魅力的なコスタリカの鳥たちを訪ねて【第5回】タルコレス川のボートクルーズ(1)

今回と次回は、タルコレス川のボートクルーズで観察できた鳥たちを紹介します。

タルコレス川はコスタリカ中央高地から太平洋に注ぐ大河であり、カララ国立公園に含まれます。タルコレスには現地の言葉で「ワニの棲む川」という意味があります。橋の上から川岸の砂浜を覗くと、何頭もの大きなワニが日光浴をしていました。

このワニを近くで見るために観光船が出ているのですが、私たちはこの観光船をバードウォッチングのために貸し切りました。

マングローブ林に沿って船を上流に走らせていくと、まず目についたのがサギの仲間です。

写真:クルーズに使う観光船

オオアオサギは、北アメリカで繁殖してコスタリカで冬を過ごすサギです。日本で見られる最も大きなサギはアオサギで全長1メートルくらいありますが、オオアオサギはアオサギよりも一回り大きく、アメリカ大陸で最大となります。

そのように大きなサギも、コスタリカの自然の中ではそれほど大きく感じないことに、いかにここの自然が広大なのかを感じます。

写真:オオアオサギ

日本のコサギそっくりのサギは、ユキコサギです。全身が真っ白で、足の先だけが黄色く目立つところも、コサギの特徴そのものです。大型のサギはより深い所で、ユキコサギのように小型のサギは浅い所で餌を捕るよう、棲み分けをしています。

写真:ユキコサギ

アメリカササゴイは、胸の赤紫色が鮮やかな小型のサギです。魚を主食にしているのですが、おもしろい餌の捕り方をします。昆虫や草の葉を水面に投げ入れ、餌と思って近寄ってきた魚を捕食するのです。

ササゴイの「まき餌漁」と言われるこの捕り方について、日本のササゴイも同様の行動をすることが分かっています。有名なのは熊本市内の水前寺公園のササゴイで、パンくずをまき餌として小魚を捕るところが観察できます。観光客が池のコイに餌をやっているのを真似たのではないかと言われています。

日本各地で同じような行動報告があるほか、シンガポール、アフリカ、アメリカなど世界各地でも観察されています。おもに使われる疑似餌は、虫、木の枝、パンくず、羽毛、小石などですが、発砲スチロール片というものもありました。「まき餌漁」は、おそらくササゴイという種が持つ採餌能力なのでしょう。

写真:アメリカササゴイ

さらに上流に船を進めていくと、木の上にピンク色が点々と見えてきました。近づくとベニヘラサギの群れです。フラミンゴを思わせる羽色をしています。

フラミンゴやベニヘラサギのピンク色は、カニやエビなどの甲殻類が持つカルテノイド色素が関係していると言われます。フラミンゴは、嘴を水に入れ、横に動かしながらカルテノイド色素を含むプランクトンを濾して食べます。そのプランクトンを食べないと羽毛はだんだん白くなるので、動物園では色素を含む餌を与えています。

写真:ベニヘラサギ

写真:水面を飛ぶベニヘラサギ

ベニヘラサギの群れの中に、一回り小さな白い鳥が混じっています。シロトキです。嘴と足の赤さが目立つ鳥で、日本のトキの仲間です。

写真:シロトキ

アメリカトキコウは、1メートルもある大型のコウノトリ科の水鳥です。ヨーロッパでコウノトリといえば、赤ちゃんを運んでくる幸運の鳥です。しかしアメリカトキコウは、こちらが食べられてしまうのではないかと思うほど、いかつく怖い顔をしています。

写真:アメリカトキコウ

【文・写真】
大塚之稔(おおつか・ゆきとし)
1954年生まれ、信州大学卒。カッコウやライチョウなどの研究を行う。日本野鳥の会岐阜顧問、環境省希少動植物保存推進員、岐阜県野生生物保護推進員などを務めている。野鳥観察歴55年。日本全国はもちろん、今回紹介しているコスタリカをはじめ、東南アジア、アフリカ、ヨーロッパなど十数カ国を巡り、野鳥の観察・撮影をしている。