はっけん! 日本の爬虫類・両生類【第5回】ニホントカゲPlestiodon japonicus(Peters, 1864)

爬虫類には美しい色彩の種が多く、人が爬虫類の虜になる理由のひとつでもあります。実は私も、その色彩に魅せられたひとりです。子どもの頃に野外で初めてトカゲの幼体に出会い、そのコバルトブルーの尾の際立つ美しさに衝撃を覚えたのです。少年時代の出会いが、その後の人生にも大きく影響を与えることになりました。

今回は、そんな魅力をもつトカゲ(おもにニホントカゲ)についてお話しします。

日光浴で体を動かす

自宅周辺でトカゲを観察していると、面白い姿が見られます。

日が昇ると、物陰からトカゲがのそのそと出てきます。日向まで一歩ずつ歩みを進める姿は、コミカルかつ慎重です。警戒心が非常に強いトカゲですが、日光浴により体温を上げないとうまく動けないのです。

日光浴に集中しているときは肢をピンと伸ばして体を平たくし、より日光を浴びやすい姿勢をとります。私が静かに近寄っても、間合いを詰められるまでは日向から動こうとしません。いよいよヤバそうな距離に近づくと、やっと面倒くさそうに逃げていきます。このように、トカゲは日光浴をよく行って体温を上げ、代謝を上げることで俊敏な動きを実現しているのです。

写真:肢を伸ばして日光浴

喧嘩

トカゲには喧嘩っ早い一面もあります。

繁殖期のオスは喉元が赤く染まり、頭部の形状が少し変化し、まるでえらが張ったような姿に変貌します。この時期のオスは縄張り意識が強く、オス同士が近寄ると喧嘩が始まります。喧嘩では、相手を追い払うために交互に嚙みつくのですが、相手に噛みつくことで頭の大きさを測っているようにも見えます。より体の大きな個体が相手を追い払えるのです。

写真:喉が赤く染まったトカゲ

柔らかい卵はつきっきりで子育て!

強いオスは、メスと出会うと交尾をします。交尾をしたメスは、石の下などの地面に産卵床(さんらんしょう)を作り、5~15個の卵を産みます。「卵」というと、ニワトリのように硬い殻をもつ卵を想像してしまいますが、爬虫類であるトカゲの卵は柔らかい殻をもちます。このため、卵が孵化するまでメスが子育てをします。ほとんど飲まず食わずで、乾燥から守るために卵を舐めたり、卵を吻で押して適した場所に移動させたりと、つきっきりで子育てするのです。

写真:卵に付き添うメス

魅力いっぱいの身近な生きもの

無事に卵が孵化すると、コバルトブルーの尾をした幼体がいっせいに現れます。トカゲは民家周辺や石垣の多い場所、道路脇の法面(のりめん)などさまざまな場所に暮らしており、幼体はよく同じ場所で集中して見つけられます。

憧れのコバルトブルー色は成長に伴って消えてしまいますが、メスではオスよりも青っぽい色が長く残ります。

写真:民家周辺でも見られるトカゲ

最近トカゲは琵琶湖付近を境目に、東日本に生息しているのはヒガシニホントカゲ、西日本に生息しているのはニホントカゲというふうに分類されました。よっぽど目がいい人以外は捕まえて観察しないと分からないような違いが、頭部の鱗の形にあるのです。なお、遺伝的には2種の間で大きく異なるようです。

トカゲは身近な生きものでありながら、まだまだ知られていないことがあり、最近になっても新しい発見があります。観察を通して、新たな疑問をどんどん抱きつつ、魅力を発見してみましょう!

写真:身近でありながら、知られていないことも多いトカゲをやさしく紹介した一冊(関慎太郎『日本のいきものビジュアルガイド はっけん!トカゲ』[緑書房])

【文・写真】
関 慎太郎(せき・しんたろう)
1972年兵庫県生まれ。自然写真家、びわこベース代表、日本両棲類研究所展示飼育部長。身近な生きものの生態写真撮影がライフワーク。滋賀県や京都府内の水族館立ち上げに関わる。
『日本のいきものビジュアルガイド はっけん!』シリーズ(ニホンヤモリ、ニホンイシガメ、オオサンショウウオ、ニホンアマガエル、オタマジャクシ、イモリ、トカゲ)、『野外観察のための日本産両生類図鑑 第3版』『同 爬虫類類図鑑 第3版』、『世界 温帯域の淡水魚図鑑』『日本産 淡水性・汽水性エビ・カニ図鑑』(いずれも緑書房)、『うまれたよ!イモリ』(岩崎書店)、『日本サンショウウオ探検記 減り続ければいなくなる!?』(少年写真新聞社)など著書多数。最新刊『日本のいきものビジュアルガイド はっけん! 小型サンショウウオ』(緑書房)が2023年9月29日に発売。