猫の慢性腎臓病と食事療法の基本

慢性腎臓病とは?

猫の病気でよく耳にする代表的なもののひとつが「慢性腎臓病」です。

「慢性」はゆっくりと長く進行し、完全に治ることが難しい病気に使う言葉です。腎臓病では、3か月以上腎臓の機能低下が続くと「慢性」と判断します。

「腎臓病」は、腎臓の働きが低下する、または、腎臓そのものが傷んでしまう状態の総称です。

つまり慢性腎臓病とは、「腎臓の機能低下が3か月以上続いている状態」を指します。しかし、その多くは原因が見つからずに診断されます。10歳以上の猫の約3〜4割がかかっているともいわれる、とても身近な病気です。

慢性腎臓病が疑われるサイン

この病気は時間をかけて少しずつ進行するため、初期は目立った症状がほとんどありませんが、次のような変化があれば要注意です。

・水入れがよく空になる
・水を頻繁に飲むようになった
・おしっこの量が増える
・おしっこの色が薄く、匂いが弱い
・食欲が落ちる
・体重が減る

進行すると、元気がない・脱水している・吐く回数が増えるなどの症状がみられます。
症状だけで早期発見するのは難しいですが、毎日の飲水と排尿の様子をチェックすることで変化に気づきやすくなると思います。

血圧測定の様子。慢性腎臓病の猫は血圧が高くなってしまうことがあるため、定期的な測定が重要

慢性腎臓病の食事療法

慢性腎臓病では、食事療法がとても重要です。さまざまな研究で、腎臓病用の療法食を続けることで病気の進行が遅くなり、寿命が延びることが示されています。

腎臓病療法食の特徴

腎臓病用の療法食には、次のような工夫がされています。

・リンの制限
腎臓病ではリンをうまく排せつできなくなります。リンが体内にたまると腎臓へのダメージも蓄積されます。

・適度なタンパク質の制限
尿にタンパクが漏れると腎臓がより壊れてしまうので、通常のキャットフードより制限されています。

・高脂肪で高いエネルギー密度
タンパク質を減らした分を脂肪で補い、少ない量でも十分なカロリーがとれるようになっています。

・DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などの不飽和脂肪酸の添加
魚の脂に含まれる成分で、腎臓を守る働きがあると考えられています。

食事療法が必要になるステージ

慢性腎臓病は、国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)によってステージ1〜4に分けられています。
この中で、原則として腎臓病用の療法食が推奨されるのは、ステージ2以上です。
ただしステージ1でも、たんぱく尿や高リン血症など、腎臓病を悪化させる要因がある場合には、獣医師の判断で療法食がすすめられることがあります。

IRISが提唱する慢性腎臓病のステージ分類(IRIS CKD poket guideから一部改変)

食事療法の難しさ

腎臓病用フードは、どうしても「おいしくない」と感じる猫が多く、食べてくれないことが大きな課題です。また、猫は完全肉食動物のため、タンパク質が少なすぎると栄養不足で痩せてしまうリスクがあります。
診断時にかなり痩せている場合や、ステージが進んでいてほとんど食べられない場合には、あえて療法食を使わず、一般のシニアフードにリン吸着剤や不飽和脂肪酸サプリメントを組み合わせることもあります(必ず獣医師と相談して決めましょう)。

実際の食事の進め方とコツ

まず、「カリカリ好きか」「ウェット好きか」など、その子の好みを把握し、いくつかの腎臓病用フードのサンプルを試してみます。1つに決めても途中で急に食べなくなることはよくあるので、複数の候補を用意しておくと安心です。

当院で使用している慢性腎臓病用の療法食のサンプルの例

どうしても療法食を食べない場合は、食いつきが良いシニアフードなどで「とにかく食べてもらうこと」「痩せさせないこと」を優先します。その理由は、痩せていると猫の寿命が短くなるといわれているためです。理想は少しふっくらした体型ですが、肥満にならないよう注意が必要です。
定期的に体重を測定し、体を触って筋肉の付き方をチェックしてあげましょう。
当サイトの「できていますか? 愛猫の体重管理」を参考にしてみてください。

また、慢性腎臓病は脱水が進行しやすい病気であるため、新鮮な水を常に切らさずに用意してあげることが、食事療法と同じくらい重要です。

おわりに

慢性腎臓病は、長期にわたって食事や薬、サプリメントでの管理が必要な病気です。早期に見つけ、適切な治療を続けることで元気に過ごせる時間を長くすることが期待できます。
元気そうに見えても、年に1〜2回は健康診断を受け、日頃から飲水や排尿の様子、体重の変化に目を配ってあげてください。

何か気になることがあれば、早めにかかりつけの獣医師に相談し、その子に合った食事や治療方法を模索することが重要です。そのため、獣医師とのコミュニケーションがとても大切になる病気だと思っています。
本記事で、少しでも皆さんが「愛猫のお家での看護師さん」になれるお手伝いができればうれしく思います。

【執筆者】
角山優輔(つのやま・ゆうすけ)
獣医師。日本獣医生命科学大学獣医学科卒業。VCAジャパン合同会社ゼファー動物病院所属。2025年から麻布大学大学院 小動物内科学研究室 所属。飼い主と良好な関係を築き、ペットと飼い主に合ったオーダーメイドな治療を目指す。共著に『犬のヘルスケア入門』(緑書房、2025年)。

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