オカメインコと暮らそう! ―飼育の基本とかかりやすい病気

オカメインコとは?

オカメインコ(学名:Nymphicus hollandicus)は、オーストラリア原産のオウムの仲間で、オウム科の中では最も小さな種類です。体重は約80〜100グラム、平均寿命は20〜25年(長い子では35年ほど生きることもある)と考えられています。

性格と注意点

穏やかで人懐っこい性格ですが、とても臆病な一面もあります。夜の物音や地震などで驚き、ケージ内で暴れてケガをしてしまうこともあり、「オカメパニック」と呼ばれています。パニック時は、声をかけながら電気をつけて明るくしてあげると、落ち着きやすくなります。

飼育に適した環境

飼育に適した室温は25〜28度ほどですが、体調によって適温は異なります。羽根を逆立て寒がっている場合は、室温を30度以上にする必要がある場合もあります。
逆に、翼を浮かせて暑がっている場合は、室温が高すぎるサインです。一般的には、32〜35 度を超えると熱中症の危険性が高まるといわれているので、必ず温度計でケージ内の温度を測り、愛鳥の様子を観察しながら調節してあげましょう。

画像1.暑いとき(左)と寒いとき(右)の様子。暑いときは翼を浮かせており、寒いときは膨らんでいるのがわかる

食事は、ペレット(総合栄養食)またはシード(皮付きの種)をおすすめします。シード中心の場合は、ヨード(ヨウ素)を含む総合ビタミン剤で補ってあげると安心です。また、常に新鮮な水を用意することも重要です。特に水にビタミン剤を添加する場合は雑菌が増えやすいため、1日2回以上の交換を推奨します。

オカメインコで気をつけたい症状とかかりやすい病気

※各病気にはそれぞれの症状があります。以下の症状がみられた場合は、各臓器の病気が疑われるため、動物病院への受診をおすすめします

呼吸器系の症状

症状:くしゃみ、鼻水、鼻づまり(鼻が腫れている)、鼻を掻く・こする、目の周りが汚れている、呼吸が速い、口を開けて息をしているなど
考えられる病気:副鼻腔炎、肺炎、気嚢炎、心疾患など

画像2.副鼻腔炎:鼻垢により外鼻腔が閉塞し変形している。口の中も汚れが付着している
画像3.開口呼吸(スターゲージング):重度の呼吸困難により、斜め上を向いて口を開けて呼吸している

消化器系の症状

症状:嘴(くちばし)の周りが汚れる、口をパクパクする、吐き戻し・嘔吐、下痢、多尿など
考えられる病気:細菌性・真菌(カビ)性などによる口内炎、胃腸炎、トリコモナス感染症、中毒など

画像4.口内炎:口腔内が腫れ、唾液が増加し、舌の付け根にかさぶたが付着している

肝臓に関わる症状

症状:羽のツヤが悪い、色が変わる、嘴や爪が伸びすぎている、出血斑(内出血)がみられる、尿酸の色が変化する、お腹がふくらむ、息が荒い
考えられる病気:脂肪肝、肝炎、中毒、腫瘍など

画像5.肝疾患により灰色羽毛の黄色化がみられ、チークパッチ(頬のオレンジの羽毛)も輪郭がぼやけている(治療前)
画像6.灰色羽毛の黄色化がなくなり、チークパッチの輪郭もはっきりしている。体調の改善により目力もアップ!(治療後)

泌尿器系の症状

症状:水をたくさん飲む、尿量が多い、体重減少、足が腫れる、足に白いイボができる、足を痛がる、ふらつくなど
考えられる病気:腎不全、腎炎、腫瘍、卵づまり、中毒など

繁殖に関わる症状

症状:お腹がふくらむ、呼吸が荒い、体重が重い、水ばかり飲むなど
考えられる病気:慢性発情、卵づまり(卵塞症)、卵管蓄卵材症、腹壁ヘルニア、腫瘍など

画像7.卵づまり(卵塞症)X線画像:複数の変形卵が貯留し、腹部が膨大している(画像右側)

外傷

症状:飛べない、出血、羽が抜けている
考えられる原因/病気:オカメパニック、換羽、骨折、脱臼、腫瘍、毛引き症、自咬症など

幼鳥の開口不全

症状:挿し餌をうまく飲み込めない、嘴が開かない、顔色が悪いなど
考えられる病気:ロックジョー(開口不全症候群)

画像8.ロックジョー:眼、嘴周囲の色が紫がかり、嘴が開かないため挿し餌が上手く食べられない

ご家庭でできる予防

日々の規則正しい生活が、病気の予防や早期発見につながります。規則正しい生活には、適切な栄養管理と日光浴も含まれます。これらを怠ると、免疫力が低下して多くの病気の引き金となってしまうので、心がけましょう。
中でも、排せつ物の観察は特に重要です。日々のケージのお掃除の際によく観察をしてあげてください。

画像9.緑色尿酸:重度の肝疾患や敗血症などの急性/重症の場合にみられる

メスを飼われている方は、特に発情に注目してみてください。発情によりホルモンの影響で体重が増え、発情行動や産卵をしやすくなります。慢性的な発情(産卵をしなくとも)は、肝疾患や腎不全、繁殖関連疾患を引き起こしやすくなります。
オスを飼われている場合でも、太り過ぎは肝疾患や高脂血症の原因になりやすいです。適正体重はそれぞれの愛鳥で異なりますので、ご自宅で体重測定を行い、定期的に動物病院で胸筋のつき方(キールスコア)をチェックしてもらい、その子その子に合った体型を維持していくようにしましょう。

おわりに

今回はオカメインコのかかりやすい病気についてまとめましたが、適切に飼育することによって、ある程度予防できる病気があることがお伝えできていればうれしいです。
オカメインコは小型鳥の中では寿命も長く、多くの時間を共に過ごせる鳥種です。オスは歌が上手で自作の唄を披露してくれることもありますし、メスはおっとり甘えん坊で、どちらも周囲の人間を癒す魅力にあふれた子たちです。この記事がオカメインコと暮らす皆様の安心と健康につながれば幸いです。

【執筆】
石原直子(いしはら・なおこ)
獣医師。酪農学園大学獣医学部を卒業後、犬猫の動物病院、「横浜小鳥の病院」での勤務を経て、2017年に岡山市に「ほたる小鳥病院」を開院。2022年に鳥類臨床研究会認定会員となる。飼い主も愛鳥も安心して受診できる診療環境を目指している。

「いきもののわ」では、ペットや動物園・水族館、野生動物、動物関連イベントなど、いきものにまつわる様々な情報をお届け中!
メールマガジンでは、特集記事の紹介や次月特集の一部をチョイ見せ!
登録はこちらのフォームから。ぜひご登録ください!