美しく多様なインコの仲間たち
インコ科の鳥は約330種おり、アメリカ・アフリカ・アジア・オーストラリアなど世界中に分布しています。インコは基本的には、雌雄同色の色鮮やかな羽色をしており、果実を主食にしています。その美しさと人懐っこさゆえ、古くからペットとして飼育されてきました。
飼育されていた鳥が逃げて野生化した事例もあり、東京や横浜で野生化したワカケホンセイインコが数百羽と飛び回っているという話を聞いたことがあります。また、籠脱けしたセキセイインコなどもまれに観察できます。
今回のツアーでは、コンゴウインコが集まるという場所を訪れました。
コンゴウインコは、コスタリカで見られる大型のインコです。尾が長く、全長は1メートル近くあります。飼育されることも多いインコですが、野生で見るとさすがに迫力があります。ダイヤモンドのことを金剛石と呼びますから、そんな輝きを持った鳥ということでしょうか。多くのコンゴウインコの仲間が絶滅の危機にあり、すでに5種類は絶滅したと言われています。
給餌活動をしている個人宅の庭があり、いつやって来るかは分からないので、来るまでコーヒータイムです。やがてコンゴウインコが「キーキー」と大きな声をあげながら群れでやってきて、ヒマワリの種子を急いで食べ、またどこかへ去っていきました。
ヒワコンゴウインコは、コスタリカで見られるコンゴウインコ2種のうちの1種です。こちらもやはり絶滅の危機にあります。
現地ガイドが「ヒワコンゴウインコが夕方に餌を食べにくる場所がある」と言うので、車で向かいました。その場所でしばらく待つと、予想通りに群れでやってきました。
夢中で写真を撮っていると、いつの間にか道路の反対側で、数人の怪しい人物がこちらを見ています。まずい予感を覚えたらしい現地ガイドに「車に戻りましょう」と促され、我々は早々と車に乗り込んで帰ることにしました。比較的治安が安定しているコスタリカといえども、治安の悪い場所もあるようです。私たちの持っているカメラも高価で取り引きされるとのことで、日本の治安の良さをあらためて感じました。
多様な鳥に自然の豊かさを感じる
ツアーの途中で、地名は忘れてしまいましたが、いろいろなインコが見られる場所にやってきました。
林が見える場所で待っていると、次々とインコがやってきます。40センチメートル以下の小型のインコたちです。現地ガイドが「〇〇インコです」と名前を教えてくれますが、記憶が追いつきません。まずは記録と写真に専念し、後からゆっくり図鑑と照合することにしました。
インコを待っている間にも、いろいろな鳥が現れます。頭の冠羽が印象的なカンムリサンジャクも現れました。
「サンジャク」という鳥も中国やベトナムに生息していますが、おそらくは古い長さの単位「尺」から付いた名前ではないでしょうか。1尺が約30センチメートルなので、3尺なら90センチメートル。実際のサンジャクは70センチメートルほどですが、語呂が良いのでそのように呼ばれたのでしょう。カンムリサンジャクは50センチメートルほどの大きさです。
少し離れたところにいた現地ガイドに手招きで呼ばれました。指さす先にいたのは、わずか15センチメートルしかないアカスズメフクロウです。これは、缶コーヒーくらいの大きさです。世界最小クラスの、しかも夜行性のフクロウに出会えたことから、コスタリカの自然の豊かさを再認識できました。
【文・写真】
大塚之稔(おおつか・ゆきとし)
1954年生まれ、信州大学卒。カッコウやライチョウなどの研究を行う。日本野鳥の会岐阜顧問、環境省希少動植物保存推進員、岐阜県野生生物保護推進員などを務めている。野鳥観察歴55年。日本全国はもちろん、今回紹介しているコスタリカをはじめ、東南アジア、アフリカ、ヨーロッパなど十数カ国を巡り、野鳥の観察・撮影をしている。