ペット用以外にも、動物園・水族館にいる動物用ミルクの製造・販売をしている森乳サンワールドの社員さんが、ミルクを使用している全国の動物園・水族館のスタッフにお話を聞く本企画。
第5回では、第4回に続いてゾウ専用の人工ミルク「エレファントミルク」を使用している広島市安佐動物公園(広島県広島市)に伺い、マルミミゾウの飼育係を務めている栗原さんにマルミミゾウの特徴や飼育に関する話をお聞きしました!

※情報は2025年11月時点のものです
飼育のきっかけは間違いから?

まずは、マルミミゾウがどのようなゾウなのかを教えてください。

マルミミゾウは、アフリカ大陸に生息しているゾウです。アフリカ大陸には、他にもサバンナゾウがいます。
近年まで、この2種は亜種扱いでしたが、現地調査が進んだ結果、現在は別種と考えられています。


サバンナゾウとはどう違うのですか?

サバンナゾウが、名前の通り草原地帯で生活するのに対して、マルミミゾウは森林地帯で過ごします。サバンナゾウに比べてマルミミゾウは体が小さく、牙が下方向に伸びる傾向があります。サバンナゾウは前に伸びて湾曲します。
これらの特徴は、樹木の間を進むのに適していると考えられています。

生息地帯でいろいろな違いがあるのですね。

それから、名前からも分かりますが、耳が丸みを帯びています。
また、私の主観ですが、サバンナゾウの耳のフチは薄く感じるのに対して、マルミミゾウの耳のフチは餃子の皮のような厚みがあります。



もっと細かい特徴だと、爪の生え方が異なります。個体差があるので一概にはいえませんが、サバンナゾウが前肢4本、後肢3本に対して、マルミミゾウは前肢5本、後肢4本がスタンダードです。

そんなマルミミゾウは、世界的に見ても3頭しか飼育されていないとお聞きしました。貴重なマルミミゾウを飼育することになった経緯を教えてください。

最初に当園に来たのはメスの「メイ」でしたが、実はマルミミゾウだとは思わずに導入しました。


当初は、サバンナゾウの飼育頭数を増やす目的で迎えました。当時から年齢の割に体格が小さかったので、先輩の担当者と
「もしかしたらマルミミゾウかもしれないね(笑)」
と冗談で話していました。しかし、しばらく経っても大きくならないので調べてみると、サバンナゾウではなくマルミミゾウだったことが判明しました。

そんなことがあるんですね! 見た目での判断は難しいということですね。

他園のことですが、過去にはマルミミゾウだと思って育てて、調べたらサバンナゾウだったという事例もありましたね。
人工ミルクだからできた体調管理

メイちゃんの妊娠から出産までの期間で、気を付けていたことや工夫していたことはありますか?

冬の間は、寒さ対策として暖房機器の数を増やして体を気遣っていました。それから、異常があったときにすぐに対応できるように、普段の観察を増やしました。
また、定期的なエコー検査や採血で健康状態を把握するようにしていました。

モニター室があるとお聞きしましたが、そこで観察されていたのですか?

モニター室では、2025年の7月中旬ごろから、いきみや陣痛で苦しんでいないか、出産間近の行動が無いかなどを中心に観察していました。夜間の様子は録画で確認し、日中の展示時間中は誰かが必ず園路からチェックしていました。


出産後のメイちゃんの体調管理で注意したことを教えてください。

出産直後は、できるだけ採血をして血液上のデータに異常がないかを確認していました。
また、痩せていないか、食欲は落ちていないか、行動上で何か苦しんでいることはないかなど、注意深く観察しました。

アオくんの成長過程で気を付けたことはありますか?

出産後、メイのおっぱいに口が届かずに母乳を飲めなかったので、色々と工夫をしました。その過程で、母乳を飲めているかは欠かさずに確認していました。

母乳を飲めなかった期間は、当社の「エレファントミルク」を与えたとお聞きしました。人工ミルクを与える上で、体調管理はどのようにしていましたか?

