フォトエッセイ 猫に呼ばれて世界の街へ【第17回】青い海と個性豊かな猫たち (パラオ共和国)

日本の南約3,000キロメートルに位置するパラオ共和国は、美しいサンゴ礁に囲まれた青い海が広がり、ダイバーにとって聖地のような存在です。 さらに、時差がないことも日本からの旅行者にとって魅力の一つです。
パラオは、日本とアメリカの統治を経て1994年に独立しました。先日10月1日に独立30周年を迎えたというニュースを目にしたので、今回はパラオで出会った個性豊かな猫たちを紹介したいと思います。

私がパラオを訪れたのは2018年と少し前のことで、本格的に猫の写真を撮り始める前の話になります。この時パラオを訪れたのは、レックダイビング(何らかの理由で海底に沈んだ船や飛行機など目当てに潜るダイビング)に挑戦するためでした。戦争で沈んだ船や飛行機を見ると、そこが魚たちの住処となっていて、自然の中で暮らす魚たちを見に行く普段のダイビングとは違った興味深さがありました。

旅のメインはダイビングだったのですが、その旅の中で出会ったユニークな猫たちも忘れられません。
まず、パラオの海の色を感じるブルーの家の前で出会ったのは、貫禄のある丸顔のオス猫でした。この辺りのボスのようで、ゆっくり堂々と歩みを進めながらも甘えん坊な雰囲気を醸し出す、愛嬌のある猫でした。

次は、好奇心旺盛な白猫の子猫です。美しいブルーの瞳が印象的な猫で、あちこち探検する様子は無邪気そのものでした。夢中なりすぎて家から離れてしまうと、見かねた母猫が優しく連れ戻しにきました。その光景に思わず微笑んでしまいました。

今までたくさんの猫と出会ってきましたが、いまだに鮮明に記憶に残っている猫がいます。それは、フェンスを上手に移動していた猫です。その姿はまるで忍者のようでした。こんなに器用で身軽な猫は他に思い浮かびません。

その他、草むらや車の下など、風通しの良さそうな日陰を覗くと、猫と目が合うことがありました。そんな南の島らしい静かな交流も心に残っています。

パラオの美しい自然とともに、わんぱくで自由気ままな猫たちの姿に心が和み、旅がより楽しいものになりました。

【文・写真】
町田奈穂(まちだ・なほ)
埼玉県出身。世界中を旅しながら、地域の猫を撮影している。猫の表情や仕草、猫が暮らす環境の色と光に重点を置いた写真が特徴。2023年に世界一周旅行を達成し、初の個展を開催。その他、企業カレンダーやグループ展など精力的に活動中。
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