動物業界のお仕事:動物園の飼育員(長崎バイオパーク)

「いきもののわ」6月の特集では、いろいろな「動物業界のお仕事」を紹介していきます!

今回は、動物園の飼育員をしている藤田さんに、1日の業務や就職までの経緯、この仕事を目指す人へのアドバイスなどをお聞きしました!

写真:長崎バイオパークの藤田さん

動物園の飼育員のおもな仕事は、動物の飼育・繁殖や展示にかかわる業務、来園者などへの教育普及、研究などです。

8時30分ごろに出勤し、まずは動物舎を巡回して異常がないことを確認します。その後に事務所で飼育日誌やメールなどの確認をします。9時ごろに餌切り場でその日の餌を準備し、園内にある動物とのふれあい空間「PAW(ペットアニマルワールド)」へ移動します。まずは展示場を掃除してから動物を移動させます。動物が朝の餌を食べている間に、餌を食べている様子を観察しながら、動物舎の掃除・水洗をします。

写真:グリーンイグアナへの餌やり

10時30分の開園時間の前に朝礼をします。11時にごはんタイムのイベントを実施し、12時にお昼休みに入ります。13時からは、午後のイベントの実施、管理の準備、動物のトレーニングなどをします。

写真:アフリカオオコノハズクのフライトトレーニング

15時から動物を動物舎に収容しはじめます。動物が動物舎で夕方の餌を食べている間に、展示場を掃除・水洗します。動物舎の施錠確認をしたら、事務所で飼育日誌の記入と引継ぎをして、1日の業務を終了します。

私が小学生のころに、よくテレビに動物と会話ができる人が出ていました。それを観て、幼いながらに「そんなことできないでしょう」と思っていたのを覚えています。しかし飼育員になった今は、会話こそできないものの、担当している動物が考えていることがなんとなく分かるようになりました。その個体が求めているものや、してほしくないことが分かったときには「今、動物と会話できている?」と感じて嬉しくなります。

また、人慣れしていない個体への馴致(じゅんち)や体重測定などのトレーニングの成果があったときや、それが繁殖などの結果につながったときは「私のしていたトレーニングの成果が出た!」と達成感を感じます。

*馴致(じゅんち):動物などを環境に慣れさせて、徐々に適応させること。

写真:キバタンの体重測定

幼いころは特別動物が好きだったわけではなく、祖母の家で飼われていた猫や近所の犬を可愛がっていたくらいでした。アルバムを見返すと牧場や動物園に連れて行ってもらっていたようですが、あまり記憶もありませんし、どの写真にも動物を見ていない仏頂面が写っています。

しかし、きっかけは覚えていないものの、やがて「動物が好きだな、将来は飼育員として働いているんだろうな」と思うようになっていきました。中学生のときには「飼育員になる」と決心し、高校の卒業式の日に行われた最後のホームルームで「バイオパークで働くので、みんな来てください!」と言ったのを覚えています。

写真:モルモットの飼育

写真:アメリカビーバーの成体(左)と赤ちゃん(右)への餌やり

高校生のときに動物園学に興味をもち、学べる大学に進学しました。大学では、動物園学、野生動物学、動物行動学などを学びました。休みの日には多くの動物園を巡ったほか、気になった動物園やサファリパークへ実習に行きました。2年生のときには現在の勤め先である長崎バイオパークでも実習し、「動物たちが暮らす空間に人間がお邪魔する」というコンセプトに魅力を感じました。

写真:長崎バイオパークで放し飼いにされているミーアキャット

写真:中南米の景観を再現した「ラマの岩山」

3年生のときに新型コロナウイルス感染症が流行したため、オンラインを中心に就職活動をしました。その中で、長崎バイオパークの就職試験を受けて採用されました。

真摯に動物と向き合う飼育員になるには、動物の些細な変化を見逃さない観察力が必要です。動物と会話ができない以上、動物のしぐさや行動などから感情を読み取るしかないからです。また、焦らずに動物を待てる忍耐力も重要です。担当している個体の馴致やトレーニングなどが思うようにいかないときでも、動物を信じて、めげずに毎日向き合うことが大切です。

写真:アメリカビーバーの体重測定トレーニング

それから、とてもかわいい動物ではありますが、「かわいい」だけで終わらせてはいけません。「この動物を守るにはどうすればいいか」を考えるきっかけになるのが動物園であり、私たち飼育員はそれを考えるお手伝いができる立場です。動物の魅力のその先を伝えられるこの業界で、一緒に働けると嬉しいです。

藤田美優(ふじた・みゆう)
バイオパーク株式会社 外部事業課 PAW