パール・グーラミィは、観賞魚ファンの間では古くから知られるポピュラー種ですが、その美しさはアナバスの仲間でもトップクラスです。また、観賞魚として飼育される「小型美魚」のなかでは比較的大型の部類といえます。そのため、とても存在感があり、ただ飼育するだけではなく、60cm以上の水草レイアウト水槽などでも主役になれる魚です。
パール・グーラミィはマレーシアやインドネシアに生息し、ほかのグーラミィの仲間と同様に、ラビリンス器官(エラ上部にある特殊な補助呼吸器官)によって水面から直接空気をエラに取り入れることができます。酸性の高い溶存酸素が少ない環境に適応した魚なのです。
飼い込むほどに真珠模様が輝きを増す
パール・グーラミィはその名の通り、真珠をちりばめたようなスポット模様が特徴的です。この模様は成長とともに美しくなり、ショップで販売されている若い個体からは想像できないほどの美魚に育ってくれます。
臀ビレの軟条がクシのように伸長することも特徴で、本種の大きな魅力のひとつです。背ビレの軟条もやや伸長します。そして、状態よく飼育されたオスのオレンジの発色が何より素晴らしい魚です。
特に興奮時には下顎から腹部に掛けて、赤ともいえるような強い発色を見せてくれます。オレンジの発色を強くするために、pHはやや落として飼育するとよいでしょう。
水質維持と水槽の蓋を忘れずに
飼育自体は難しくありませんが、ヒレを美しく育てるには、常によい水質を維持して、溶けないようにします。せっかく伸長してきたヒレが一度溶けてしまうと、再生するのに時間が掛かってしまうからです。大切に飼育された個体の一度も切れずに伸長したヒレは、溜息が出るほどの美しさです。
また、水槽からの飛び出しには十分に注意しなければなりません。一般的な飼育でもしっかりと蓋をすることが大切ですが、レイアウト水槽などで飼育する場合もできるだけ蓋をするようにしてください。
餌は何でもよく食べてくれますが、水面に浮くフレーク系の餌がパール・グーラミィにとっては食べやすいのでおすすめです。ただし、沈んだ餌も十分に食べることができます。
繁殖自体は難しくなく、オスが泡巣を作るというグーラミィの仲間独特の繁殖形態を取ります。ただし、孵化した稚魚は小さく、ブラインシュリンプの幼生を食べられません。そのため、水草を多く植えて自然に任せるか、冷凍ワムシなどを与えるとよいでしょう。
この連載では、魚本来の美しい姿をとらえた写真とともに、みなさんにおすすめしたい観賞魚の魅力を紹介していきます。
【文・写真】
佐々木浩之(ささき・ひろゆき)
1973年生まれ。水辺の生物をメインテーマとしている写真家。飼育下、野生下にかかわらず、好奇心の赴くままに生きものの面白さや美しさを探求している。なかでもアクアリウムの写真に定評があり、鑑賞魚や水草などを状態よく育て、生きものが最も美しい、躍動感あふれる一瞬をとらえる撮影法は高い評価を得ている。幼少期から熱帯魚などに親しんできたベテラン飼育者でもあり、実践に基づいた飼育情報や生態写真を雑誌・書籍等で発表している。『エアプランツ アレンジ&ティランジア図鑑』『苔ボトル 育てる楽しむ癒しのコケ図鑑』(電波社)、『育てる楽しむ癒しの苔ボトル』『苔ボトル楽しく育てる癒しのコケ図鑑』『珍奇植物 ビザールプランツ完全図鑑』『はじめてのアクアリウム 熱帯魚の育て方と水草のレイアウト』『屋外で強く育てる! メダカの飼い方&原色図鑑』『ベタの飼い方&原色図鑑』(コスミック出版)、『部屋で楽しむテラリウム』(緑書房)など著書多数。
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