ペットの平均寿命が伸び、健康で長生きしてもらいたいというペットオーナーが増えている昨今、そのニーズにあわせてペットを対象にしたサプリメントも多く登場しています。ペットオーナーが1年間でサプリメントに支払った費用は増加傾向にあることが報告されていることから*、一度はサプリメントを愛犬に与えたことがあるという方も多いのではないでしょうか? しかし、「サプリメント=体に良い、薬と違って副作用がないから安心」と、なんとなく飲ませていると、病気を見逃してしまったり、不必要な成分を摂取することで、最悪の場合には健康を害する結果になることもあります。
そこで、今回は獣医師の目線からサプリメントの使用方法や選び方、注意点を解説します。愛犬の健康を守りながらサプリメントと上手に付き合っていくためのヒントになれば幸いです。
*2024最新版 ペットにかける年間支出調査、アニコムホームページより(最終閲覧:2026年2月4日)
https://www.anicom-sompo.co.jp/news-release/2024/20250311/
サプリメントとは?
サプリメントとは、特定の成分を濃縮した錠剤やカプセル状の製品を指し、健康の維持や不足しがちな栄養素を補うことを目的としています。医薬品のように病気を治療するものではなく、あくまで食品に分類されます。そのため、薬とは本質的に異なり、「効く」「治る」といった効果効能をうたうことは法律上認められていません。
また、サプリメントの摂取は、病気の治療や予防になるものではありません。加齢とともに不足してしまう成分や、日頃の食事では必要な量を摂取することが難しい成分を補うことで、健康をサポートしたり一般的な治療(薬を飲んだり、適切な療法食を食べたりすること)の補助的な役割であることを理解しながら使用することが大切です。

サプリメントはどんなトラブルで使用される?
皮膚・被毛トラブル
EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)など、オメガ3脂肪酸を含む製品が多く販売されています。
犬の皮膚病において、オメガ3脂肪酸が痒みや炎症といった皮膚症状を和らげたり、薬の投与量を減らすことのできる可能性があると考えられています。
消化器トラブル(下痢・軟便など)
プロバイオティクスやプレバイオティクスといった、お腹の善玉菌を整える商品があげられます。腸内環境を整えることで、消化器トラブルだけでなく、免疫機能の向上や健康維持に貢献できるのではないかと注目されています。
その他
動物病院では、犬用の薬がない場合に人用医薬品の適応外使用*をすることがよくあります。しかし、人薬は犬における安全性や効果がきちんと評価されていないため、代わりに犬用に開発されたサプリメントを使用することがあります。
*薬が、正式に認められている病気・症状(適応)以外に使われること
■例①
『EneALA®』:脂質代謝異常(血液中の中性脂肪やコレステロールが高くなってしまう状態)で使用されるサプリメント
また、いくつかの病気では、特効薬がないため病気の進行をなるべくゆっくりにしたり、現状維持ができることを期待して犬用のサプリメントを使用します。
■例②
『Duo One シリーズ』:犬の進行性網膜変性(徐々に視力が低下し、失明に至る眼疾患)で使用されることのあるサプリメント
どんな時にサプリメントを使ったらいいの?
まずは、飲ませる目的を明確にしましょう。「年をとってきたから、免疫アップと書いてあるサプリメントをなんとなく飲ませてみよう」「毛艶が悪くなったような気がするから、ネットで効果があると書いてあるサプリメントを飲ませてみよう」などのように、目的が曖昧なまま、かつ、成分のエビデンスが乏しいサプリメントを飲ませることは、おすすめできません。
目的(心配事)が明確になったら、病気が隠れていないか一度動物病院を受診することが大切です。先述したように、サプリメントは病気の治療や予防になるものではありません。したがって、治療するべき疾患はきちんと確認し、適切な治療を受けることが大切です。その上で、サプリメントを使用するのかどうかをかかりつけの先生と相談してみてください。
サプリメントを選ぶ上での注意点は?
