フォトエッセイ 猫に呼ばれて世界の街へ【第4回】猫と一緒に雨宿り(モルディブ)

突然の雨を猫と眺める

インド洋のど真ん中に位置するモルディブは、世界屈指のビーチリゾートとして知られ、「白い砂浜に青い空、青い海」の美しすぎる景色が世界中から訪れるたくさんの人々を魅了しています。

海に入れば、ジンベエザメやマンタ、カラフルな魚たちに出会うことができ、一度行ったらリピートせずにはいられなくなります。

モルディブは晴れた景色の印象が強く、雨のイメージがあまりないかもしれませんが、降る時は降ります。季節は雨季と乾季に分かれており、今回は雨季のモルディブでの出来事です。

風が通り抜ける場所でのんびりとくつろいでいた猫が、突然全速力で走り出し、木の下に身を隠しました。突然の行動にびっくりしていると、ほどなくしてバケツをひっくり返したような激しい雨が降りはじめたのです。

傘をさす余裕もなく、急いで雨宿りしなければいけない状況だったので、猫が入っていった木の下に私も避難してみることにしました。すると、驚くことに全然濡れません。頭上を見ると、たくさんの葉が密集していて、まるで自然のドームの中にいるようでした。

他にも雨宿りしている猫がいて、そこが雨宿りに最適な場所であることを知っているようでした。雨が降る様子を眺める猫の横顔がとても凛々しく美しかったのを、鮮明に覚えています。

そんな猫の横顔を見ながら、ふと、この猫は雨が降り出す前に雨宿りの行動をしていたことを思い出しました。「猫が顔を洗うと雨が降る」ということわざがあるくらいですから、この猫は人間には分からない変化を察知して、雨が降りはじめることを予測していたのかもしれません。

10分ほどで雨が止み、人も猫も何事もなかったようにまた動きはじめました。

常夏で暑いイメージのモルディブですが、雨が降ると肌寒く感じることもあります。

【文・写真】
町田奈穂(まちだ・なほ)
埼玉県出身。世界中を旅しながら、地域の猫を撮影している。猫の表情や仕草、猫が暮らす環境の色と光に重点を置いた写真が特徴。2023年に世界一周旅行を達成し、初の個展を開催。その他、企業カレンダーやグループ展など精力的に活動中。
Instagram:cat_serenade
X(旧Twitter):naho_umineko