家庭にあるもので飼い鳥が食べてはいけないものリスト

愛鳥との生活の中で、愛鳥が食べてしまうと中毒などの原因になるものは多く存在します。中には、一度食べただけで命を落としてしまうような怖いものもあります。

今回は、飼い鳥が食べてはいけないものや注意が必要なものを、家庭内によくあるものを中心に、獣医師の目線から紹介します。
※本記事に記載した毒性物質は、論文や学術発表などで中毒の報告がされているものを中心に紹介していますが、鳥類における中毒の報告がないものや少ないものも含まれています。普段の診察において、実際報告のないものでも、中毒を疑う症例を見かけることがあります。そのため鳥類においても中毒を起こす可能性が高いものに関しては記載しています

食べてはいけない食べ物

野菜

■ネギ類(タマネギ、ネギ、ニンニク、ニラなど)
ネギ類に含まれる有機チオ硫酸化合物(アリルプロピルジスルフィド、ジアリルジスルフィド)が原因で、溶血性貧血(血液中の赤血球が破壊される症状)と呼ばれる貧血を起こすことがあります。貧血が起きると、嘴(くちばし)やアイリング、足の血色が薄く、または白くなることが多いです。

貧血を起こしているブンチョウ。嘴や足の血色が薄い
タマネギとニンニク

■モロヘイヤ(種と茎)
モロヘイヤに含まれる強心配糖体(ストロファチジン)が原因で、心臓の機能に影響を与える可能性があります。症状としては徐脈や不整脈、運動失調、痙攣などを引き起こし、最悪の場合は死に至ることもあります。

■生の豆類
フィトヘマグルチニンと呼ばれるレクチンが含まれており、嘔吐や消化不良の原因になる可能性があります。生の豆を与える場合には、水に浸してしっかりと茹でる必要があります(たとえば、12時間水に浸した後、10分間沸騰した湯で茹でるなど)。

■生のナッツ類
生のピーナッツ、アーモンド、ピスタチオなどはアフラトキシン(カビ毒)を含有することがあり、肝臓障害を起こすことがあります。症状としては無気力や体重減少、食欲不振、嘔吐などが報告されています。また、アフラトキシンは発がん性もあるため注意が必要です。

■生の未熟なトマト
トマチンと呼ばれるアルカロイド配糖体を含み、酸度が強いことなどから、口腔潰瘍の原因になる可能性があります。口腔潰瘍を起こした場合には食欲低下や吐き気、嘔吐などを引き起こすことがあります。

その他、注意が必要な野菜

■シュウ酸を多く含む野菜(生のほうれん草や生のパセリ、生のしそ、生のタケノコなど)
アクの原因となるシュウ酸ナトリウムは、消化管粘膜の刺激になることや、体内でシュウ酸カルシウムになって、カルシウムの欠乏や腎臓に影響を及ぼす可能性もあります。与える場合は、茹でるなどしてアクを抜いた後に適量与えるようにすると良いでしょう。

果物

■アボカド
アボカドに含まれるペルシンが原因で、中毒を起こすと考えられています。呼吸困難、衰弱、食欲不振、突然死を引き起こすことや、嘔吐、下痢などの胃腸症状が生じることもあります。

アボカド

■果物の種
特にバラ科の植物(リンゴやアンズ、ウメ、サクランボなど)の種にはアミダグリンなどのシアン化合物が含まれており、大量に摂取すると嘔吐や失神、痙攣、呼吸麻痺などを引き起こす可能性があります。

その他の食べてはいけない食べ物

■チョコレート
チョコレートに含まれるカフェインとテオブロミンが原因で、頻脈、高血圧、不整脈などの循環器症状や抑うつ、嘔吐、下痢が生じることがあります。

チョコレート

■塩土・ミネラルサンド
塩土やミネラルサンドは、ミネラルやグリット(筋胃内にある食べ物の消化に必要なミネラル)の補給のために与えられるものです。ところが、食べすぎると筋胃に大量に溜まって胃の負担になることや、グリットインパクション(筋胃内でグリットが詰まってしまう病気)を起こすことがあるため、与えないことをおすすめしています。
ミネラル源としては、カトルボーン(イカの甲)によるカルシウム補充が安心です。

塩土

■人の食べ物
飼い鳥の体に合わないことが多いです。中毒の原因になるものもあれば、脂肪や糖分の過剰摂取で肥満の原因になることもあります。また、塩分の摂りすぎは心臓や腎臓の負担になる可能性があります。

食べ物以外で与えてはいけないもの

金属

■鉛中毒
鉛はかなり強い中毒を起こします。家庭内では、カーテンウエイト(カーテンの裾に入れる線状のおもり)などに鉛が使用されていることがあり、それを齧って中毒を起こす事例があります。症状は嘔吐などの消化器症状、翼の下垂(かすい)、足の麻痺、痙攣などの神経症状、腎不全症状などを示すことがあります。特徴的な変化として、濃緑色便を排せつすることがあります。

