犬・猫をSFTS(重症熱性血小板減少症候群)に感染させないために注意すること

2025年6月、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)に感染した猫の治療にあたっていた獣医師が亡くなったというニュースが報道されました。SFTSとは、マダニが媒介するウイルス性の感染症です。
今回は、愛犬・愛猫がSFTSに感染しないために注意するべきことを、東京都獣医師会の会長・上野弘道先生にお聞きしました。

犬と猫を愛するみなさんへ

―SFTSとは、どのような病気なのでしょうか?

正式には「重症熱性血小板減少症候群」という名称のウイルス感染症です。また、SFTSに感染した犬・猫などから人へ感染することもある「人と動物の共通感染症」です。
特に猫はかかりやすく、猫がSFTSに感染すると、致死率は60パーセントと高くなっています。

―どのように感染するのでしょうか?

マダニの吸血によって、病原ウイルスに感染します。また、感染した動物の体液や排せつ物(尿・便・嘔吐物)にも大量のウイルスが存在しており、飛沫接触感染をする可能性があります。SFTS感染の疑いがある動物の体液や排せつ物の取り扱いには、十分注意が必要です。

―感染するとどのような症状が表れるのでしょうか?

元気がなくなったり、食欲の低下や発熱、下痢、嘔吐、黄疸(おうだん)がみられます。特に猫で強い症状が出る傾向にあります。

―どのように予防をするべきですか?

屋外に出ると、マダニに咬まれたり、体についたりする可能性が高くなります。散歩を含めて、犬・猫が外に出て帰ったときには全身の確認をするようにしましょう。
散歩の際には、できるだけ丈のある草むらなどのコースは避けましょう。

また、飼い主もキャンプなどの屋外活動で、マダニが衣服などについてしまうことも考えられます。マダニを家に持ち込まないように、飼い主も出かけた後の確認を忘れずに行いましょう。

―野生で保護をした猫から感染することもあると聞きました。保護をする際に気を付けることを教えてください。

公園や道路などの公共の施設において、弱っている猫を見つけた場合には、ご自身の年齢や体調などを含めて、その猫を保護するかどうか検討してください。
保護が難しいと思われる場合には、警察や自治体に相談してください。
保護をする場合は、猫の体液などがご自身の体などに直接付かないような対応(手袋やメガネ、マスクなどの装着)をしたうえで保護をしましょう。また、動物病院に連れて行く前に、必ず電話などで連絡を入れてください。

―犬・猫の飼い主や、保護猫活動をしている方々へメッセージをお願いします。

犬・猫を守るためには、マダニの駆除薬や忌避剤を用いて予防・対策をすることがまずあげられます。そして、日頃から健康チェックをして体調の変化を見逃さないようにして、わからないことはかかりつけの獣医師に相談しましょう。

SFTSの詳しい情報は、こちらをご参照ください。

・厚生労働省、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou19/sfts_qa.html
・東京都獣医師会、人と動物の共通感染症ガイダンス、重症熱性血小板減少症候群
 https://tvma.or.jp/activities/guidance/infections/sfts/

[参考文献]
・国立感染症研究所・獣医科学部、「獣医療関係者のSFTS発症動物対策について」(2023年バージョン)
・国立感染症研究所・昆虫医科学部、「マダニ対策、今できること」
 https://id-info.jihs.go.jp/diseases/route/arthropod-borne/030/madanitaisaku.html

上野弘道(うえの・ひろみち)
1972年生まれ。日本大学生物資源科学部獣医学科卒業後、日本動物医療センターへ入社。名古屋商科大学大学院にて経営学修士(MBA)を取得し、日本獣医生命科学大学大学院にて博士(獣医学)を取得。現在、日本動物医療センターグループ グループ代表・グループ最高経営責任者、株式会社カルペディエム 代表取締役、公益社団法人東京都獣医師会 会長、公益社団法人日本獣医師会 理事、公益社団法人日本動物病院協会 副会長を務める。

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