犬は何を美味しいと感じる?―人との共通点と相違点を知って、食生活を豊かにしよう―

犬と人には、食事に関する共通点が多いです。どちらも、動物性と植物性の食材を栄養源とする雑食性であるということが、その大きな理由です。日々の必要な栄養素の量は異なりますが、栄養バランスに注意して上手に食事を作れば、人と犬が同じ食事を楽しむことも不可能ではありません。

犬と人の食性は似ている?

食事に関する代表的な共通点は以下の通りです。

・肉・魚・豆類などから良質なタンパク質を日々摂取することが大切
・炭水化物源として、ご飯(炊いた米)などをある程度摂取すべき
・野菜がビタミンやミネラル源、食物繊維源として有用
・抗酸化成分などの植物由来の栄養素に有益なものが多い
・タンパク質や脂肪、ミネラルの一つであるリンなどが多く含まれる肉などのにおいを好む
・やや塩味のあるものを好む
・甘味を好む(猫は甘味を感じない)
・肉は焼くことで発生する、メイラード反応というタンパク質と糖質の反応による香ばしさを好む

ごはんの見た目は二の次?

一方、異なる点もあります。代表的なものは、食べ物に対して美味しそうと感じる要素に、見た目(視覚)が関係しないことです。人は、青や緑などの寒冷色よりも赤や橙などの暖色に食欲を掻き立てられます。犬では、このようなことはなく、特定の色に着色したドライフードを好むということもありません(見分けやすい色と見分けにくい色はあります)。

犬に美味しそうと感じさせる最も大切な要素は匂い(嗅覚)です。人にとっても、香ばしい匂いというのは非常に重要な要素ですが、人はそれと同じくらい、あるいはそれ以上に食べ物の見た目を重視しています。とても良い香りがして美味しそうに見える一皿でも、ブレンダーでペースト状にしてしまうと有難みが減ってしまうことは、みなさんも共感していただけるのではないでしょうか。

ところが、犬にとっては、むしろペースト状にしたほうが美味しそうに感じられる可能性が高くなります。それは、見た目で食べ物を選んでいないということと、ペースト状にしたほうが香りが増幅して、犬の嗅覚を刺激するからです。

おわりに

毎日の食事をハンドメイドで作られている飼い主の方へ、1つアドバイスをします。毎日適正な栄養バランスのハンドメイド食を作ることができていても、たとえば週のうち3日ほどは市販の総合栄養食*のドッグフードを与えることをおすすめします。理由は、何かの病気になって療法食(人でいう病院食のようなもの)を与える必要が出たときに、食べてくれる可能性が高くなります。過去に食べたことのあるような物のほうが、初めて口にするものよりも受け入れてくれやすいです。特に、病気で食欲が低下してしまった時には、一度も食べたことがないようなものを食べることは犬にとっては抵抗がありますし、飼い主にとっても不安です。療法食では、病気に合わせてタンパク質・リン・脂肪分など、犬にとっての美味しい栄養素の量を少なくすることが多いです。
*総合栄養食:新鮮な水と共に適正量を与えることによって日々の健康を維持することを目的として作られたペットフード

健康でなんでも美味しく食べてくれる時はよいのですが、高齢になったり何かの病気になってしまうと、硬い物を思うように噛めなくなることや、味覚や嗅覚が低下することも予測できます。いろいろな状況に対応できるように、若くて健康な時から、食の幅を広げる意識を持つことは大切です。

【執筆者】
北中卓(きたなか・たく)
獣医師。博士(獣医学)。日本大学生物資源科学部獣医学科卒業。動物病院での診療やペットフードメーカーでの学術職を経て、現在はVCA Japan 合同会社 学術教育部長を務めながら、北海道大学、日本大学、日本獣医生命科学大学で非常勤講師を兼任。獣医師でもありペットオーナーでもある立場から、動物にとって最善なことは何なのかという目線で、15年以上に渡り適切な栄養管理の啓発活動を行っている。

「いきもののわ」では、ペットや動物園・水族館、野生動物、動物関連イベントなど、いきものにまつわる様々な情報をお届け中!
メールマガジンでは、特集記事の紹介や次月特集の一部をチョイ見せ!
登録はこちらのフォームから。ぜひご登録ください!

各種SNSも随時更新中! ぜひフォローしてください!