ネザーランドドワーフとのしあわせな暮らしかた【第1回】基礎知識:品種紹介を中心に

この連載は、ペットウサギの代表種・ネザーランドドワーフとしあわせに暮らしていただくために、環境づくりや健康管理など生活上の注意点を紹介していきます。今回は基礎知識としてウサギの品種をおさらいし、そのあとにネザーランドドワーフの体の特徴から注意すべき病気を概説します。

ペットウサギの代表的な品種

3大品種

■ネザーランドドワーフ
・原産:オランダ
・体重:1kg前後
・性成熟:メスは4~5カ月、オスは7~8カ月
・特徴:短頭種(頭が丸く口が短い種類)、短い立ち耳
・性格:やんちゃ、嫌なことをされるとしっかりと意思表示をする

自己主張が強い性格で、すぐに人慣れし、名前を呼ばれたり、ご飯やおやつをみると寄ってくる好奇心旺盛な面もあれば、後ろ足を床に叩きつけ(スタンピング)、明らかに機嫌が悪く、怒るときもあり、両極端に分かれます。
体色や柄のパターンも豊富で、単色(セルフ)や、タンパターンと呼ばれるお腹や首の後ろだけ色が違う子もいます。他にもシェイデッドと呼ばれる、色の濃淡が徐々に変わっていく子や、アグーチと呼ばれる1本の毛が3色以上に分かれる子もいます。そのどれにも属さない毛色はAOV(Any other variety)と呼ばれています。
上記のパターンの種類の中にそれぞれ黒や茶色や白などたくさんのカラーバリエーションが存在しています。

写真1:ネザーランドドワーフ セルフ(ブラック)。写真提供:うさぎのしっぽ(https://www.rabbittail.com

写真2:ネザーランドドワーフ タンパターン。写真提供:うさぎのしっぽ
写真3:ネザーランドドワーフ シェイテッド。写真提供:うさぎのしっぽ
写真4:ネザーランドドワーフ アグーチ。写真提供:うさぎのしっぽ

■ホーランドロップ
・原産:オランダ
・体重:1.5kg前後
・特徴:短頭種、垂れ耳、後頭部耳の付け根に毛の束でできたクラウンと呼ばれるコブがある、丸っこい体つき
・性格:非常に好奇心旺盛で活発

高齢の雄のホーランドロップは、皮膚が緩んで固くなってしまうことも多くあります(過誤腫)。

写真5:ホーランドロップ

■アメリカンファジーロップ
・原産:アメリカ
・体重:1.5kg(ホーランドロップよりやや大きい)
・特徴:短頭種、垂れ耳、綿毛状のふわふわした体毛、丸っこい体つき
・性格:優しくて穏やか、好奇心旺盛、気が弱い子も多い

見た目はホーランドロップの長毛種です。

写真6:アメリカンファジーロップ

以上がウサギ3大品種と呼ばれています。ペットショップでみかけるウサギたちは、この3品種かその交雑種が多いでしょう。この3大品種の特徴としては短頭種であることと、アイランドスキンがあげられます。短頭種およびアイランドスキンの特徴、注意点は後述します。

その他の小~中型種

■ドワーフホト
・原産:ドイツ
・体重:1kg程度
・特徴:短頭種、真っ白の体毛に黒色のアイバンド
・性格:好奇心旺盛で人なつっこい

写真7:ドワーフホト。写真提供:うさぎのしっぽ

■ジャージーウーリー
・原産:アメリカ
・体重:1.5kg前後
・特徴:短頭種、顔以外長毛、アメリカンファジーロップに似ているが立ち耳
・性格:控えめでのんびり、自己主張が少なめ

写真8:ジャージーウーリー

■ダッチ
・原産:イギリス
・体重:1.5~2.5kg
・特徴:顔は八割れ、白の体毛に黒のパンツ
・性格:穏やかで人なつっこい

写真9:ダッチ

■ミニレッキス
・原産:アメリカ
・体重:2kg以下
・特徴:光沢のあるビロード状の硬い毛皮、筋肉質、ちぢれたヒゲ
・性格:賢く、人なつっこい

写真10:ミニレッキス

■ヒマラヤン
・原産:ヒマラヤ地方といわれている
・体重:1~2kg
・特徴:全体的には白の体毛、耳・鼻・足・尻尾は黒で目は赤、筒状の体
・性格:穏やかで好奇心旺盛

写真11:ヒマラヤン

■ハーレクイン
・原産:フランス
・体重:3.5kgほど
・特徴:2色の体毛が体全体を交差している
・性格:穏やかで好奇心旺盛

写真12:ハーレクイン

■ベルジアンヘアー
・原産:ベルギー
・体重:3~4.5kg
・特徴:野生のウサギを改良した品種、野ウサギのような見た目、アーチのような背中のライン、細長い足
・性格:パニックになりやすい

写真13:ベルジアンヘアー

■アンゴラ
・原産:トルコ
・体重:2.5~5kg
・特徴:毛皮用のウサギで体毛が非常に長く多い
・性格:おとなしい

写真14:アンゴラ

大型種

■フレミッシュジャイアント
・原産:ヨーロッパ
・体重:6~10kg
・特徴:巨大ウサギ
・性格:温厚で賢い

写真15:フレミッシュジャイアント

■日本白色種(ジャパニーズホワイト)
・原産:日本
・体重:4~6kg
・特徴:日本発祥のアルビノのウサギ、食肉・毛皮・実験用のウサギ
・性格:おっとりしておとなしい

