動物業界のお仕事:ペットフードメーカーの研究開発職(ファンケル)

「いきもののわ」6月の特集では、いろいろな「動物業界のお仕事」を紹介していきます!

今回は、化粧品・健康食品で有名なファンケルのペットフード開発部に在籍している舩山さんに、1日の業務や事業立ち上げまでの経緯、この仕事を目指す人へのアドバイスなどをお聞きしました!

写真:ファンケルの舩山さん

朝礼をした後に、その日の業務の流れを確認します。その後は、部内の進捗管理や他部署との打ち合わせが業務の大半を占めます。また、研究開発にもかかわっているため、開発者としての記事の執筆など、幅広く活動しています。週末にはペット関連のイベントへ出店することもあります。

写真:ペット関連のイベントへ出店することも

私が勤めるファンケルは、もともと化粧品事業と健康食品事業を中心とする会社であり、ペットフード事業は2022年に新規で立ち上げたものです。私はこの事業の立ち上げを行ったことで、ものづくり、事業の立ち上げ、商品開発、販売までの一連の流れをすべて経験し、チャレンジすることの苦しさと楽しさを同時に味わいました。

就職してから30年以上になりますが、まだまだ勉強することも多く、知らないことの多さに不安になることもしばしばです。しかしながら、私が開発にかかわった商品であるGOODISH(グーディッシュ)を、お客様の愛犬がおいしそうに食べる姿を見るたびに、「がんばって良かった!」と思います。

写真:ペットフードの撮影をする様子

もともと私は、化粧品製造のスペシャリストとして工場長をしていました。しかし、食物アレルギーを抱えた愛犬のランと出会ったことが、人生を変えるきっかけとなりました。

アレルギーに苦しむランの姿を見て、自分がもっとしてあげられることがあるはずだと考えて、アレルギーやペット栄養学を学び、最終的に「質の良い食事の大切さ」にたどり着きました。しかし、ランにぴったりのペットフードが見つからず、あらゆる商品を試していたときに、社内で新規事業を提案する機会を得ました。これまで製品の製造にかかわってきたこともあり、「ぴったりのフードが市場にないのなら、作ってしまえばよいのでは?」と考えたのです。

写真:ペットフード事業の提案は愛犬がきっかけとなった

ペットフード事業は、ファンケル創業者の池森賢二さんによる人材育成の場「池森経営塾」の「事業の芽を考える」というテーマのなかで提案しました。私は、それまでに調べてきた従来のペットフードの「不」や、それにまつわる情報の「不」を解決したいという熱い想いを語り、他の塾メンバーと想いをひとつにして提案しました。すると池森さんは、「飼い主としての深い愛情を込めて、犬にとって真に理想のフードだけを考えて作りなさい」という言葉で、塾から送り出してくれました。こうした想いで現社長に事業の提案をして、ペットフード作りの機会をいただき、2年越しで商品化までたどりつきました。

写真:商品は犬にとって理想のフードを考えて作られた

ものづくりをするときには「この商品は誰のための、何を解決するものなのか」を繰り返し考えることが大切です。私の場合は「愛犬のランが健康に過ごせるためのフードであること」がブレない軸となりました。

また自分にとって、ものづくりよりも圧倒的に難しかったのは、自分の想いや商品の価値を、どのような人にどのように届けるかを考えることです。ペットフード以外の新規事業であっても、世の中に定着していない付加価値を伝える難しさは、共通しているかもしれません。しかし、簡単ではないからこそ、伝えられたときの喜びも大きいはずです。あなたが作った商品で喜んでくれる人がいることを忘れずに、信念をもって進むことが大切です。

舩山尚子(ふなやま・なおこ)
株式会社ファンケル 新規事業本部ペットフード開発部 部長