「エレファントミルク」を飲んだ後の便の状態を確認しながら体調管理をしていました。

初めのうちは下痢などが怖かったので、少し薄めて与えていました。お湯の量で濃さを調整できるのは、人工ミルクだからこそです。その後は、段々と森乳さんが推奨している濃度に調整していきました。
母乳は、日によってカルシウムやたんぱく質、脂質など、栄養素の増減があります。そういう意味では、人工ミルクは安定感がありますね。

母乳はいつごろまで飲むのでしょうか?

どうでしょう……。先日ソウルから来た飼育係は、10歳まで飲んだといっていましたね。おそらく、アオが乳首に吸い付く限り分泌はされると思います。

ただし、その母乳が、栄養面では飲む意味がないくらいの成分になっている可能性はあると思います。
好物はうんち……?

固形物はまだ食べられていないのですか?

今では固形物も食べるようになってきました。しかし、のどに詰まらせてはいけないので、小さく切って与えたり、口の中でふやけて食道や気管に詰まるようなものを与えることは控えています。
すでにうんちから枝が出てきたことがあったので、それなりに食べていると思います。


固形物をしっかりと食べられるようになるのは、生後どのくらいなのですか?

今回はだいたい1か月でしたね。そのくらいの時期から、お母さんのうんちを食べ始めました。

お母さんのうんちを食べるんですね。

もうあまり食べなくなりましたが、それによって腸内環境を整えているといわれています。

少し前までは、メイがうんちをしたらすごい勢いで走って食べていたよね?

頭を突っ込んでむしゃむしゃ食べていました(笑)
おもしろいのが、出したばかりのうんちは食べるのに、時間が経過したうんちは食べないんです。冷めると魅力がないんですかね……?
「エレファントミルク」の多様な使い道

「エレファントミルク」はどのくらいまで与える予定ですか?

体重を測るときなどに使っているので、まだ与えています。「エレファントミルク」なしで体重計に乗れるようになったら、使わなくなるかもしれません。

先ほど見ていただきましたが、とても嬉しそうに走ってくるじゃないですか。ということは、大好きな「エレファントミルク」を体重計に乗ったら飲ませてもらえる、というトレーニングとしても使い勝手の良い状態になっています。


これが固形物に切り替われば、「エレファントミルク」は卒乳するかもしれませんね。

ちなみに、「エレファントミルク」を他の動物に与えたりしましたか?

今のところ、「エレファントミルク」はゾウだけです。ウマは成分が近いので、次にポニーが生まれたら、与えるかもしれないです。

活用の可能性があるかもしれないのですね。
次のマルミミゾウの繁殖は予定されていますか?

アオが育つまでは考えられないですね。

可能であれば、もう1頭くらいは産ませたいですが、獣舎のスペースの問題もあります。それに、アオがメイにべったり付いているとメイは子育てにかかりきりになるので、他のオスと同居させられなかったり、いろいろな要因があります。
今は、貴重なマルミミゾウの親子をお客さんに楽しんでもらいたいですね。

おわりに
広島市安佐動物公園では、「エレファントミルク」についてたくさんお話を聞くことができました。
同園にとって初めてのゾウの妊娠・出産だったそうですが、無事に産まれてきて、こうして対面できたことにとても感動しました。
そして、その成長段階で、当社の「エレファントミルク」が活躍できていたことが何よりも嬉しかったです。
これからも、希少動物の子育てを助けられるように、人工ミルクの開発・製造を続けていきたいと強く思いました。
次回も、全国の動物園・水族館へ足を運び、ミルクの使用の実情や飼育についてお聞きしたお話を紹介します。お楽しみに!
【森乳サンワールド】
・55周年特設サイト…https://55th.morinyu-pet.com/
・ホームページ…https://www.morinyu-pet.com/useful/lifetime-milk/
・X…@morinyu_pet
・Instagram…@morinyu_pet
【広島市安佐動物公園】
公式サイト…http://www.asazoo.jp/
X…@asa_zoo
Instagram…@asazoo_hiroshima
YouTube…安佐動物公園 公式 -asazoo official-
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