犬を皮膚炎から守る食事―皮膚バリアを高めよう!

犬の皮膚の病気には、さまざまな種類があります。代表的なものは、かゆみを主な症状とするアレルギー性皮膚炎、皮脂の分泌が乱れてベタつきやフケが出やすい脂漏症(しろうしょう)、細菌や酵母菌が増えやすくなる細菌性皮膚炎・マラセチア皮膚炎などがあげられます。これらは原因や経過が異なる病気ですが、「皮膚のバリアが弱くなる」という共通の背景を持つことが多いのが特徴です。

こうした皮膚疾患があるとき、犬は「皮膚が赤い」「フケが増える」といった見た目の変化だけでなく、行動でもサインを出します。体をしきりに掻く、床や家具に体をこすりつける、足先やお腹を頻繁に舐める、耳を何度も振る、夜に落ち着かず眠りが浅くなるなどの変化は、皮膚に違和感やかゆみがあるときに見られやすい行動です。こうしたサインに早く気づくことが、皮膚トラブルを悪化させないための第一歩になります。

皮膚疾患にかかったとき、皮膚では何が起きているの?

皮膚は単なる「体の表面」ではなく、体内の水分を守り、細菌やアレルゲンなどの侵入を防ぐ重要なバリアとしてはたらいています。また、外界の刺激を感じ取る感覚器官としての役割や体温調節、免疫反応の場としての役割も担っています。

特に一番外側の角質層は、レンガのような細胞と、そのすき間を埋める脂(セラミド・脂肪酸・コレステロール)によってできた「壁」のような構造をしています。この構造がしっかりと保たれていると、水分は皮膚の内側に保持され、外からの刺激は入りにくくなります。

健康な皮膚では、古い細胞が垢として自然にはがれ落ち、新しい細胞が下から押し上げられる「ターンオーバー」が一定のリズムで繰り返されています。これは、皮膚が常に新しく生まれ変わるための仕組みです。しかし、皮膚疾患があると、このリズムが乱れ、角質層がもろくなったり、すき間が広がったりして水分が逃げやすくなります。その結果、乾燥やかゆみが起こり、さらに細菌や酵母菌が増えやすい環境になってしまいます。炎症が起きると皮膚はさらに傷つき、バリアはより弱くなるため、かゆみ、ベタつきやフケが繰り返される悪循環に陥りがちです。

つまり、皮膚トラブルの多くは「かゆみそのもの」だけでなく、「バリアが弱くなった皮膚」が背景にあります。

脱毛がみられる
フケが多くみられるようになる
毛並みがパサつき、ごわごわした状態

皮膚のバリア機能を高めるにはどうすればいい?

皮膚のバリア機能と食事・栄養素は密接にかかわっています。では、皮膚のバリア機能を高めるために、どのような食事や成分が大切なのでしょうか。

まず基本となるのは、良質なタンパク質です。皮膚や被毛は主にタンパク質でできているため、十分な量と質のいいタンパク質がないと新しい皮膚細胞がうまく作られず、フケの増加や被毛の乾燥、脱毛などが起こりやすくなります。

次に重要な成分が、必須脂肪酸(オメガ6脂肪酸、オメガ3脂肪酸)です。オメガ6脂肪酸は、皮膚のすき間を埋めるセラミドの代謝を支え、水分を保ちやすい皮膚づくりを助けます。一方、オメガ3脂肪酸は、炎症をやわらげ、赤みやかゆみを軽減するはたらきを持ちます。

アレルギー性皮膚炎や脂漏症の犬では、これらをバランスよく補うことで役立ちます。さらに、抗酸化作用を持つビタミンEは、皮膚細胞を守り、血流改善や被毛の健康を支えます。ビタミンAは、皮膚や粘膜の正常な分化を助け、皮膚を丈夫に保ちます。そして亜鉛は、皮膚のターンオーバーや毛の成長に不可欠な成分で、不足すると赤みやフケ、脱毛が起こりやすくなります。

近年では、これらの栄養素を多く含んだ食事やサプリメントで皮膚の栄養素を補う試みも進んでおり、皮膚の水分保持やバリア機能のサポートに期待が寄せられています。

おわりに

犬の皮膚の健康は「外からのケア」だけでなく、「内側からの栄養」に大きく支えられています。皮膚バリアが整っていると水分が保たれ、かゆみや炎症が起こりにくくなる可能性があります。
一方で、サプリメントや機能性フードには期待できる効果もありますが、飼い主さんだけで判断せず、愛犬の状態に合わせて動物病院の先生と相談しながら選ぶことが大切です。

毎日の食事は、愛犬の皮膚を守る「内側からのスキンケア」でもあります。適切な栄養と観察、そして必要に応じたケアの積み重ねが健康な皮膚につながっていきます。

【執筆者】
江角真梨子(えすみ・まりこ)
獣医師。日本獣医皮膚科学会認定医。2016年〜2020年に「Vet Derm Tokyo」に所属。現在は、フリーランスの皮膚科獣医師として従事。人の美容にも精通しており、日本コスメティック協会認定指導員も務める。著書に『Small animal dermatology books 皮疹を極める! – 的確な鑑別と伝わるカルテの記入法』(EDUWARD Press)。

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