熱帯雨林でバードウォッチング
コスタリカの首都であるサンホセから北へ約2時間行ったところに、サラピキという場所があります。サラピキ付近は熱帯雨林が発達しており、ラ・セルバ生物保護区に指定されています。その森の中に熱帯生物研究所があります。世界中から多くの研究者が訪れる場所で、事前に申し込んでおけば一般の者も宿泊することができます。
宿泊棟は熱帯雨林の森の中にあるので、遠くへ出かけなくてもバードウォッチングを楽しむことができます。早朝からいろいろな鳥の声が聞こえてきて、心動かされます。
大きな嘴
この森でぜひ見たい鳥は、何を差し置いてもオオハシの仲間でしょう。
サンショクキムネオオハシは、コスタリカを訪れた人が見たい鳥の代表格であるケツァールと並んで、人気のある鳥です。名前に「三色」と付いているものの、特徴のある大きな嘴は、黄・緑・赤・オレンジ・水色と虹のような色をしています。現地では「虹色の嘴の鳥」と呼ばれているそうです。
全長は50センチメートルほど。主食はバナナやマンゴーなどの果実ですが、時には小鳥の卵や雛も食べてしまいます。群れで行動し、大きな声で「クロック、クロック」と鳴くので、その存在に気付きます。
ニショクキムネオオハシはさらに一回り大きく、カラスくらいの大きさの鳥です。嘴は体の3分の1ほどもあります。さぞ重いだろうと思いきや、嘴の中は空洞になっているため実際は軽いそうです。この鳥の嘴は、その名の通り黄色と暗茶色の2色になっています。
お菓子のマスコットキャラクター「キョロちゃん」に似ていると言う人もいます。
キバシミドリチュウハシは、全長30センチ。コスタリカで見られる6種類のオオハシ科の中で最も小さく、オオハシの半分くらいしかない中嘴(チュウハシ)です。樹洞に巣を造り、時には鳥の卵や雛を食べてしまうので、ケツァールにとっては天敵と言えます。
ちなみに、現地の図鑑『Birds of Costa Rica』の表紙にも使われている鳥です。
珍鳥との邂逅
現地ガイドが早朝、珍しい鳥が見られるかもしれないというので、ついていきました。
森の中の散策路を歩いていくと、目の前を1メートル近くある大きな鳥が横切っていきました。全身が黒く、嘴の付け根の黄色が目立ちます。オオホウカンチョウの雄です。頭には立派な冠羽があることから、日本名では「鳳凰(ほうおう)の冠を持った鳥」と崇高な名で呼ばれています。
地上を歩きながら地面に落ちた果実や種子、昆虫を食べています。近年、数が減少しており絶滅危惧種に指定されている鳥です。珍しい鳥に出会うことができました。
森の中からコツコツと木をつつく音がしてきました。音のする方を探してみると、大きなキツツキが木の幹にとまっています。ズアカエボシゲラです。驚かせないように木の陰に隠れて写真を撮ることができました。
ユニバーサル・スタジオのキャラクター「ウッディー・ウッドペッカー」にそっくりですが、実際のモデルはアメリカに生息するエボシクマゲラだという説があります。
【文・写真】
大塚之稔(おおつか・ゆきとし)
1954年生まれ、信州大学卒。カッコウやライチョウなどの研究を行う。日本野鳥の会岐阜顧問、環境省希少動植物保存推進員、岐阜県野生生物保護推進員などを務めている。野鳥観察歴55年。日本全国はもちろん、今回紹介しているコスタリカをはじめ、東南アジア、アフリカ、ヨーロッパなど十数カ国を巡り、野鳥の観察・撮影をしている。