フォトエッセイ:海外の牧場をめぐる風景【第9回】農業ショー その3:ロイヤル・ハイランド・ショー(スコットランド・イングリストン)

前回前々回のイングランドの農業ショーに続き、今回はスコットランドの農業ショーを紹介します。スコットランドでも多くの農業ショーが行われていますが、エジンバラ空港の隣にあるイングリストンのロイヤル・ハイランド・センターで開催されるロイヤル・ハイランド・ショー(Royal Highland Show)は特別な農業ショーで、イギリスで最大級といってよいでしょう。

例年6月に開催され、会期は木曜から日曜までの4日間が基本です。他の農業ショーと同じく家畜の審査(品評会)を軸にしていますが、食や工芸、地域の雰囲気まで含めて「スコットランド」を感じることができます。

まずご紹介したいポイントは、スコットランドらしい品種の多さです。長い被毛が特徴のハイランドキャトルは、会場でひときわ存在感があります。来場者の熱気からも、ハイランドキャトルをお目当てに来ている人が多いことがうかがえます。

黒い体に白い帯の入ったベルティ(ベルティッドギャロウェイ)も印象的です。そして、畜産を専門にしている立場からは、巨大なオス牛が会場内を歩いているだけでも驚きます。力のあるオス牛を安全に扱うのは、決して簡単ではないからです。

入賞した動物たちが一列になって歩く「パレード」はショーのハイライトでもあります。パレードでは牛だけではなく、それを引く農家さんたちの服装や表情にも目を奪われます(ただし土曜日と日曜日のみの開催なので、これを見たい場合はスケジュールを要チェックです)。

牛だけではなく、羊や馬も個性的な品種が多数参加しています。羊の多様さには、「こんなに種類がいるのか」と驚かされます。馬は品種の多さに加えて、馬車や乗馬など、利用の幅広さも印象的です。馬と一緒にいる人々の佇まいも、このショーの魅力の一つだと思います。

食のエリアも、ハギス(羊の内臓とオートミールを香辛料でまとめた伝統料理)などの郷土食の他に、地ビールやスコッチなど、いかにもスコットランドらしい内容です。さらに、来場者の服装から売店の小物までタータンチェックがあちこちに見られます。買い物ゾーンには魅力的な品が多く、財布のひもが緩んでしまいます。

会場内には、私が留学していたSRUC(Scotland’s Rural College)やエジンバラ大学のブースもあります。規模が大きく、多くの研究者が参加しており、大人から子どもまで「畜産・農業を科学する」ことを楽しめる展示が充実していました。大学や研究機関が一般来場者に向けて研究・教育の取り組みを紹介している点も、このショーの性格をよく表しています。現場の農業と教育・研究が近い距離にいることを実感できます。

とはいえ、一番のポイントは、農家さんや来場者のスコティッシュアクセントかもしれません。英語というより、スコットランド語というべきアクセントは、最もスコットランドを感じることができるところだと思います(本当に聞き取るのが難しいですが……)。

当連載で紹介した3つのショーは、どれも楽しく学べることは間違いありませんが、私が最もおすすめするのはこのハイランドショーです! とはいえ、それぞれ特徴があるので、どれを選んでも間違いありません。イギリスを訪れる際には、農業ショーを観光コースに入れてみてはどうでしょうか?

【文・写真】
伊藤秀一(いとう・しゅういち)
東海大学農学部動物科学科教授、家畜写真家。1972年東京都生まれ。麻布大学獣医学部環境畜産学科卒業後、麻布大学博士課程修了。北海農業研究センターなどの研究所での勤務を経て、現在は熊本県の東海大学農学部で農用動物と動物園動物の行動およびアニマルウェルフェアを研究している。2019年に1年間、スコットランド農業大学 動物行動学・福祉学チームへ留学。著書に『まきばなかま』(東海教育研究所)、『動物福祉学』(共著、昭和堂)、『動物行動図説』(共著、朝倉書店)、『畜産』(共著、実教出版)など。

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