エビデンスのある成分かを確認しよう
そもそも、健康のために摂取するものですから、全く根拠のない成分を与えることはおすすめできません。また、人では良いとされていても犬では違ったり、有害になったりする成分もあります。これまで良いと思われていた成分でも、改めてリサーチしてみたら良い影響が全くなかったとされる成分もありますので、服用させる前に必ず調べるか、かかりつけの先生に相談をしてください。
製品の記載が適切かを確認しよう
動物用のサプリメントは、ペットフード安全法に則って製品化・販売をされるべき商品です。ペットフード安全法には、表示の基準や成分規格、製造の方法の基準など、ペットが安心して口にできるための最低限の規則が決められています。規則の詳細は農林水産省のホームページでも見ることができますので、使用したいと考えているサプリメントがペットフード安全法を遵守しているのか、確認してみましょう。
・ペットフード安全法、農林水産省ホームページより(最終閲覧日:2026年2月4日)
https://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/petfood/index.html
用法・用量を守り、無理なく続けられるサプリメントを見つけよう
サプリメントは薬ではないため、どれくらいの量を与えたら犬にとって良い影響が出るのか、逆にどれくらいの量を与えたら有害事象が出るのかは調べられていないことがほとんどです。そのため、自己判断で与える量を減らしたり増やしたりすることはおすすめできません。また、繰り返しますがサプリメントで病気を予防したり治すことはできません。
本来行うべき治療のサポートになり、かつ愛犬が無理なく摂取できる形状や味のサプリメントを見つけることが大切です。

「サプリメントを与えているから安心!」ではない
「サプリメントを摂取しているからうちの犬は大丈夫!」という過信は危険です。
非常に興味深い研究として、オーナーが「サプリメントを与えている」という行為そのものによって、症状が良くなったように感じてしまう「プラセボ効果(プラシーボ効果:オーナー側の主観的改善)」が起こりやすいことが報告されています。このため、症状は悪化しているのに、良くなっていると感じてしまう場合があるので注意が必要です。
おわりに
サプリメントの中でも、エビデンスレベルが高く、獣医療において先生方の判断で治療効果を期待して処方されるような製剤も出てきました。人のように、『トクホ(特定保健用食品)』のような、サプリメント以上薬未満、といったカテゴリーが存在しないため、薬に近しい結果が得られるサプリメントと全く根拠のないサプリメントが混在しているのが現状です。愛犬の健康寿命を伸ばすためにも、健康診断は定期的に行い、かかりつけの先生と相談しながらサプリメントを上手に活用していただきたいと思います。
※当記事で紹介したサプリメントの詳細は、各公式サイトをご覧ください
・『EneALAR』:https://eneala.jp/
・『 Duo-OneR』:https://petcare.meni-one.com/product/b104/
[参考文献]
・Mueller RS、et al. ”Effects of dietary supplementation with γ-linolenic and linoleic acids with and without omega-3 fatty acids on canine atopic dermatitis”, Veterinary Dermatology, 2004.
・Garcia-Mazcorro JF、et al. “Effect of a probiotic administered in drinking water on fecal microbiota and metabolites in healthy dogs”, Microorganisms, 2021.
・Aki Sakai, et al. “Improvement Effect of 5-Aminolevulinic Acid on Hyperlipidemia in Miniature Schnauzer Dogs: An Open Study in 5 Cases of One Pedigree”, Yonago Acta Med, 2020.
・Michael G Conzemius, Richard B Evans, ”Caregiver placebo effect for dogs with lameness from osteoarthritis”, J Am Vet Med Assoc, 15;241(10), 2012.
【執筆】
酒井和紀(さかい・あき)
獣医師。麻布大学獣医学部卒業後、都内動物病院にて一般診療および眼科診療を担当。その後、製薬会社で犬猫用サプリメントの学術を担当する傍ら、動物病院での診療を担当し、2025年2月TOMOどうぶつ病院代々木上原を開院。
Instagram:@tomoanimalhospital
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