はっけん! 日本の爬虫類・両生類【第30回】トウキョウサンショウウオ Hynobius tokyoensis (Tago, 1931)

学名にも”Tokyo”の名を冠するこのサンショウウオは、現在の東京都あきる野市の個体をもとに新種として記載されました。東京都民の方にとって、誇りを持って紹介できるいきものの一種です。現在でも、細々とですが、東京都で姿を見ることができます。郊外の丘陵地を好み、駅から近い場所に暮らしていることから、古くからこのサンショウウオの生態的な謎を解明する研究が盛んです。千葉県がある房総半島や栃木県の宇都宮でもその姿を見たことがありますが、見つけたのは同じく丘陵地でした。

トウキョウサンショウウオの横顔

トウキョウサンショウウオは、2月末から4月にかけて、湧水のある池や湿地などに産卵します。今回は、東京都で観察した産卵の様子を紹介します。

産卵場所の小さな池は周囲を見渡せるほど小さな場所で、観察にとても適していました。辺りが暗くなると、すでに池の中に待機しているオスが落ち葉の下から出てきます。オスは水中に沈んだ手頃な木につかまり、ゆっくり尻尾を振り始めました。尾を振ると振動が池の中を伝わり、メスがそれを感じ取ると近寄ってきます。近くにメスがいなくても、何日も何日も尾を振るようです。

尾を振ってメスを呼ぶオス

雨上がりのある日、どこからともなくお腹をパンパンにしたメスがやってきました。お腹の卵が重くて浮き上がれないためか、池の底をはって移動し、振動を頼りに木に登るとオスと出会いました。メスが産卵体制に入って総排出腔*あたりを木に押し付けると、卵嚢の端が木にくっ付きます。あとはそれぞれの卵を産み落とすのですが、産卵中、オスはメスのケアをすると見せかけてメスを押し退け、メスのお腹から出てくる卵を抱きかかえます。さらに、メスから強引に卵を引っ張り出して授精させていきます。その様子はすさまじく、口を大きく開けて必死の形相です。この際に、複数のオスがやってきて卵を奪い合い授精させます。こうすることで、遺伝的な多様性も保っていると考えられています。
*排泄器と生殖器を全て束ねた一つの穴のこと

放精するオス

産卵直後の卵塊は神々しく、少し青みがかった白っぽい色をしていて美しいです。しばらくすると、水を吸って卵嚢(らんのう)が膨らみ、バナナのように大きくなります。まるで、東京土産のあれですね。

トウキョウサンショウウオの卵塊

トウキョウサンショウウオは、常に生存の危機に直面しています。以前は開発による生息環境の減少が原因でしたが、最近では、これに加えてアライグマによる捕食が報告されるようになりました。なんと、アライグマはサンショウウオを食べるのです……。アライグマに食べられないように、工夫をして卵や幼生を守ったり、ビオトープを造成したりと、保護活動をする方も増えているという明るい希望も見られます。どうにかうまく共存して、東京のシンボルとしていつまでも生き残って欲しいものです。

【文・写真】
関 慎太郎(せき・しんたろう)
1972年兵庫県生まれ。自然写真家、びわこベース代表、日本両棲類研究所展示飼育部長。身近な生きものの生態写真撮影がライフワーク。滋賀県や京都府内の水族館立ち上げに関わる。『日本のいきものビジュアルガイド はっけん!』シリーズ(田んぼのいきもの、カナヘビ、小型サンショウウオ、ニホンイシガメ、ニホンヤモリ、トカゲ、イモリ、ニホンアマガエル、オタマジャクシ、オオサンショウウオ)、『野外観察のための日本産両生類図鑑 第3版』『同 爬虫類図鑑 第3版』、『世界 温帯域の淡水魚図鑑』、『日本産 淡水性・汽水性エビ・カニ図鑑』(いずれも緑書房)、『うまれたよ! イモリ』(岩崎書店)、『日本サンショウウオ探検記 減り続ければいなくなる!?』(少年写真新聞社)など著書多数。

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