書籍『爬虫類の病気百科』(著:霍野晋吉)発刊

緑書房はこのたび、『爬虫類の病気百科』(著:霍野晋吉)を発刊しました。

爬虫類にかかわるすべての人に

この本は、爬虫類の飼育者が直面する「何かおかしい」という状況に即座に対応できるよう、約35年にわたり爬虫類を診療してきた著者が、爬虫類の病気を徹底解説した一冊です。
爬虫類飼育者、高度な飼育技術をもつブリーダーやショップ関係者、さらにはエキゾチックアニマルの診療に携わる獣医師や愛玩動物看護師にとっても有用な内容となっています。

声なき家族の健康を守るために

爬虫類の飼育頭数は年々着実に増え続け、伴侶動物としての地位を確立しつつあります。その背景には、多くの種において飼育方法が研究・確立され、その情報が広く共有されるようになったことが理由にあげられます。
適切な温度・湿度管理、栄養学に基づいた食事、紫外線ライトの重要性などが解明された結果、飼育下においても彼らは格段に長生きするようになり、本来の寿命を全うできるようになりました。
しかし、彼らと長く暮らせるようになったからこそ、私たちは新たな課題に直面しています。それは、彼らの「病気」に対する情報が、あまりにも不足し、まとまっていないという深刻な現実です。食欲が落ちた、なんとなく元気がない、色がくすんでいる……。そうしたわずかな変化は、彼らにとって、実は病気がかなり進行した状態を示す「最後のサイン」であることも少なくないのです。

さらに、爬虫類の飼育や病気に関しては玉石混交の情報があふれ、誤った知識や民間療法に頼ってしまった結果、手遅れになってしまうという悲しいケースも後を絶ちません。
愛する家族の一員として迎え入れた爬虫類たちが、声なき苦しみを抱え、誰にも気づかれずに命を落としていく。これほど悲しいことがあるでしょうか。彼らの魅力に惹かれ、ともに暮らすことを決めた私たち飼育者には、彼らの健康を守り、その命に最後まで責任をもつ義務があるのです。

『爬虫類の病気百科』は、そうした切なる想いから生まれました。飼育者が直面する「何かおかしい」という状況に即応できるよう、2つの視点から構成しています。1つは、飼育者にとってわかりやすいように、カメ、トカゲ、カメレオン、ヘビの症状から考えられる病態を解説するアプローチです(カメレオンはもちろんトカゲの仲間ですが、独特の生理や生態をもつことから、本書ではトカゲから分離して解説しています)。

カメ、トカゲ、カメレオン、ヘビの症状から考えられる病態を解説

もう1つは、より深く爬虫類の病気を理解するための、皮膚、甲羅、消化器、呼吸器と循環器、泌尿器、生殖器、尾と骨格・関節、神経、眼、栄養不足、全身感染症と系統別に疾病を網羅的に解説するアプローチです。

臓器など系統別に病気を解説

特筆すべきは、すべての解説において豊富なカラー写真やイラストを用いている点です。視覚的かつ直感的に理解できるよう配慮しており、貴重な写真だらけです。爬虫類の病気や健康管理をテーマにした書籍のなかで、このようなアプローチのものは世界にも類をみません。

爬虫類とともに暮らすということは、太古の地球から受け継がれてきた、神秘的でたくましい「命」の営みを、間近で感じることのできる素晴らしい体験です。その小さな体に秘められた生命の輝きを、1日でも長く、健やかに保つために……。この本はそんな願いから生まれました。

