フォトエッセイ  犬と人が織りなす文化の香り【第12回】ドイツ・ローテンブルク

前回のマインツから引き続き、ドイツ南部バイエルン州に位置するローテンブルクを訪れたときのお話です。

中世の宝石箱

フランクフルト中央駅から鉄道に乗り、約3時間でローテンブルク・オプ・デア・タウバー駅に到着します。ローテンブルクはドイツでも高い人気を誇る、中世の街並みがそのまま残されているおとぎの国のような街です。城壁に囲まれていることから「中世の宝石箱」と称されていて、半日あれば目一杯観光できます。そんな素敵な街なので、1年を通してあちらこちらから人が集まってきます。

日本を出発する前に、「ペット先進国」であるドイツの犬に関する情報を得るため観光局へ行きました。

ドイツでは、犬を飼っている人には犬税(Hundesteuer)の支払いが義務づけられています。市町村税に区分される犬税は、ドイツのほとんどの自治体で導入されており、自治体によって1頭あたりの納税額は異なるそうです。犬税は街の清掃費用のほか、犬や愛犬家にかかわる施策の費用として使われます。そして犬税の本質は、「流行や物珍しさから飼う」という無責任な飼育を防ぐ効果を発揮したり、殺処分の抑止につながることにあると考えられています。つまり、ドイツでは犬も税金を払っていると言えるので、犬にも「市民権」があるのです。この話を知ったとき、これまで肌で感じてきたドイツという国で生きる人々と犬たちに、改めて感銘を受けました。

まずはレーダー門から街に入り、城壁にのぼって旧市街の街並みを上から眺めました。続いて観光ガイドで必ず目にする、二股に道が分かれた坂道の中央に木組みの家があるプレーンラインへ。

それからシュピタール通りをシュランネン広場に向かっていくと、レーダー通りと交差します。そこには市庁舎やマルクト広場、クリスマスショップなどがあり、観光・ショッピングや食事を楽しむ人と犬たちで賑わっていました。

公共の場所でもたいていは犬と一緒にいられるドイツですが、スーパーマーケットの中だけは許可されていないので、入り口の横にあるリードフックにつないでおきます。待っている犬たちは吠えたり不安になっている様子もなく、落ち着いて堂々としていました。

【写真・文】
蜂巣文香(はちす・あやこ)
写真家。犬、猫、コンパニオンバードなどのペット写真をはじめ、手仕事やライフスタイルなどさまざまな分野で“伝わる”写真を日々撮影している。広告や雑誌、書籍、WEBなど幅広く活躍中。欧米を中心とした海外での撮影経験も豊富。愛犬雑誌「Wan」(緑書房)でもおなじみのカメラマンで、柴犬をモチーフにしたカレンダーシリーズ「しばいぬ(卓上)」「日本の柴犬(壁掛け)」「黒柴(壁掛け)」(緑書房)も毎年好評を博している。
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