フォトエッセイ 犬と人が織りなす文化の香り【第9回】イギリス・コッツウォルズ

どこか懐かしい“イギリスの中心“

イギリスの中央に広がる丘陵地帯で、ロンドンの北西約200キロメートルに位置しているコッツウォルズ地方。

イギリスらしく美しい田園風景が広がる場所として有名で、その名前は「羊のいる場所」を意味します。ここには羊毛産業の中心地として栄えた村が点在し、緑豊かな牧草地で羊が放牧されている様子を今でも見ることができます。緑の牧草地に囲まれた村々は、はちみつ色のライムストーン(石灰岩)の家が並び、おとぎの国へ迷い込んだかのような世界が広がっています。

「イングランドでいちばん美しい村」と称賛されている、バイブリー。14世紀には羊小屋・倉庫として使用され、後に機織職人の住宅となったコテージの前の美しい川には、カモたちが優雅に泳ぐ姿が見られました。

車で走っていると、あちらこちらで羊の群れに出会えます。フットパスでは車を停めて、羊の群れを眺めながら散歩することができます。フットパス発祥の地であるイギリスならではの贅沢な楽しみ方です。

滞在していたホテルの裏あたり一面は、緩やかな丘が広がり、乗馬をする人たち、散歩を楽しむ人や犬たちに毎日出会うことができました。

ひと目で旅に来ているのだとわかる自分に対し、「おはよう」「こんばんは」「またね」とあいさつをしてくれます。また、飼い主に連れ添う犬たちも穏やかにゆっくりとしっぽをふりながらあいさつに来てくれます。この場所でのそんな時間の流れや、人と犬とのやりとりにふれて“紳士”を感じられたことで胸がいっぱいになりました。

「コッツウォルズに行くなら」と、念願のマナーハウスに滞在しました。マナーハウスとは、イギリスの旧貴族や名士たちが所有する土地=荘園(マナー)に建てた豪華な邸宅を、ホテルとして改修したものです。荘園を持つ貴族たちは、多くの使用人を雇って穀物を育てたり、広大な土地を使って狩猟や乗馬を楽しんだりしました。邸宅は上流階級の社交の場だったそうです。

【写真・文】
蜂巣文香(はちす・あやこ)
写真家。犬、猫、コンパニオンバードなどのペット写真をはじめ、手仕事やライフスタイルなどさまざまな分野で“伝わる”写真を日々撮影している。広告や雑誌、書籍、WEBなど幅広く活躍中。欧米を中心とした海外での撮影経験も豊富。愛犬雑誌「Wan」(緑書房)でもおなじみのカメラマンで、柴犬をモチーフにしたカレンダーシリーズ「しばいぬ(卓上)」「日本の柴犬(壁掛け)」「黒柴(壁掛け)」(緑書房)も毎年好評を博している。
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