何気なく素通りしていた街で出会う犬と人
ヨーロッパへ旅をするとき、乗り換えに幾度も利用していたドイツ・フランクフルト。
ドイツには、ベルリンやミュンヘン、ローテンブルク、ノイシュバンシュタイン城などの王道な都市や観光地へのイメージしかなかったため、空港からフランクフルトの街へ出たことはありませんでした。
ドイツといえば、「犬と子どものしつけはドイツ人にさせろ」ということわざを耳にしたことがあり、ずっと気になっていました。
そのことわざからたくさんのイメージを抱きながら、フランクフルトの街を歩き、肌で感じてみました。
観光スポットであるフランクフルト旧市街にある「レーマ広場」を通って、マイン川へ。それから「アイゼルナーシュテグ」と呼ばれる鉄の橋まで足を延ばしました。
帰りは、フランクフルト中央駅に向かうため、フランクフルトの中心地を東西に貫く大通り「ツァイル」にあるショッピングストリートを歩きました。
目にしたのは、ベンチで自転車のチェーンを調整している男性、犬とジョギングやウォーキングをしている人たち。そして、お店の中にいる犬や停留所前でバスを待つ人と犬。絵を販売している画家の傍らにいる犬。
数時間でしたが、眺めているだけでもドイツでの犬の位置づけは日本と違い、社会の一員と認められていると感じました。空港や電車などの公共交通機関、本屋や洋服店といった小売店、飲食店、ホテルなどへの出入りはもちろん、犬を禁止にしなければならない明らかな場所以外には、わりとどこでも行動を共にできるようです。
中でも一番気になったことは、犬同士が吠えている場面をほとんど見かけなかったことです。
街中での犬連れ同士の交流は軽いあいさつ程度のみで、立ち止まって長話をしないようです。
建物内でのマーキングや排泄行為も、もちろん見かけませんでした。
人と犬へ迷惑をかけないようにするという意識は強いですが、ルールに雁字搦めでもなく、「人にも犬にも自己責任」という考え方がドイツでは当たり前なのではないでしょうか。
【写真・文】
蜂巣文香(はちす・あやこ)
写真家。犬、猫、コンパニオンバードなどのペット写真をはじめ、手仕事やライフスタイルなどさまざまな分野で“伝わる”写真を日々撮影している。広告や雑誌、書籍、WEBなど幅広く活躍中。欧米を中心とした海外での撮影経験も豊富。愛犬雑誌「Wan」(緑書房)でもおなじみのカメラマンで、柴犬をモチーフにしたカレンダーシリーズ「しばいぬ(卓上)」「日本の柴犬(壁掛け)」「黒柴(壁掛け)」(緑書房)も毎年好評を博している。
Instagram:dogtionary_hachi
-
フォトエッセイ 犬と人が織りなす文化の香り【第10回】ドイツ・フランクフルト
-
フォトエッセイ 犬と人が織りなす文化の香り【第9回】イギリス・コッツウォルズ
-
フォトエッセイ 犬と人が織りなす文化の香り【第8回】イギリス・ロンドン
-
フォトエッセイ 犬と人が織りなす文化の香り【第7回】トルコ・イスタンブール
-
フォトエッセイ 犬と人が織りなす文化の香り【第6回】エストニア・キヌフ島
-
フォトエッセイ 犬と人が織りなす文化の香り【第5回】アメリカ・ロサンゼルス
-
フォトエッセイ 犬と人が織りなす文化の香り【第4回】アメリカ・ニューメキシコ(アコマプエブロ)
-
フォトエッセイ 犬と人が織りなす文化の香り【第3回】アメリカ・ニューメキシコ(ロレットチャペル)
-
フォトエッセイ 犬と人が織りなす文化の香り【第2回】アメリカ・ニューメキシコ(マドリッド)
-
フォトエッセイ 犬と人が織りなす文化の香り【第1回】南フランス・プロヴァンス