慢性腎臓病とは?
猫よりも少ないですが、お年寄りの犬でかかる病気の代表的なもののひとつに「慢性腎臓病」があります。
「慢性」とはゆっくりと長く進行し、完全に治ることが難しい病気に使う言葉です。腎臓病では、3か月以上腎臓の機能低下が続くと「慢性」と判断します。
「腎臓病」は、腎臓の働きが低下、または腎臓そのものが傷んでしまう状態の総称です。
つまり慢性腎臓病とは、「腎臓の機能低下が3か月以上続いている状態」を指しますが、その多くは原因が見つからずに診断されます。15歳以上の犬の約1割がかかっているともいわれています。
慢性腎臓病が疑われるサイン
この病気は時間をかけて少しずつ進行するため、初期は目立った症状がほとんどありませんが、次のような変化があれば要注意です。
・水を頻繁に飲み、水入れがよく空になる
・おしっこの量が増えた
・おしっこの色が薄く、匂いが弱い
・食欲が落ちた
・体重が減った
症状だけで早期発見するのは難しいですが、猫とは違って、散歩時や自宅でペットシーツにしたおしっこの色は見やすいと思います。毎日チェックをする意識を持つといいかもしれません。

慢性腎臓病の食事療法
慢性腎臓病では食事療法がとても重要です。犬の研究でも、腎臓病用の療法食を続けることで病気の進行が遅くなり、寿命が延びることが示されています。
腎臓病療法食の特徴
腎臓病用の療法食には、次のような工夫がされています。
・リンの制限
腎臓病ではリンをうまく排せつできなくなります。リンが体内にたまると腎臓へのダメージも蓄積されます。
・適度なタンパク質の制限
尿にタンパクが漏れると腎臓がより壊れてしまいます。
・高脂肪で高いエネルギー密度
タンパク質を減らした分を脂肪で補い、少ない量でも十分なカロリーがとれるようになっています。
・DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などの不飽和脂肪酸の添加
魚の脂に含まれる成分で、腎臓を守るはたらきがあると考えられています。
食事療法が必要になるステージ
慢性腎臓病は、国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)によってステージ1〜4に分けられています。
この中で、原則として腎臓病用の療法食が推奨されるのは、ステージ2以上です。
ただしステージ1でも、たんぱく尿や高リン血症など、腎臓病を悪化させる要因がある場合には、獣医師の判断で療法食がすすめられることがあります。

食事療法の難しさ
腎臓病用フードは「おいしくない」と感じる犬が多いようで、なかなか食べてくれないことが大きな問題です。また、タンパク質が少ないため、体重が落ちてしまう可能性があります。
診断時にかなり痩せている場合や、ステージが進んでいてほとんど食べられない場合には、あえて療法食を使わず、一般のシニアフードにリン吸着剤や不飽和脂肪酸サプリメントを組み合わせることもあります(必ず獣医師と相談して決めましょう)。

猫とは違う食事療法を使用する上での注意点
猫とは異なり、犬で療法食を使用する際には、「脂(油分)」が体に合うかどうかを考えてあげることが重要です。つまり、脂と急性/慢性膵炎の関係を考えてあげるということです。
急性膵炎ははっきりとした原因がわからないことが多いですが、脂っこい食事が原因となり得るといわれています。また、高脂血症の犬の場合、急性膵炎のリスクが高まる可能性があります。特に、ミニチュア・シュナウザーなどでは注意が必要です。もしこれらに当てはまる場合は、療法食の使用は避けたほうがいいでしょう。
一方で、慢性膵炎に対しては、療法食を避けるべきという根拠は十分ではありませんが、注意は必要かと思われます。
定期的な嘔吐がある/過去に急性膵炎を起こしたことがあるなどの情報は記録しておき、食事内容(脂質量)とあわせて、かかりつけの獣医師と相談しながら決めるのがいいと思います。
実際の食事の進め方とコツ
まずは、いくつかの腎臓病用フードのサンプルを試します。ひとつに決めても途中で食べなくなることがあるので、複数の候補を用意しておくと安心です。

療法食で寿命が伸びるとはいえ、どうしても食べない場合は食いつきが良いシニアフードなどで、「とにかく食べてもらうこと」「痩せさせないこと」を優先します。その理由は、痩せていると犬の寿命が短くなるといわれているためです。理想は少しふっくらした体型ですが、肥満にならないように注意が必要です。
定期的に体重を測定し、体を触って筋肉の付き方をチェックしてあげましょう。
当サイトの「できていますか? 愛犬の体重管理」を参考にしてみてください。
おわりに
慢性腎臓病は、長期間にわたって食事や薬、サプリメントなどで上手に付き合っていく必要がある病気です。
早めに見つけてその子に合った治療を続けることで、元気に過ごせる時間をのばせる可能性があります。
見た目は元気そうでも、年に1〜2回の健康診断をおすすめします。それにあわせて、普段から水の飲み方、おしっこの量や回数、色、体重などの変化などに目を配ってあげてください。
もし「いつもと違うかも?」と思うことがあれば、早めにかかりつけの獣医師に相談しましょう。
本記事が慢性腎臓病への理解を深め、みなさんと愛犬のお役に立てれば幸いです。
【執筆者】
角山優輔(つのやま・ゆうすけ)
獣医師。日本獣医生命科学大学獣医学科卒業。VCAジャパン合同会社ゼファー動物病院所属。2025年から麻布大学大学院 小動物内科学研究室 所属。飼い主と良好な関係を築き、ペットと飼い主に合ったオーダーメイドな治療を目指す。共著に『犬のヘルスケア入門』(緑書房、2025年)
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