はっけん! 日本の爬虫類・両生類【第29回】ハイ Sinomicrurus boettgeri (Fritze, 1894)

日本にもコブラの仲間がいることを知っていますか?
コブラといえば、フードを広げ、体の前のほうを持ち上げて揺らす、あの猛毒の蛇です。
日本には数種類のコブラの仲間がいます。そのうちの一種である、「ハイ」と呼ばれる何とも変わった名前の蛇を紹介します。

とても模様が綺麗な「ハイ」

沖縄諸島のいくつかの島に分布する、大きさが30~60センチメートルほどの小さな蛇です。背中側には5本の黒いラインが入り、それ以外の背中部分は赤っぽい奇抜な色をしています。ところどころに節があるものとないものがいて、とくに久米島などには節がないものが多く見られます。これは、数年前まで別種であると考えられており、クメジマハイと呼ばれていました。

ハイの頭部。コブラで有名なフードはない

コブラの仲間の本種ですが、どれほど強い毒を持っているのか気になり、これまでの咬傷例を調べてみました。しかし、あまり記録が見られませんでした。口が小さいので、噛むことはほとんどないようです。だからといって油断はしないでください。毒性は本物ですから。

チャンスがあったので、安全対策をして(頸部をしっかり持って)触ってみたことがあります。鉛筆を持ったような感触で、近くで見ると体色の美しさは際立ちます。ゆっくり眺めるように姿を見ていると、腕に胴体を巻き付けてきました。巻き付いたまま、尻尾の先を強く押し当ててきました。どうやら尻尾の先は尖っていて、刺してくるようでした。他のいきものに対してどれくらいの効果があるのかはわかりませんが、少なくとも人間目線では痛くありません。そっと地面に戻すと、今度は尻尾をくるくると丸め、持ち上げて振りはじめました。おそらく威嚇していたのでしょう。

くるくると丸められた尻尾。先が尖っている

生息環境は幅広く、低地から山地まで様々な場所で見られるのですが、夜行性のため目にすることは稀です。私も、数年前までは姿を年に1回見られるかどうかでしたが、ここ数年は、島を訪れるたびにコンスタントに見つけられるようになりました。特に雨の前後が見つけやすい傾向があります。

日中に水辺で見かけたハイ

ハイの食性は変わっていて、トカゲや小さなヘビしか食べないという変わった習性を持ちます。フィールドを数多くまわっていますが、トカゲや蛇の小さな個体に出会うことは滅多にありません。こんな変わった食性でうまく生き抜けていけるのは、まさに沖縄の自然の懐の広さだなと、いつも感動させられています。まだまだ知られていない生態を持つ魅力的ないきものたちを、しっかりと守っていきたいです。

【文・写真】
関 慎太郎(せき・しんたろう)
1972年兵庫県生まれ。自然写真家、びわこベース代表、日本両棲類研究所展示飼育部長。身近な生きものの生態写真撮影がライフワーク。滋賀県や京都府内の水族館立ち上げに関わる。『日本のいきものビジュアルガイド はっけん!』シリーズ(田んぼのいきもの、カナヘビ、小型サンショウウオ、ニホンイシガメ、ニホンヤモリ、トカゲ、イモリ、ニホンアマガエル、オタマジャクシ、オオサンショウウオ)、『野外観察のための日本産両生類図鑑 第3版』『同 爬虫類図鑑 第3版』、『世界 温帯域の淡水魚図鑑』、『日本産 淡水性・汽水性エビ・カニ図鑑』(いずれも緑書房)、『うまれたよ! イモリ』(岩崎書店)、『日本サンショウウオ探検記 減り続ければいなくなる!?』(少年写真新聞社)など著書多数。

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