きらめく小さな魚たち【第5回】小さなエビのなかまたち

今回はアクアリウムやアクアテラリウムで最も親しまれているエビのなかまを紹介します。

ヤマトヌマエビ Caridina multidentata

ヤマトヌマエビは日本(関東以西)の渓流域に生息しているヌマエビです。コケを食べてくれるエビ(メンテナンスシュリンプ)として有名で、水槽に植えた水草やレイアウトアイテム(石など)に付着する黒いヒゲ状のコケ類やアオミドロなどを好んで食べてくれるため、とても重宝する存在です。入手も容易で、ほとんどのアクアリウムショップで購入できるでしょう。

体長は5センチ程度、水温は15~25℃で、エサとしては藻類、人工飼料を好みます。飼育は比較的容易ですが、小卵型の仲間なので水槽内で繁殖させることはできません(小卵型のエビは淡水の環境下では繁殖しません)。基本的には水槽内の脇役的存在ですが、飼い込むと写真のような美しい姿をみせてくれます。

写真:ヤマトヌマエビ

レッドビーシュリンプ Neocaridina sp.

レッドビーシュリンプは、日本で作出された改良品種です。東アジア原産のビーシュリンプの色彩変異を固定化したもので、鮮烈な紅白模様が話題を呼び、2000年代後半に大ブームを巻き起こしました。今なお世界で改良が楽しまれる魅力的な仲間で、紅白バンドタイプを筆頭に、日の丸タイプやモスラタイプといった美しいバリエーションが存在します。

水槽内では、その鑑賞的な価値だけではなく、水草やレイアウトアイテムに付着する藻類も食べてくれるため、メンテナンスシュリンプとしても活躍してくれます。体長は2~3センチ程度、水温は25℃前後が望ましく、エサとしては藻類、植物性人工飼料を好みます。飼育は比較的容易で、水槽内で旺盛に繁殖してくれるのも魅力です。

写真:レッドビーシュリンプ(紅白バンドタイプ)

レッドチェリーシュリンプ Neocaridina denticulata sinensis var.

レッドチェリーシュリンプは台湾が原産の濃い赤の発色がすばらしいヌマエビの1種です。ミナミヌマエビ“レッド”などの名前でも流通しています。

体長は2センチ程度、水温は25℃前後が適しており、エサとしては藻類、人工飼料を好みます。飼育、繁殖ともに容易で、ビギナーにも飼育しやすく、日本でも人気が高い一種です。近縁種にイエローチェリーシュリンプ、オレンジチェリーシュリンプなどが知られ、カラーバリエーションが楽しめるところも魅力です。

写真:レッドチェリーシュリンプ

【文・写真】
佐々木浩之(ささき・ひろゆき)
1973年生まれ。水辺の生物をメインテーマとしている写真家。飼育下、野生下にかかわらず、好奇心の赴くままに生きものの面白さや美しさを探求している。なかでもアクアリウムの写真に定評があり、鑑賞魚や水草などを状態よく育て、生きものが最も美しい、躍動感あふれる一瞬をとらえる撮影法は高い評価を得ている。幼少期から熱帯魚などに親しんできたベテラン飼育者でもあり、実践に基づいた飼育情報や生態写真を雑誌・書籍等で発表している。『エアプランツ アレンジ&ティランジア図鑑』『苔ボトル 育てる楽しむ癒しのコケ図鑑』(電波社)、『育てる楽しむ癒しの苔ボトル』『苔ボトル楽しく育てる癒しのコケ図鑑』『珍奇植物 ビザールプランツ完全図鑑』『はじめてのアクアリウム 熱帯魚の育て方と水草のレイアウト』『屋外で強く育てる! メダカの飼い方&原色図鑑』『ベタの飼い方&原色図鑑』(コスミック出版)、『部屋で楽しむテラリウム』(緑書房)など著書多数。