新たに猫をお迎えした方はきっと、これからの猫との新生活に心を躍らせていると思います。しかし、猫も人間と同じく、年齢に合わせたケアが必要となります。お迎えする前やお迎えしたばかりの時こそ、猫の健康管理とシニア期のケアを知っておくと良いでしょう。
そこで、本記事では、猫の平均的な寿命やライフステージ、シニア猫がなりやすい代表的な病気、そしてケアについて解説します。
猫と長く幸せな暮らしを送るために、是非参考にしてください。

猫の寿命とライフステージ
猫の平均寿命は、2024年の調査では15.92歳*¹でしたが、20歳を超える猫も増えてきています。猫を飼う時は、20年後もお世話ができるかどうか、今一度考えてみましょう。
猫のライフステージは、「International Cat Care Veterinary Society(猫国際獣医師会)」とアメリカの「Feline Veterinary Medical Association(猫獣医師会)」では以下の4つに分けています*²。
- 仔猫期:生後1歳まで
- 成猫期:1〜6歳
- 中年猫期:7〜10歳
- シニア猫期:10歳以上
10歳を超えるとシニア期に分類され、人間でいうおよそ60歳に相当します。このぐらいの歳から徐々に病気になったり、活動性が低下してきます。
シニア猫がなりやすい病気
家でモニタリングする際に大事なことは、体重減少と尿量・飲水量の増加です。日頃から体重を測定し、5〜10パーセント以上減った場合は病気の可能性が高いと言えるでしょう。
尿量を測定することは困難ですが、代わりに飲水量を確認します。水を交換するときに、若い時(上記4つに分けたライフステージのうち、2の成猫期)と比べて水の減りが多くなっていないかチェックしましょう。
シニア期になりやすい代表的な病気は以下の8個です。
慢性腸症
腸の機能が低下し、痩せていく病気。
症状:下痢、嘔吐、体重減少
慢性腎臓病
加齢に伴い腎機能が低下する病気。
症状:尿量・飲水量の増加、体重減少、嘔吐
甲状腺機能亢進症
甲状腺ホルモンが過剰に分泌される、人のバセドウ病のような病気。
症状:尿量・飲水量の増加、体重減少、嘔吐
糖尿病
血糖値が下がらなくなる病気。
症状:尿量・飲水量の増加、体重減少
がん
悪性のできものができる病気。
症状:元気消失、体重減少、発生する部位によって様々な症状
認知症
認知機能が低下し、異常行動があらわれる。
症状:夜泣き、イラつき、粗相など
歯肉口内炎
虫歯ではなく、歯肉が炎症を起こし赤くなる。
症状:口臭、口の痛み、体重減少
関節炎
猫は肘と膝関節に炎症が出やすい。
症状:痛み、運動量の低下
シニア猫のケア
猫は綺麗好きな動物で、若い頃は自分のケアは自分でやります。しかし、歳をとってくると顔を洗ったり、爪とぎをする頻度が落ち、目やにや毛玉、伸びっぱなしの爪などが目立ってきます。シニア期になった時こそ顔を拭いてあげたり、ブラッシング、爪切りなどのケアをしてあげましょう。特に爪は、巻き爪のように曲がって伸びるため、自分の肉球に刺さってしまうので必ずカットしましょう。
また、シニア猫に優しい環境作りを心がけましょう。具体的には、段差の低めのキャットタワーを用意することや、トイレや食事、水を飲むところへのアクセスに障害(階段など)がないことが挙げられます。トイレや食事をする場所へ行くときに障害があれば、スロープをつけバリアーフリー化するなど工夫しましょう。
シニアになっても遊ぶ元気のある猫は、もちろん遊んであげてください。
おわりに
猫のシニア期には、健康状態や行動の変化をしっかり観察し、早期に対応することが大切です。自宅でのチェックに加えて、定期的な健康診断や適切な食事管理、快適な環境作りを心がけることで、猫が幸せで穏やかな老後を過ごせるようサポートしましょう。愛情を持ってケアすることで、あなたと猫の絆がさらに深まると思います。
[参考文献]
*¹ 2024年全国犬猫飼育実態調査 一般社団法人日本ペットフード協会調べ
*² Journal of Feline Medicine and Surgery (2021) 23, 211–233, SAGE Publishing
【執筆者】
山本宗伸(やまもと・そうしん)
獣医師。Tokyo Cat Specialists(東京都港区、https://tokyocatspecialists.jp/)院長。授乳期の仔猫を保護したことがきっかけで猫に魅了され、獣医学の道に進む。日本大学生物資源科学部獣医学科を卒業。都内の猫専門病院で副院長を務めた後、ニューヨークの猫専門病院 Manhattan Cat Specialistsで研修を積む。ねこ医学会(JSFM)および国際猫医学会(ISFM)に所属し、JSFMでは実行委員を務める。