前回に引き続き、入門編をお届けします。今回は、アクアリウムやアクアテラリウムなどで親しまれているメダカのなかまです。
アフリカン・ランプアイ Poropanchax normani
アフリカン・ランプアイは、西アフリカが原産の卵生メダカです。眼の上が青く輝き、その美しさにより、古くから人気種として定着しています。おとなしい性質のため飼育は容易で、水面下を群泳させるとさらに美しさが際立ちます。水草中心の混泳水槽での飼育に向いた人気種で、アクアテラリウムにも導入できます。状態よく飼育すれば繁殖が狙えるところも魅力です。25℃くらいの水温がよく、一般的な熱帯魚用の人工飼料をよく食べてくれ、3センチ程度の体長に育ちます。
エンドラーズ・ライブベアラー Poecilia wingei
エンドラーズ・ライブベアラーはベネズエラが原産の卵胎生メダカで、熱帯魚の世界で最もよく知られているグッピーの原種です。改良品種のグッピーのような大きな尾ビレはもっていませんが、原種独特の色合いと特徴的な体形が人気です。卵胎生メダカの仲間なので、お腹のなかで卵を受精して、稚魚の状態で産卵します。数多くのタイプバリエーションが存在するため、お気に入りの色彩を探して飼育するのもおすすめです。25℃くらいの水温がよく、一般的な熱帯魚用の人工飼料をよく食べてくれ、3センチ程度の体長に育ちます。
プラティ Xiphophorus maculatus var.
プラティはもともとメキシコが原産ですが、アクアリウムの世界で流通しているものはほぼすべてが改良品種です。グッピーと並び最もポピュラーな卵胎生メダカの代表種で、飼育・繁殖ともに容易なことから、入門種として絶対的な地位を確立しています。現在も新たな品種が作出されており、多様な色彩の品種がアクアリウムファンを楽しませてくれています。25℃くらいの水温がよく、一般的な熱帯魚用の人工飼料をよく食べてくれ、5センチ程度の体長に育ちます。ペアで購入し、新しい生命の誕生に立ち会ってほしい一種です。
楊貴妃(メダカ) Oryzias latipes var.
古くから存在する観賞用メダカの「緋メダカ」から、赤の濃い色合い系統で改良が進められた品種で、楊貴妃(ようきひ)の名がつけられました。日本だけではなく海外からも注目されている、赤いメダカの代表品種です。野外の紫外線環境ではより赤みが際立つことから、ビオトープで人気がありますが、室内飼育下でもその色彩を十分に楽しめます。20℃くらいの水温がよく、メダカ用の人工飼料をよく食べてくれ、4センチ程度の体長に育ちます。
幹之(メダカ) Oryzias latipes var.
日本の原種メダカから作出された改良種で、「みゆき」と読みます。特徴はなんといっても口元から尾筒まで背中に伸びる1本のプラチナラインです。体全体が青みを帯びて輝き、さらに青く光る色彩が各ヒレに美しく乗るのが特徴です。日本の山野草を使ったアクアテラリウムでこのメダカを楽しむのもおすすめです。20℃くらいの水温がよく、メダカ用の人工飼料をよく食べてくれ、4センチ程度の体長に育ちます。
なお、楊貴妃や幹之など、観賞用に改良されたメダカは、川など野外の自然環境へ絶対に放流してはなりません。自然界には存在しない、人為的に作出された改良メダカが野生のメダカと交雑すれば、地域の生態系に甚大な悪影響を及ぼすおそれがあるからです。最後まで責任をもって飼育すること、メダカに限りませんが、それが飼育者に求められる最低限のモラルです。
【文・写真】
佐々木浩之(ささき・ひろゆき)
1973年生まれ。水辺の生物をメインテーマとしている写真家。飼育下、野生下にかかわらず、好奇心の赴くままに生きものの面白さや美しさを探求している。なかでもアクアリウムの写真に定評があり、鑑賞魚や水草などを状態よく育て、生きものが最も美しい、躍動感あふれる一瞬をとらえる撮影法は高い評価を得ている。幼少期から熱帯魚などに親しんできたベテラン飼育者でもあり、実践に基づいた飼育情報や生態写真を雑誌・書籍等で発表している。『エアプランツ アレンジ&ティランジア図鑑』『苔ボトル 育てる楽しむ癒しのコケ図鑑』(電波社)、『育てる楽しむ癒しの苔ボトル』『苔ボトル楽しく育てる癒しのコケ図鑑』『珍奇植物 ビザールプランツ完全図鑑』『はじめてのアクアリウム 熱帯魚の育て方と水草のレイアウト』『屋外で強く育てる! メダカの飼い方&原色図鑑』『ベタの飼い方&原色図鑑』(コスミック出版)、『部屋で楽しむテラリウム』(緑書房)など著書多数。
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