多種多様な小鳥たち
コスタリカの国土面積は日本の7分の1以下ですが、生息する野鳥は日本の1.5倍である900種類以上です。世界の鳥類の10分の1がコスタリカで見られるのです。
なぜそんなに多くの野鳥が見られるのでしょうか? 理由として、熱帯から乾燥帯までと気候や植生の幅が大きいこと、南北アメリカの中央に位置するために通過していく渡り鳥が多いこと、海に囲まれており水鳥が多くいることが挙げられます。国土の4分の1が国立公園や生物保護区として保全されていることも、大きな要因でしょう。
今回までの記事では、比較的大型の野鳥を中心に紹介してきました。しかし、コスタリカに多くいる、色鮮やかな小鳥たちを忘れていけません。
フウキンチョウ
とくに紹介したい小鳥は、フウキンチョウの仲間です。日本では見られませんが、ホオジロやアトリに近い鳥たちです。
写真:キンズキンフウキンチョウ
出会ったフウキンチョウはそれぞれが印象的でしたが、中でもコシアカフウキンチョウには印象深い思い出があります。
コスタリカでのツアー中は森の中の施設に宿泊しており、食堂へは屋外を歩いて行っていました。食堂では、いつ野鳥がきても良いように双眼鏡とカメラをテーブルに置き、テラス席で食事をしていました。
その食堂にいつもやってきていたのが、腰の赤色が鮮やかなコシアカフウキンチョウの雄でした。食事のときにテーブルの下にこぼれた食べ物を捜しに来ていたのです。
食事をする人には、わざと食べ物を足元に落とす人もいました。そして私は、その食べ物を狙うコシアカフウキンチョウを写真に撮っていました。鳥だけでなく、私もおこぼれにあずかっていたわけです。
フウキンチョウには他にも思い出があります。
ハチドリの仲間に出会うために、花の多い庭を訪れたときのことです。ハチドリを目的にしていると、ついハチドリばかりに目がいってしまいがちです。しかしこのときは、近くの木に真っ赤な小鳥がいることに気づけました。写真を撮り、後から確認すると、嬉しいことにナツフウキンチョウとホノオフウキンチョウの2種類が撮れていました。
他にも色鮮やかな小鳥たちが
食事のために立ち寄ったあるレストランでは、屋外にきれいな鳥がいるのを窓ガラス越しに見つけました。15センチメートルほどのズアカゴシキドリです。五色という名の通り、色鮮やかな鳥です。
私たちは食事もそこそこに、撮影のために外に出ていきました。他のテーブルにいた観光客には「マナーのなってない日本人だ」と思われたことでしょうが、ツアーでズアカゴシキドリに出会えたのはこのときだけでした。わずかなチャンスを取り落とさないようにしようと改めて思わされた出来事でした。
コスタリカには、自宅の庭に餌台を設置して野鳥を集め、一般に公開している家があります。中には餌代として入場料を取っている家もあり、そこでは時間制限があったり、カメラ持参の人は金額が高くなったりします。短時間で多くの野鳥と出会いたいときには、こういう場所を利用するのも手です。写真のズグロミツドリやルリミツドリは、そんな餌台で撮影したものです。
【文・写真】
大塚之稔(おおつか・ゆきとし)
1954年生まれ、信州大学卒。カッコウやライチョウなどの研究を行う。日本野鳥の会岐阜顧問、環境省希少動植物保存推進員、岐阜県野生生物保護推進員などを務めている。野鳥観察歴55年。日本全国はもちろん、今回紹介しているコスタリカをはじめ、東南アジア、アフリカ、ヨーロッパなど十数カ国を巡り、野鳥の観察・撮影をしている。