はっけん! 日本の爬虫類・両生類【第15回】オオヒキガエル

Rhinella marina(Linnaeus, 1758)

もう20年以上前だと思いますが、沖縄県の石垣島へ、カエル撮影のために初訪問しました。
石垣島には夜行性のカエルが多いため、ワクワクしながら暗くなるのを待ち、いざ夜の森へ! と車に乗ろうとして車の扉を開けようとふと、足元を見るとうごめくカエルを見つけました!
それが、今回ご紹介するオオヒキガエルです。

正面から見たオオヒキガエル

石垣島はカエルの楽園

石垣島はなんてカエルが多い島なんでしょう!

このカエルが外来種であることは事前に知っていましたが、初めての出会いに夢中でシャッターを押した記憶があります。
その後も車を走らせると、街灯下には必ず一匹はいました。自動販売機などは、レストランの如く集団で見ることができました。
少し水が溜まっている場所には、抱接している個体や、喉元にある鳴嚢(めいのう:鳴き袋)をめいっぱい膨らませて、ボボボボ……と鳴いている個体までいて、様々な場面に遭遇しました。

大きく膨らませた鳴嚢

森に辿り着けないくらい、興奮して撮影したことを今でも覚えています。しかし、あまりの数の多さに、翌日からは居ても撮影すらしなくなり、今頃になって写真のバリエーションの無さに焦っています。

オオヒキガエルが及ぼす被害

特定外来生物に指定され、駆除や防除などが行われていますが、一度侵入してしまったカエルを取り除くことは、そう簡単ではありません。特にオオヒキガエルは、耳腺や体のイボなどから強力な毒を出すため、他の生きものが食べるということがほとんどありません。そうなると、敵が少なく産卵数も多いため一気に増えます。

大きな耳腺
オオヒキガエルのおたまじゃくし

以前、オオヒキガエルが西表島に侵入した際、貴重なイリオモテヤマネコが捕食するのではないかと危惧されたことがありました。石垣島ではかなりの数を目撃しましたが、貴重な固有種が多く棲む小笠原諸島にも侵入しています。

駆除と並行して、餌となりそうな固有の昆虫や陸貝が高密度で生息する場所にオオヒキガエルが立ち入らないように、フェンスやネットを張り、侵入を防いでいる地域もあります。

正面から見ると「かわいい~」とつい言ってしまう顔をしています。これが原産国であればいいのですが、帰化先の日本ではちょっと難しい表現ですね。
オオヒキガエルは、害虫駆除が目的で導入されたようですが、効果が示されないまま増えてしまいました。いきものの導入は慎重にならなくてはいけません。

【文・写真】
関 慎太郎(せき・しんたろう)
1972年兵庫県生まれ。自然写真家、びわこベース代表、日本両棲類研究所展示飼育部長。身近な生きものの生態写真撮影がライフワーク。滋賀県や京都府内の水族館立ち上げに関わる。『日本のいきものビジュアルガイド はっけん!』シリーズ(田んぼのいきもの、カナヘビ、小型サンショウウオ、ニホンイシガメ、ニホンヤモリ、トカゲ、イモリ、ニホンアマガエル、オタマジャクシ、オオサンショウウオ)、『野外観察のための日本産両生類図鑑 第3版』『同 爬虫類図鑑 第3版』、『世界 温帯域の淡水魚図鑑』、『日本産 淡水性・汽水性エビ・カニ図鑑』(いずれも緑書房)、『うまれたよ! イモリ』(岩崎書店)、『日本サンショウウオ探検記 減り続ければいなくなる!?』(少年写真新聞社)など著書多数。