症状を視覚的かつ直感的に理解できるよう、約1,100点の写真・イラストを使用

■主要目次
Introduction
爬虫類の健康は環境に左右される 温度管理、紫外線照射などのポイントをおさえよう
 温度管理、湿度管理、光とライト、ストレス

Introductionでは、飼育者が必ず押さえておくべき環境づくりやストレスへの配慮などを解説

Part1 症状から考えられる病態
Chapter1 カメ
 基礎知識
1-1 ミズガメ
 基礎知識、食欲がない、四肢や頭に白い皮がついている/ケガをしている/カサブタがある、甲羅が剥がれている/白い部分・赤い部分がある/小さな穴があいている、甲羅が変形している/柔らかい、甲羅が割れた、耳が腫れている(頭や顔の脇、首が盛り上がっている)、眼が腫れている/閉じたまま、クチバシが伸びた・折れた、頻繁に口を開けている、四肢が腫れている/うまく歩けない、傾いて泳いでいる、お尻から何か出ている、成長しない/痩せている
 +Plus 天然記念物、カメの活動時間、爬虫類の冬眠への対応、ミズガメへの給餌量、食欲不振のミズガメに与えるエサ、カメの食道瘻カテーテル、ミズガメ水槽の水換え、ミズガメ水槽の水量、ミズガメの複数飼育でのケンカ、カメの散歩と運動、ミズガメの屋外での池飼育、ハーダー腺、カメの甲羅の脱皮
1-2 リクガメ
 基礎知識、食欲がない、甲羅に白い部分・赤い部分がある、甲羅が変形している/柔らかい、甲羅が割れた、四肢が腫れている/うまく歩けない、軟便・下痢をしている、糞が少ない・出ていない/力んでいる、クチバシが伸びた、口から泡が出ている/頻繁に口を開けている、お尻から何か出ている、成長しない/痩せている/眼がくぼんでいる
 +Plus 爬虫類飼育にかかわる法規、草食性爬虫類のエサ、カルシウム配合サプリメント、尿酸の異常、温浴

Part1では、カメ(ミズガメ、リクガメ)、トカゲ、カメレオン、ヘビの体調不良について、症状から考えられる病気や原因を考察

Chapter2 トカゲ
 基礎知識、食欲がない、ケガをしている/カサブタがある/膨らみやしこりがある、吻部をケガしている、指をケガしている/指が曲がっている/指が欠けている、鱗が白い/脱皮がうまくできない、尾をケガしている/尾が曲がっている、四肢が変形している/四肢が腫れている/うまく歩けない、頻繁に口を開けている、口の中がネバネバしている、軟便・下痢をしている、糞が少ない/お腹が腫れている、お尻から何か出ている、眼をつむっている、成長しない/痩せている/眼がくぼんでいる/立てない
 +Plus フトアゴヒゲトカゲのストレスマーク、エサとしての昆虫や軟体動物・甲殻類、爬虫類のアルビノ
Chapter3 カメレオン
 基礎知識、食欲がない、ケガをしている/カサブタがある/膨らみやしこりがある、鱗が白い/脱皮がうまくできない、四肢が変形している/四肢が腫れている/うまく歩けない、頻繁に口を開けている、口の中がネバネバしている、舌が出っぱなし/舌が赤くなっている、軟便・下痢をしている、お尻から何か出ている、お腹が張っている、眼が腫れている、成長しない/痩せている/眼がくぼんでいる/立てない
 +Plus カメレオンの体色変化、カメレオンの舌
Chapter4 ヘビ
 基礎知識、食欲がない、吐き戻す、ケガをしている/カサブタがある/鱗に炎症がある、脱皮がうまくできない、膨らみやしこりがある、口の中がネバネバしている、軟便・下痢をしている/血便をしている、糞が出ない、頻繁に口を開けている、お尻から何か出ている、眼が白くなっている、成長しない/痩せている
 +Plus 爬虫類のハンドリング、肉食性爬虫類のエサ、冷凍マウスの解凍法、ヘビのエサの量と回数、ヘビの飲水量、ピット器官、ヘビの耳、ヘビの鱗

独特の生態や体の構造をもつカメレオン、ヘビの体調不良を解説したページ

Part2 病気の種類と対応
Chapter1 皮膚の病気
 細菌性皮膚炎、外傷/咬傷、膿瘍、火傷、脱皮不全、水カビ病/真菌性皮膚炎、外部寄生虫、
 +Plus CB(Captive-bred)とWC(Wild-caught)、湿度管理、爬虫類の脱皮
Chapter2 甲羅の病気
 甲羅の配列奇形、甲羅の脱皮不全、甲羅の潰瘍(シェルロット)、甲羅の損傷、甲羅のデコボコ
 +Plus 日光浴と甲羅干し、カメの甲羅
Chapter3 消化器の病気
3-1 口の異常
 クチバシの過長/損傷、口内炎(マウスロット)、カメレオンの口内炎/歯周病、カメレオンの舌の損傷/舌炎
 +Plus 爬虫類の歯、爬虫類の卵歯・卵、ヤコブソン器官
3-2 内部寄生虫
 基礎知識、原虫、蠕虫、血液寄生虫
 +Plus 爬虫類に対するイベルメクチン投与の危険性
3-3 消化管と肝臓の異常
 胃腸のうっ滞/消化管内異物、総排泄腔脱/直腸脱、肝不全
 +Plus 爬虫類の消化管

