子犬の困った行動への対応法【第3回】いたずら(破壊行動)

前回の記事では、子犬の困った行動として「犬用トイレ以外での排泄」への対応法を紹介しました。今回は、いたずら(破壊行動)の問題について紹介します。

子犬は日々目新しいものを見つけては、においを嗅ぎ、口に入れて確認します。届くところに置いてあるものを次々に噛んでは破壊します。歯の萌出による不快感を軽減するためともいわれていますが、むしろ破壊行動や噛むことを探索行動として楽しんでいるようにみえます。飼い主にとっては迷惑ですが、子犬の正常な発達過程であり、この行動を消し去ることはできません。

自然界で野生動物は、起きている時間の大半を食べることのために費やしているといわれます。捕食動物であれば獲物を探し、追跡し、追いかけ、捕まえ、殺し、引き裂き、食べるといった捕食行動すべてが含まれます。子犬は発達過程で、生きていくために必要な多くのことを学習するようにプログラムされています。

何でも口に入れて、噛んで確認することもその1つです。本能に根ざしたこの行動を叱ってやめさせようとすれば、一日中子犬を叱っていなければならなくなります。子犬が何かを口にするたびに叱っていると、飼い主の目を盗んでいたずらするようになったり、反抗心が芽生え飼い主に攻撃するようになることもあります。逆に退屈している子犬にとっては飼い主の注目が価値ある報酬となり、さらに頻繁に破壊行動を行うようになることもあります。

いずれにしても、まず子犬の届く場所には取られて困るものは何一つ置かないことです。その上で取られてもよいものをわざと置いて、子犬がそれをくわえて走っても、反応しなければいいでしょう。さらに犬用のおもちゃで楽しく遊び、「ちょうだい」などの合図で口にしているものを飼い主に渡すトレーニングをすれば、うっかり置き忘れたものをスムーズに取り上げることもできます。

【ポイント! 子犬のいたずらへの対処】
◇ 環境の整備、すなわち口にされて困るものは子犬の届く場所に置かない
◇ 安全に噛めるものを毎日与える
◇ 子犬が口にしているものを取り上げることを繰り返さない
◇「 ちょうだい」で口にしているものを渡すように教える

以下に子犬特有の破壊行動の対処法について述べます。

毎日噛んでもよいものを与える

まずしなければならないのは、噛んでもよいものを毎日与えることです。前述のように子犬にとって噛むことはごく自然な探索行動なので、禁止するだけでは成功しません。最初に本能のはけ口をつくる必要があります。また、噛んでほしいものを噛んでいるときには褒めたり、好物を与えるなどして、好ましい行動を強化するといいでしょう。

何でも噛みたがる子犬期にデンタルガムなどを噛む習慣をつくっておくと、破壊行動の予防になるばかりか、デンタルケアにもなります(写真1)。高齢になって初めてデンタルガムを与えても興味を示さないことが多いですが、子犬期からこれらのものを噛む習慣をつけておくと、将来も受け入れてくれることが多いのです。

写真1:デンタルガム

また、筆者は段ボール箱やトイレットペーパーの芯など紙だけでできているものや木などを、噛むおもちゃとして子犬に与えています(写真2)。紙であれば多少飲み込んでも問題ありません。ただし、大量に飲み込まないかを初めて与える際に確認しておく必要があります。ほとんどの子犬は噛んでボロボロにして口から吐き出すので、問題なく与えることができます。

写真2:段ボール箱

さらにふやかしたドライフードをコングに詰めたものを冷凍するのも、お勧めです(写真3)。ドライフードだけでは食べない場合には、ササミやジャーキーなど嗜好性の高いものを混ぜるといいでしょう。この場合もコングを破壊して飲み込むことがないかを、最初はよく観察してください。

写真3:コング

噛んでほしくないものは子犬の届く場所から排除する

噛まれて困るものや危険なものは子犬の届かないところに置いておくことが重要です。

噛んでほしくないものは噛まないようにしつけようと考える飼い主が多いですが、子犬に目の前にあるものを口にするなと教えるのは非常に難しいことです。もちろん叱れば飼い主の目の前ではしなくなりますが、飼い主のいない場所でするようになるだけで、根本的な解決にはなりません。

