一緒に電車へ乗り込む犬や、ホームで静かに列車を待つ犬たち。東京の通勤ラッシュほどではないものの、決して人が少ないわけではありません。それでも犬たちは周囲に自然と溶け込み、落ち着いて行動しているのが印象的でした。

実際に電車に乗ってみると、その光景はさらに当たり前のものとして感じられます。犬たちは座席の足元や通路脇で静かに過ごし、吠えたり騒いだりすることはほとんどありません。飼い主も特別に構う様子はなく、ごく自然に同じ空間を共有しています。
約1時間20分でベルンに到着。ここでも路面電車やバスの中で、同じような光景を何度も目にしました。スイスでは犬も公共交通機関を利用でき、列車の乗車区分には「adult・child・dog・bicycle」と並んで表示されています。犬が一人の乗客として扱われていることが明確で、料金も子どもと同じ設定になっている点に、思わず微笑んでしまいました。

その後も、スーパーへ向かう途中や信号待ちの際など、さまざまな場面で犬の存在を身近に感じました。ふと隣に停まった車の助手席を見ると、犬がちょこんと座っていることも。さすがにシートベルトはしていませんでしたが、日本でも見かけることがある車内の犬の姿には、どこか親しみを覚えました。

スイスへ出発する前に知人から言われた「犬好きならスイスのことをもっと好きになるよ!」という言葉を、ここで改めて思い出しました。
こうした体験を通して感じたのは、人と動物が同じ社会の中で共に移動し、共に過ごすためには、制度だけでなく、一人ひとりの意識や日常的なしつけが欠かせないということです。公共交通機関という共有空間だからこそ、その積み重ねがより大切になるのだと思います。
スイスの旅は、美しい風景だけでなく、公共交通機関の中に見える人と動物の調和という点でも、強く印象に残るものとなりました。
【写真・文】
蜂巣文香(はちす・あやこ)
写真家。犬、猫、コンパニオンバードなどのペット写真をはじめ、手仕事やライフスタイルなどさまざまな分野で“伝わる”写真を日々撮影している。広告や雑誌、書籍、WEBなど幅広く活躍中。欧米を中心とした海外での撮影経験も豊富。愛犬雑誌「Wan」(緑書房)でもおなじみのカメラマンで、柴犬をモチーフにしたカレンダーシリーズ「しばいぬ(卓上)」「日本の柴犬(壁掛け)」「黒柴(壁掛け)」(緑書房)も毎年好評を博している。
Instagram:dogtionary_hachi
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