リクガメの飼育入門 ~初心者が揃えるべき環境・餌・温度管理~

リクガメの生態・特徴

一般的に、「カメ」と聞いて思い浮かぶいきものは、水辺に住み日本にも生息しているミズガメやヌマガメだと思います。一方で、リクガメ(陸亀)は、多くは熱帯や亜熱帯に分布して、陸上生活に適応しているカメのことを指します。

画像1.レタスを食べるリクガメ

リクガメといっても種類は様々で、専門家によって見解は異なりますが、現在約42種が確認されています。日本では、30種ほどのリクガメが飼育されています。
日本でも良く知られているゾウガメなどの大型種は、最大甲長約1メートルになりますが、ペットとして一般的に飼われているリクガメは、最大甲長15~20センチメートルの中型種が多いです。

リクガメの寿命は長く、100歳を超えたという記録もあります。しかし、日本での飼育下では種類にもよりますが、概ね20~30年といわれています。まだ飼育方法が確立されてから歴史が浅く、今後もっと延びる可能性があります。

そしてリクガメは全て希少動物に指定されています。「ワシントン条約」により、商業目的の取引が規制されております。また、「動物愛護管理法」により、「動物販売時説明書」無しに購入ができないなどの規制がされています。しかし、リクガメを飼うということは、希少な動物を飼うということになり、適正に飼育すれば希少動種を守ることに繋がります。

飼育で必要なもの

ケージを用意して環境を整える

水槽を用意される人もいますが、前面に扉のある爬虫類用ケージの使用をおすすめします。ほとんどの器材は上部に取り付けることになるうえ、温度を保つために蓋をした状態にする必要があるので、上部がオープンになっている水槽では何かしら工夫しないと器材が設置出来ず、無理やり設置してもお世話が難しくなります。

ケージの大きさは、最後まで同じケージで飼育しようと考えると幅90センチメートルが必要です。途中で買い替えることを前提としているのであれば、幅60センチメートルのケージから始めても問題ありません。

大型種に関しては、大きくなるにつれて大型ケージや、場合によっては小部屋など用意する必要があります。

画像2.ケージの例

ケージ内に設置する器材を揃える

初めて飼育を開始する場合は、必要な飼育器材が揃っている飼育器材セットがおすすめです。セット内容によっては、必要な物が入っていなかったり、逆に余分な物が入っていたりすることがあるので注意が必要です。

必須器材は下記の通りです。
・温度を一定に保つための「爬虫類用サーモスタット」
・ケージ内に敷く専用の「床材」
・適正温度、湿度を確認するための「最高最低温湿度計」
・水分補給するための「水受け皿」
・甲羅の形成に不可欠な「UVライト」&取付用クリップソケット
・加温する為の「ヒーター」2個&取付用クリップソケット

このように、飼育するには必ず飼育器材で適切な環境を作る必要があるということを理解しましょう。

画像3.飼育器材の例

お世話の仕方

餌はリクガメ専用の人工フードを適度に使用して、リクガメに適した葉野菜や野草(入手できれば)を与えてください。リクガメに与えない方が良いものもあるので、事前に確認しましょう。

与えるタイミングとしては、日中お仕事などで留守にされる場合は、出かける前の午前中に与えるのが良いです。人工フードは残すと不衛生になりやすいので、残っていれば取り除き、野菜などは置いたまま出かけても大丈夫です。

リクガメの温浴に関しては賛否両論ありますが、身体やケージ内を清潔に保つために定期的に行うことを推奨します。
また、基本的に彼らはスキンシップを望んでいるわけではないので(個体差はあります)、必要なお世話以外ではそっと観察してあげましょう。

ケージは、汚れた部分があれば洗剤などは使わずに、専用のクリーナーや除菌剤、無ければ水拭きをしてください。
床材は、小さめな個体であれば2~3カ月に1回、大きい個体の場合は1カ月に1回は新しい物と交換しましょう。

飼育の注意点

リクガメを飼育するにあたって重要なことは、温度、湿度、紫外線、餌です。リクガメは日本の自然界には存在しないので、適切な環境を作らないとすぐに調子を崩したり、悲しい結末になったりします。ただし、「自然界ではこうなのだから」と、そのままを再現しようとすると対応出来ない個体もいるので、どの個体でも快適に過ごせる環境を作る必要があります。
温度に関しては、通年で、必ずサーモスタットを保温球などにつなげて適正温度を一定にキープしてください。

旅行などで留守にする場合、リクガメは健康であれば1~2日程餌を食べなくても餓死しませんが、特に幼体などはひっくり返ったままになると危険です。床材と水入れをフラットな状態にするなど、原因を取り除くことが大切です。
個人的な意見として、留守にするには3日が限度だと思います。それ以上になる場合は、リクガメを預かってくれるペットホテルや動物病院、知り合いにお願いするなどしてください。

おわりに

リクガメは、こんもりとした甲羅でてくてくと歩き回り、葉っぱをモシャモシャ食べる姿は非常に愛らしいいきものです。しかし、物言わぬ動物なので、リクガメ飼育に大切となる適切な環境と餌、日頃の観察をしっかりと行ってください。

少しでも異常を感じたら、出来るだけ早くリクガメを診ることが出来る動物病院へ連れて行きましょう。些細なことであれば、ショップなどに相談しても良いですが、明らかに元気が無い、餌を2日以上食べないともなれば、早めに対処しないと最悪な事態を招く可能性もあります。

また、インターネットには間違った情報も多いので、鵜吞みにせず専門家へ相談しましょう。
上手に飼育をすれば、30年以上の人生の相棒も夢ではありません。
正しい知識を持って、ご縁のあったリクガメの長寿を全うしてあげてください。

画像4.散歩中のリクガメ

【執筆】
佐藤菜保子(さとう・なほこ)
リクガメ専門ショップ トータス・スタイル 店長。2004年、西日本初のリクガメ専門ショップをオープン。ベストコンディションの生体を届けすることを第一に考えて個体ごとの健康管理を行い、爪やくちばしのお手入れなど独自のサービスや、専門のペットホテルも併設。著書に、『もっと知りたい リクガメのこと 幸せに暮らす 飼い方・育て方がわかる本 新版』(メイツ出版、監修)
ホームページ:https://www.tortoise-style.com/

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