また、見ていない間に子犬が大切なものを破壊したとしても、後で叱っても意味がありません。現行犯でなければ子犬は何を叱られているのか分からないので、飼い主に不信感をもつようになります。自ら子犬の届く場所に大切なものを置いておいたことを反省し、今後環境整備により注意を払うように心掛けるべきです。

短時間でも子犬を見ていられないときには部屋から出て行く前に、一度座って子犬の目線になり、部屋中を見渡してください。口にすると危険なものは落ちていないか、コード類が垂れ下がっていないか、もう一度確認します。その間子犬に何もするなというのは不可能なので、代わりに噛んでもよいおもちゃや退屈しのぎになる段ボール、ガムなどを置いて出て行くようにします。そして置いていくものは初めて与えるものではなく、あらかじめ与えてみて問題がないことを確認済みのものとします。またゴミ箱は子犬の届かない場所に置くか、蓋付きのものを使うといいでしょう。

家具など移動できないものはビターアップル(リンゴから抽出した天然苦味成分を利用したしつけ用スプレー、写真4)などの子犬の嫌がる味やにおいのするものを付けておきます。

写真4:ビターアップル

万が一それでもいたずらをしてしまったときには、叱らずに写真を1枚撮影することをお勧めしています(写真5)。写真を撮ることで冷静になって環境整備の問題点を確認でき、また家族に見せることで注意を促せます。さらに、どんないたずら写真も月日が経てばいい思い出の1枚になります。

写真5:子犬のいたずらを発見したらまず写真撮影をする

子犬が口にしているものを無理やり取り上げることを繰り返さない

子犬が噛んでほしくないものを噛んでいるのをみつけたとき、子犬にとって危険なものであれば取り上げる必要がありますが、そもそもそのようなものを子犬の届く場所には置かないというのが大原則です。それをせずに子犬が口にしているものを無理やり取り上げることを繰り返すと、すぐに子犬は何かを口にしているときに飼い主にみつかるとあわてて逃げたり、隠れるようになります。また、飼い主が取り上げようとすると攻撃的に唸ったり咬んだりするようになることもあります。さらに飼い主にみつかると、口にしているものを取られないように飲み込む場合もあります。飼い主が日常生活の中で子犬とものの奪い合いを繰り返せば、子犬はしばしばこのような望ましくない行動を発展させながら成長し、やがては飼い主を悩ます問題行動を引き起こします。

万が一子犬が不適切なものを口にしてしまったら、格闘にならないように取り上げるようにします。例えば、気付かないふりをしてその場を離れて子犬を呼び、好物やおもちゃなどで注意を引いて気付かれないように取り上げます。犬が口から放さない場合、口にしているものが飲み込めないサイズのものであれば、フードや好物を与えてそれを食べている間に回収してもいいでしょう。子犬が口にしているものを無理やり取り上げることを繰り返すことで、前述のような行動に発展するからです。

ただし、口にしてほしくないものを口にしているときに好物と交換したり、おもちゃを与えるという方法を繰り返すと、これが報酬(オペラント条件づけの正の強化)となり色々なものを口に入れる頻度が増えてしまいます。あくまで緊急時のみの対処法であり、繰り返してはいけません。筆者は犬が口にしているものが特別重要なものではなく、犬にも無害なものであれば放置します。特にティッシュや段ボール箱などの紙製品であれば多少飲み込んでも問題ありません。自由に噛ませて飽きたら片付ければいいのです。もちろん大量に飲み込んでいないことは確認しておきましょう。

また注意しなければならないのは、子犬が口にしているものが飲み込めるサイズの、危険なものの場合です。口にしているものが小さい場合、食べものを見せると飲み込むつもりがなかったものでも飲み込んでしまうことが多いのです。飼い主がとっさに判断することは難しいため、筆者は基本的に子犬からものを取り上げる際には、食べものを見せずに取り上げて、取り上げた後に褒めて好物を与えるように指導しています。この場合の報酬は、子犬が不適切なものを口にしているときではなく、口から放したタイミングで出すため、不適切なものを口にすることを強化することはありません。

