馬術競技ってどんなスポーツ?

「馬術競技」というスポーツを知っていますか? 馬に乗ってパフォーマンスを競うスポーツで、いろいろな種目があります。馬の能力と技術や、それを最大限に引き出す選手の力が必要です。「人馬一体」という言葉がありますが、この両者の力が調和したときに、私たちは素晴らしいパフォーマンスを見ることができます。

馬術競技には、男女の区別がないという大きな特徴があります。オリンピックで行われる種目の中で、男性選手と女性選手が同じステージで競うのは馬術競技だけです。これも馬と行うスポーツだからこそです。もちろん、馬に乗るために選手の身体能力も重要なのですが、大きく重い馬をコントロールするために必要なものは腕力や体力ではなく、技術なのです。馬が「この人の言うことをよく聞いて、指示に従おう」と思ってくれたら、力持ちではなくても馬とともに素晴らしいパフォーマンスを見せることができます。

そんな馬術競技にはどのような種目があるのか、紹介します。

障害馬術

障害馬術はアリーナの中に置かれた障害物を飛越する競技で、英語ではジャンピング(Jumping)といいます。オリンピックや世界選手権を含むトップレベルの競技では、障害物の高さは165センチメートルで、ちょうど人間の頭上を飛び越えるくらいの高さです。

障害物はいろいろなデザインや色がほどこされていて、オリンピックでは開催国らしいデザインのものが作られます。東京オリンピックでは、渋谷のスクランブル交差点や富士山、新幹線、だるま、力士などが登場しました。

障害馬術は、見ていてわかりやすい競技です。障害物のバーを落としたり、障害物の前で馬が止まったり、避けたりすると減点です。減点が少なく、スタートからゴールまでのタイムが早い人馬が上位となります。速く走ることが得意な馬なのか、それとも小回りをしてタイムを稼ぐことが得意な馬なのかなど、選手は馬の個性に合わせた作戦を考えます。

馬場馬術

馬場馬術は馬に乗って行うフィギュアスケートのような競技で、演技の美しさを競います。英語ではドレッサージュ(Dressage)といい、20メートル×60メートルのアリーナの中で演技をします。出場するすべての人馬が同じ演技をする「規定演技」と、指定されている運動項目を取り入れたプログラムを選手が組み立てて、音楽に合わせて演技をする「自由演技」があります。

トップレベルの競技では、難易度の高い技ができなくてはなりません。馬が肢(あし)を高く上げてリズミカルに歩くパッサージュ、足踏みをしているようなピアッフェ、その場で小さく回転するピルーエット、スキップをしているようなフライングチェンジなど、これらの最高難度の技ができるようになるには何年もかかります。

馬場馬術を観るときのポイントは、馬が自ら楽しくダンスをしているように見えるかどうかです。観客からは見えない小さな合図を馬が感じ取って動いてくれることで、人馬一体の芸術的なパフォーマンスが生まれます。

この種目は女性選手が強く、オリンピックの個人戦では1988年のソウル大会から2024年のパリ大会まで、10大会連続で女性選手が優勝しています。

総合馬術

総合馬術は、馬術のトライアスロンと呼ばれています。馬場馬術、クロスカントリー、障害馬術の3種目を同じ人馬のコンビで3日間をかけて行うハードな競技で、英語ではイベンティング(Eventing)といいます。

中でも注目するべき種目は、クロスカントリーです。自然の地形を生かした数キロメートルにわたるコースを走りながら、大きな丸太で作った障害物を飛越したり、池に飛び込んだり、地面に掘られた溝を飛び越えたりします。オリンピックでは、およそ6キロメートルのコースに40個ほどの障害物が設置され、そこを分速570メートル(時速約34キロメートル)のスピードで走ることが求められます。選手は事前に何度もコースを歩いて下見して、飛越する順番はもちろん、どの角度でどの位置から踏み切れば障害物をミスなくクリアできるかを考えます。ただし、馬に乗って下見をすることはできないため、馬は競技本番で初めてコースに入ります。選手は、馬が安心して走って障害物に向かっていけるように、正しい踏み切り地点に誘導し、つねに馬をリードしなければなりません。