■亜鉛中毒
おもちゃやケージの亜鉛メッキを剥がして食べることや、亜鉛メッキの錆びを食べてしまうことで中毒を起こします。症状は鉛中毒に類似しますが、鉛中毒のほうが重篤な場合が多いです。

■その他の金属
銅(電気コードの銅線など)や真鍮、スズなども中毒の原因になることがあります。最近では、キッチンにある五徳を舐めてしまい中毒を起こした事例もあります。

金属中毒のオカメインコのレントゲン写真。赤い矢印が金属誤って食べてしまった金属(原因金属は不明)

有毒植物

■観葉植物
観葉植物は多様な種類があり、様々な種類で中毒の報告があります。よって種類を問わず注意する必要があります。
たとえば、サトイモ科のポトス、クワズイモ、ディフェンバキア、スパティフィラム、フィロデンドロン、モンステラ、カラーなどはシュウ酸カルシウムが多く含まれています。そのため、口内の粘膜を傷つけて炎症を起こしてしまうことがあり、食欲低下や嘔吐の原因になることもあります。

ポトス

■その他有毒植物
他の植物としては、ニセアカシア、クレマチス、クラウンベッチ、キツネノテブクロ(ジギタリス)、スズラン、キョウチクトウ(オレアンダー)、カランコエ、ルピナス、ポインセチア、シャクナゲ、アメリカヅタ(バージニアクリーパー)、イチイ、スイートピー、アロエ、ヤドリギ、チューリップなどの中毒例もあります。
アジサイの葉を大量に摂取し、嘔吐した例も診たことがあります(アジサイに含まれる青酸配糖体などが影響したと思われる)。

繊維類

ロープのおもちゃ、洋服やカーペットの毛玉、木の繊維などは、持続的に摂取したり一度に大量に摂取したりすると消化管内で詰まってしまい、そのう内異物や腸管結石の原因になることがあります。最近では、人の髪の毛が原因で腸管結石が形成された例もあり、注意が必要です。

その他

■ヒト用の医薬品、サプリメント
ヒト用の医薬品(市販薬、目薬、塗り薬など)やサプリメントが中毒の原因になることがあります。また、薬自体ではなく、含まれる防腐剤などの添加物により健康に影響が出る可能性もあります。ビタミン剤などのサプリメントは、必ず飼い鳥用の製品を使いましょう。

食べてはいけないものを食べてしまったときは……

中毒の原因物質の中には、少量摂取しただけでも強い症状が出るものや、遅れて症状が出てくるものもあります。中毒の原因になる物質を食べた、もしくは食べた可能性がある場合は、できるだけ早く獣医師に診てもらいましょう。早期であれば症状を軽減できることもあります。

おわりに

今回ご紹介しただけでも、愛鳥にとって危険なものが日常生活には溢れていることがわかったのではないでしょうか。
誤食は放鳥中に起きることが多いので、放鳥中は目を離さずよく注意しましょう。また、いま一度ケージ内やお部屋の中に危険なものがないか確認してみてください。
みなさんが愛鳥と健康で楽しい毎日を過ごせることを願っています。

<参考文献>
・Nigel Harcourt-Brown and Jhon Chitty編、福士秀人 ほか 訳、「オウムインコ類マニュアル 第2版」、学窓社、2005年
・Robert B. Altman, “Avian Medicine and Surgery”, NEW LLL PUBLISHER, 1997
・Brian L. Speer, Current Therapy in Avian Medicine and Surgery 1st Edition, Elsevier, 2016
・Teresa L. Lightfoot, Julie M. Yeager, “Pet Bird Toxicity and Related Environmental Concerns”, Vet Clin Exot Anim, 11 , p229–259, Elsevier, 2008
・日本比較薬理学・毒性学会 編、「獣医毒性学」、近代出版、2016年
・日本獣医内科学アカデミー 編、「獣医内科学 第2版」、文永堂出版、2015年
・小嶋篤史 著、「コンパニオンバードの病気百科」、誠文堂新光社、2010年
・海老沢和荘 著、「エキゾチック臨床 Vol.7」、学窓社、2012年
・海老沢和荘 著、「キゾチック臨床 Vol.10」学窓社、2013年
・Alessandro Vetere, Francesco Di Ianni, Martina Gavezzoli and Ciro Cococcetta, “Avian toxicoses: a review”, Sec. Veterinary Pharmacology and Toxicology Volume 12, 2025

・香港食物環境衛生署食物安全センター、フィトヘマグルチニン中毒に関する報告、2023年
・海老沢和荘、第2回横浜小鳥の病院オンラインセミナー「飼い鳥の食事 シード編」、2021年

【執筆】
永嶋惇平(ながしまじゅんぺい)
2020年日本大学生物資源科学部獣医学科卒業後、神奈川県の鳥類専門病院「横浜小鳥の病院」に勤務。2025年5月に徳島県徳島市にて「とくしま鳥の病院」を開院。
X:@bird_vet
Instagram:@jumpeitoritori
LINE:とくしま鳥の病院

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