「ちょうだい」で口にしているものを渡すように教える

「ちょうだい」の合図を教えておけば、口にしてほしくないものや危険なものを口にしているときにも安全に取り上げることができます。「ちょうだい」の合図に従って口にしているものを飼い主に渡すと、もっとおいしいものがもらえると教えるのです。具体的な方法を以下に述べます。

① 子犬が喜んで噛むもの(ふやかしたフードやおやつを詰めたコングなど)とそれよりもさらに好きな食べものを用意します。好物は反対の手に握り込むなどして犬に見せないようにしておきます。「おすわり」などの合図を出し、犬が従ったらコングを差し出します(犬にとってよいことの前に必ず簡単な合図を出す習慣をつくることで、犬の行動を制御しやすくなります)。

② コングを犬の口元に差し出して、犬がコングの中身を食べ始めたら、「ちょうだい」と言いながら取り上げます。すぐに「おりこう」と言いながら反対の手から好物を与え、再びコングを差し出します。これを何度か繰り返し、「ちょうだい」と飼い主が言ったらおいしいものが出てくることを教えます。最初はコングを手に持って食べさせますが、抵抗なくコングを口から放すようになれば次のステップに進みましょう。

③ 子犬にコングを渡して自由に食べさせます。子犬が食べている間に「ちょうだい」と言ってコングを取り上げ、「おりこう!」と褒めて好物を与え、すぐにコングを返します。こうしてコングを渡すと好物がもらえて、渡したコングもすぐに返してもらえることを教えます。

④ 子犬からコングを抵抗なく取り上げることができるようになったら、次は子犬が噛んでほしくないものを噛んでいたときに取り上げるためのリハーサルを行います。子犬にコングを与えていったん別の部屋に行き、戻ってきて子犬に「ちょうだい」と言います。子犬がコングを放して飼い主を見たら、コングを取り上げて「おりこう!」と褒めて好物を与え、コングを返します。最初は好物を手に隠して持っていていいですが、少しずつポケットに隠したり、テーブルの上に置いておくなどして、見えるところになくても口にしているものを放せば、必ずおいしい物をもらえると教えます。この練習をしておくと、子犬が噛んでほしくないものを噛んでいたときに、手にご褒美がなくても取り上げることができます。

⑤ 同様におもちゃを噛んでいるとき、ボールをくわえているときなど色々なもので練習するといいでしょう。練習が終わった後、噛むおもちゃやガムなどであればそのまま与えましょう。取り上げなければならないものの場合には、好物を離れた場所に投げて与え、犬が好物を取りに行っている間に犬に気付かれないように隠します。犬に「大切なものを飼い主に取られた」という印象を与えないようにすることが大切です(写真6)。

写真6:「ちょうだい」で口にしているものを渡すように教える

次回の第4回は「誤飲」を取り上げます。

子犬の困った行動への対応法【第1回】甘咬み – いきもののわ (midori-ikimono.com) .
子犬の困った行動への対応法【第2回】犬用トイレ以外での排泄 – いきもののわ (midori-ikimono.com) .

[参考文献]
・村田香織.パピークラス&こねこ塾スタートBOOK.2019.インターズー.

【執筆】
村田香織(むらた・かおり)
獣医師、博士(獣医学)、もみの木動物病院(神戸市)副院長。株式会社イン・クローバー代表取締役。日本獣医動物行動研究会 獣医行動診療科認定医。日本動物病院協会(JAHA)の「こいぬこねこの教育アドバイザー養成講座」などで講師も務める。獣医学と動物行動学に基づいて、人とペットが幸せに暮らすための知識を広めている。主な著書に『「困った行動」がなくなる犬のこころの処方箋』(青春出版)、『こころのワクチン』(パレード)。