また、3日間にわたるハードな競技なので、馬のコンディションを整えることが大切です。クロスカントリーを走った翌朝(最終日の朝)には、ホースインスペクションが行われます。これは、審判員と獣医師による検査で、馬がケガをしていないか、疲れていないか、最終種目の障害馬術競技に出場するためにふさわしいコンディションにあるかどうかを確認するものです。このインスペクションに合格してはじめて、最終ステージに立つことができます。

2024年のパリオリンピックで団体銅メダルを獲得した「初老ジャパン」は、1頭がこのインスペクションをクリアすることができず、リザーブ人馬と交代しました(交代はオリンピックだけにある特別なルール)。そのため、一度は順位が下がってしまいましたが、チーム一丸となって諦めずに戦い続けた結果、銅メダルを獲得したのです。

エンデュランス

エンデュランスは馬のマラソン競技で、英語の「endurance(持久力)」が種目名として使われています。オリンピック種目ではありませんが、世界選手権が行われていて、そこでは160キロメートルを走破します。

ただし、一気に走りきるのではなく、5~6つほどのフェイズ(区間)に分かれており、ひとつのフェイズが終わるごとに獣医師による検査を受け、決められた休憩をとってから次のフェイズに進みます。

獣医師による検査では、心拍数が下がっているか、脱水症状が出ていないか、肢を痛めていないかなど、多くの項目がチェックされ、これ以上競技を続けることは馬にとって良くないと判断されると、そこで「ドクターストップ」がかかります。良いコンディションを保つために馬の状態を常に見極めながら走行し、クルーポイント(サポートスタッフが待機している休憩ポイント)では選手とスタッフが馬体を冷やしたり、水を飲ませたりして、チーム一丸となって馬をケアします。

すべてをクリアしていかに早くゴールするかを競いますが、もうひとつの栄誉に「ベストコンディション賞」があります。全コースを走破した後に、最もコンディションの良かった馬に贈られます。

馬術競技を観てみよう!

馬と人が一体となって行われるさまざまな馬術競技には、速さを競う競馬とは違う見どころがあります。馬の華麗さやしなやかさ、そして馬と人の関係性が顕著に表れるスポーツです。

「馬術競技を観てみたい!」と思ったら、ぜひ近くの会場に足を運んでみてください。全日本レベルの大会が開かれるのは以下の会場です。全国各地でいろいろな競技会が開催されており、日本馬術連盟ウェブサイトのイベントカレンダーから確認できます。

●鹿追町ライディングパーク(北海道河東郡鹿追町):エンデュランス
●JRA馬事公苑(東京都世田谷区):障害馬術、馬場馬術
●御殿場市馬術・スポーツセンター(静岡県御殿場市):障害馬術、馬場馬術
●山梨県馬術競技場(山梨県北杜市):障害馬術、馬場馬術、総合馬術、エンデュランス
●三木ホースランドパーク(兵庫県三木市):障害馬術、馬場馬術、総合馬術

また、2026年には愛知・名古屋アジア競技大会が開催されます。馬術競技の会場はJRA馬事公苑です。ぜひ、人馬一体の勇姿を観に来てください。

【執筆】
公益社団法人 日本馬術連盟
日本における馬術競技を統括する中央競技団体。障害馬術・馬場馬術・総合馬術・エンデュランスの全日本大会を主催する他、全国各地で開催される競技会の公認を行なっている。また、騎乗者資格や審判員資格など各種資格の認定や、乗馬の登録を通して、安全で公正な競技会の実施に努めている。馬術の魅力を多くの方に知っていただくため、InstagramとFacebookで情報発信中。
Instagram:@japan_equestrian_federation
Facebook:公益社団法人 日本馬術連盟 (Japan Equestrian Federation)

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