写真16:日本白色種(ジャパニーズホワイト)

■チェッカードジャイアント
・原産:ドイツ
・体重:5~6kg
・特徴:背中の線とブチ模様
・性格:番犬のようなウサギで、なつきにくいことが多い

写真17:チェッカードジャイアント

■ニュージーランド
・原産:アメリカ
・体重:4~5kg
・特徴:肉付きがよい食肉用ウサギ
・性格:なつかない

写真18:ニュージーランド

■フレンチロップ
・原産:フランス
・体重:5.5kg前後
・特徴:大型のロップ種
・性格:温厚で人なつっこい

写真19:フレンチロップ

■イングリッシュロップ
・原産:イギリス
・体重:4.5kg前後
・特徴:大型のロップ種、 耳が非常に長く最低でも53cm以上、最古の品種の1つともいわれている
・性格:温厚で人なつっこいが、警戒心が強い

写真20:イングリッシュロップ。写真提供:うさぎのしっぽ

ネザーランドドワーフの特徴的な解剖とそれに伴う病態

ネザーランドドワーフは短頭種であるため、解剖学的に疾患を起こしやすい品種です。

不正咬合になりやすい

ネザーランドドワーフは鼻が潰れていて、顎の骨が短いため、切歯(前歯)の不正咬合がとてもよく起こります。
切歯の不正咬合が悪化すると、臼歯(奥歯)の不正咬合も続けて起こってしまいます。そのため、悪化しないように適度に硬いものをかじらせてあげましょう。

写真21:通常の咬合のレントゲン画像
写真22:不正咬合(ネザーランドドワーフ)のレントゲン画像。頭蓋骨が丸く鼻が短いため、通常とは違い、切歯の先端がずれずに合わさってしまっている
写真23:顎の形の異常によって、切歯が誤った方向に伸びてしまっている

泉門が開いていることが多い

泉門とは、頭蓋骨に開いている穴のことです。通常は成長とともに閉じていきますが、短頭種の場合は開いたまま成長してしまう子もしばしばみられます。泉門が正常に閉じないと、脳室(脳の隙間)に水が過剰に溜まる水頭症を引き起こす可能性があります。

無症状のことが多いですが、けいれん発作、落ち着きがない、てんかんなどの症状がみられた際には、かかりつけの獣医師に相談しましょう。

写真24:泉門の開口

アイランドスキン

普段は気付きにくいですが、換毛期になかなか生え替わらない、生え替わりが遅い場所があります。その部分の皮膚は毛穴の数や大きさが違っていて、模様ができています。そこをアイランドスキンといいます。

詳細はわかっていませんが、病的ではなく、やや赤みを帯びたりすることもあります。皮膚炎との鑑別が重要なため、異常に感じた際にはかかりつけの獣医師に相談しましょう。

頭が小さく、体がぷっくりした下膨れの体格

隠れ肥満が非常に多いのがネザーランドドワーフです。体格、姿勢的に判断しにくいですが、レントゲン検査で偶発的に肥満がみつかることも多々あります。

この連載は、一般社団法人日本コンパニオンラビット協会(JCRA)「ウサギマスター認定者(ウサギマスター検定1級)」の獣医師で分担しながら、飼い主さんにも知っておいてほしいネザーランドドワーフの基礎知識を解説しています。
・一般社団法人日本コンパニオンラビット協会
https://jcrabbit.org

[写真提供/出典]
・写真1~4、7、20…うさぎのしっぽhttps://www.rabbittail.com/
・写真5、6、8~19…『カラーアトラス エキゾチックアニマル哺乳類編 第3版』(著:霍野晋吉・横須賀誠、緑書房)
・写真21~24…『ウサギの医学』(著:霍野晋吉、緑書房)

【執筆】
兵藤礼人(ひょうどう・あやと)
酪農学園大学を2019年に卒業。獣医師。JCRAウサギマスター検1級認定。ウイル動物病院グループ・仙台動物医療センター(https://animal-99.com/ )非常勤獣医師。犬や猫の診療に加え、エキゾチックアニマル診療科を担当している。

【監修】
霍野晋吉(つるの・しんきち)
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部卒業。獣医師、博士(獣医学)。1996年古河アニマルクリニック開業(茨城県)。1997年エキゾチックペットクリニック開業(神奈川県)。現在は株式会社EIC(https://exo.co.jp )の代表を務め、エキゾチックアニマルの獣医学の啓発や教育に関わる活動を行っている。その他、日本獣医生命科学大学非常勤講師、ヤマザキ動物看護大学特任教授、(一社)日本コンパニオンラビット協会代表理事、(一社)日本獣医エキゾチック動物学会顧問なども務める。著書に『カラーアトラス エキゾチックアニマル 哺乳類編 第3版』『同 爬虫類・両生類編 第2版』『同 鳥類編』『ウサギの医学』『モルモット・チンチラ・デグーの医学』(いずれも緑書房)。