フォトエッセイ 猫に呼ばれて世界の街へ【第14回】気まぐれな天気と猫たち(マレーシア)

マレーシアの北西部に位置するペナン島。
島の北部のリゾートエリアでは、美しい白砂ビーチでのんびりした時間を過ごすことができます。
パラセーリングやウインドサーフィンなどのマリンスポーツを楽しむ人もいました。

ビーチを散歩していると、時々、猫が遊びに来てくれます。

私が猫と戯れていた時、ふと声を掛けられました。
「そっちにも猫がいるよ」と、教えてくれたのは地元の親切な女性でした。

言われたほうに行ってみると、猫が歩み寄ってきてくれました。
しかし、その背後から不穏な雲が迫ってきていました。

黒く重たい雲は、今にも激しい雨を降らせそうでした。さらに、冷たく強い風も吹いてきて「これはまずい」と思い、慌てて猫と共に屋根の下に避難しました。

予想通り、バケツをひっくり返したような激しい雨が降り始めました。
雷も激しくとても怖かったのですが、絵に描いたようなスコールに「これが南国の醍醐味だ」と思い直し、この状況を楽しむことにしました。

豪雨を利用して洗車を始める人もいて、その手際の良さに感心しました。
島で時々見かける猿は、豪雨に関係なく活動している様子でした。

猫たちにとっても”いつものこと”なのでしょう。皆、余裕の表情を浮かべています。
子猫は少々退屈そうでしたが、雨が止んだら何をしようかと空を見上げて考えているようでした。

やがて雨が止むと、空は一変して美しい夕焼けに染まりました。
南の島の空は、実に多彩な表情を見せてくれます。

【文・写真】
町田奈穂(まちだ・なほ)
埼玉県出身。世界中を旅しながら、地域の猫を撮影している。猫の表情や仕草、猫が暮らす環境の色と光に重点を置いた写真が特徴。2023年に世界一周旅行を達成し、初の個展を開催。その他、企業カレンダーやグループ展など精力的に活動中。
Instagram:cat_serenade
X(旧Twitter):naho_umineko