2月に沖縄を訪れ、今年初のホエールスイムに参加しました。
国内のホエールスイムは1月下旬から3月末ごろまでがシーズンのため、約1年ぶりにザトウクジラと再会できる、という期待に心を躍らせながらのスタートでした。しかし、現実は厳しいものでした。
なかなか見つからないクジラ
朝の7時30分に出港した船からクジラのブロー(息継ぎ)を探したのですが、波があったこともあり、なかなか見つけられません。
やっと見つけたと思いきや、休まず泳ぎ続けているクジラや、ブリーチ(ジャンプ)をしているクジラだったため、海に入るのは危険だと船長が判断しました。この時点で、出船から約4時間が経過していました。
気温は13度ほどでしたが、小粒の雨が降りしきり、北風もあったため、体温がどんどん奪われていきます。
その後も2時間ほど船を走らせて他のクジラを捜索しましたが、なかなか見つかりません。不安にさいなまれていたところ、仲間の船からクジラ発見の連絡がありました!
こうして、仲間の船と一緒にクジラの親子を観察することとなりました。
親離れ間近の親子クジラ
毎年ザトウクジラを観察するたびに感じるのは、その圧倒的な大きさです。
基本的に、クジラは1年ほどで親離れします。このとき見た子クジラは7メートルほどで、本来なら親離れをしていることが多いサイズなのですが、まだお母さんにべったりでした。
我が子を自由に遊ばせながらも少し離れて見守っているお母さんの様子からは、子どもが親離れできていないのか、お母さんが子離れできていないのか、わかりませんね。
海は雨の影響で、薄くもやがかかったように濁っていました。もうすぐ訪れるであろう2頭の別れを、海が悲しんでいるような光景でした。
国内で観察できる個体は、基本的に子育て・繁殖目的で日本を訪れているため、あまり餌を食べないそうです。そのため、観察シーズン初期である1月頃はふくよかな体型でも、日を経るごとにスリムになっていきます。
クジラの命がけの子育ては、見るたびに心を打たれます。これからも、野生のクジラの世界にお邪魔させていただいている気持ちを忘れずに、大切に撮影を続けていきたいです。
【文・写真】
あき
1996年大阪府生まれ、東京都在住。水族館や水中、音楽ライブの撮影のほか、雑誌、Webメディアへの寄稿などを行う。2017年、水族館の生きものを綺麗に撮影したいと思い、写真を始める。2023年、国際フォトコンテスト8TH 35AWARDS「UNDERWATER PHOTOGRAPHY」で100Best photo選出、Top35 photographers選出。『幻想的な水族館の世界カレンダー2024』(緑書房)が好評発売中。
X(旧Twitter):@akira1027_photo
Instagram:@akira1027_photo
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