Part2では、爬虫類に好発する病気を臓器・原因別に詳説

Chapter4 呼吸器と循環器の病気
 鼻炎/肺炎、熱中症、心不全
 +Plus 爬虫類の呼吸器、水棲の爬虫類の肺以外での呼吸、爬虫類の塩腺、爬虫類の心臓、フトアゴヒゲトカゲの動脈瘤
Chapter5 泌尿器の病気
 腎不全/痛風、膀胱結石
 +Plus 爬虫類の腎臓、爬虫類の腎門脈、爬虫類の総排泄腔、ヘビの排泄、カメの開甲手術
Chapter6 生殖器の病気
 卵巣・卵管・卵関連の病気、ペニス脱/ヘミペニス脱、ヒョウモントカゲモドキのクロアカサックプラグ
 +Plus 爬虫類の繁殖生理
Chapter7 尾と骨格・関節の病気
 尾の病気、骨折、脱臼、骨髄炎、関節炎、偽痛風(ハイドロキシアパタイト沈着症)
 +Plus トカゲの尾の自切、ヒョウモントカゲモドキのスティックテール病

不調や病気の原因と取るべき対策をより深く理解できるよう、それぞれの章には+PLUSとして、爬虫類の解剖や生理、栄養学などに関する情報を収録

Chapter8 神経の病気
 基礎知識、ヘビの封入体疾患(IBD)、フトアゴヒゲトカゲにおけるアデノウイルス感染症、モルフ関連神経症候群、脊髄疾患、中毒
Chapter9 眼の病気
 眼の病気と原因、眼の奇形、結膜炎、角膜疾患、白内障、カメレオンの眼の病気、ヘビのアイキャップ遺残、ヒョウモントカゲモドキのモルフと眼の病気
 +Plus 爬虫類の眼、トカゲの頭頂眼
Chapter10 栄養不足による病気
 代謝性骨疾患/低カルシウム血症、ビタミンA欠乏症、チアミン(ビタミンB1)欠乏症、甲状腺機能低下症
 +Plus ビタミンAとβカロテン/爬虫類がカロテンをビタミンAに転換できない理由、爬虫類の甲状腺
Chapter11 全身感染症
 エロモナス感染症、サルモネラ感染症、マイコバクテリウム感染症、ボアやニシキヘビの封入体疾患(IBD)、アデノウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症、ニドウイルス感染症
 +Plus 白血病

■著者
霍野晋吉(つるの・しんきち)
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部卒業。獣医師、博士(獣医学)。1996年古河アニマルクリニック開業(茨城県)。1997年エキゾチックペットクリニック開業(神奈川県)。現在は(株)EICの代表を務め、エキゾチックアニマルの獣医学の啓発や教育に関わる活動を行っている。その他、酪農学園大学客員教授、日本獣医生命科学大学非常勤講師、ヤマザキ動物看護大学特任教授、(一社)日本コンパニオンラビット協会代表理事、(一社)日本獣医エキゾチック動物学会顧問なども務める。著書に『カラーアトラス エキゾチックアニマル 哺乳類編 第3版』『同 爬虫類・両生類編 第2版』『同 鳥類編 第2版』『ウサギの医学』『モルモット・チンチラ・デグーの医学』(いずれも緑書房)。

【本書概要】
・書名:爬虫類の病気百科
・著:霍野晋吉
・発行:緑書房
・体裁:B5判 384頁 全カラー 並製
・価格:8,800円(本体8,000円)
・発売日:2025年12月23日
・ISBN978-4-86811-049-1

■お問い合わせ先
株式会社 緑書房 販売部
〒103-0004 東京都中央区東日本橋3-4-14
TEL:03-6833-0560
https://www.midorishobo.co.jp/

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