模様も形も美しい
東南アジアなどで精力的に作出されている改良品種の形質に「ロングフィン」があります。ロングフィンとは、オリジナル種の養殖段階で出現した「ヒレが伸長した突然変異個体を固定したもの」で、その豪華さから観賞魚ファンの間で人気となっています。
ロングフィン・ゼブラダニオは、観賞魚として古くから知られているゼブラダニオの改良品種で、日本に大量に輸入されています。そのため、残念ながら雑に扱われていることが多いのですが、しっかりと飼い込むと、とても美しい魚に育ってくれます。
ゼブラダニオ自体、黄色と青色のラインのバランスがよい美魚ですが、ロングフィン・ゼブラダニオもその美しさが失われていないところが素晴らしいところです。しかし、なかには全体的に黄色のラインが細くなっている個体もみられますので、ぜひバランスのよい個体を選別してブリードを行ってほしいと思います。
ロングフィン・ゼブラダニオの最大の特徴は、やはり各ヒレが驚くほど伸長することです。ほかのロングフィンタイプではヒレがバサバサになる品種もいますが、ロングフィン・ゼブラダニオは綺麗に整ったヒレをもつことが魅力的です。
観賞魚ビギナーにもおすすめ
ロングフィン・ゼブラダニオの飼育はとても容易なので、ビギナーにもおすすめです。まずは本種やその近縁種で熱帯魚飼育の技術をマスターするのもよいでしょう。ただし、ロングフィンタイプなので、ヒレを美しく育てるにはそれなりのコツがあります。
まずは、ヒレをかじる魚と混泳させないのはもちろんですが、同種間の争いが激しくならないように、逃げ場所を作ってあげます。ある程度の争いは、色があがる要因になるのですが、争いが激しすぎるとヒレが切れてしまうことがあるので、シェルターを設置してあげましょう。
また、餌を与えすぎて太らせてしまうと、ヒレも美しくならないので、少量をこまめに与えます。ちょっと少ないかなと思うくらいがちょうどよいでしょう。
繁殖も難しくありません。産卵はばら撒き型で、卵は水槽底面に沈みます。最初のうちは水面に水草(マツモやウォーター・スプライトなど)を多く浮かせて、孵化した稚魚が隠れられるシェルターを作って、自然に稚魚を育てるのがよいですが、数多く成長させたいなら親を隔離します。
メスの腹部が細くなって産卵が確認できたら、卵や稚魚がほかの魚に食べられないように隔離し、孵化した稚魚を育成するのがベストです。泳ぎ始めた稚魚は市販のベビーフードを与えるとよいでしょう。
飼育が容易で安価すぎるためか、残念なことにその美しさが見落とされがちになっているロングフィン・ゼブラダニオですが、ここで紹介したようにとても美しい魚ですので、ぜひもっと注目してもらえればと思います。
【文・写真】
佐々木浩之(ささき・ひろゆき)
1973年生まれ。水辺の生物をメインテーマとしている写真家。飼育下、野生下にかかわらず、好奇心の赴くままに生きものの面白さや美しさを探求している。なかでもアクアリウムの写真に定評があり、鑑賞魚や水草などを状態よく育て、生きものが最も美しい、躍動感あふれる一瞬をとらえる撮影法は高い評価を得ている。幼少期から熱帯魚などに親しんできたベテラン飼育者でもあり、実践に基づいた飼育情報や生態写真を雑誌・書籍等で発表している。『エアプランツ アレンジ&ティランジア図鑑』『苔ボトル 育てる楽しむ癒しのコケ図鑑』(電波社)、『育てる楽しむ癒しの苔ボトル』『苔ボトル楽しく育てる癒しのコケ図鑑』『珍奇植物 ビザールプランツ完全図鑑』『はじめてのアクアリウム 熱帯魚の育て方と水草のレイアウト』『屋外で強く育てる! メダカの飼い方&原色図鑑』『ベタの飼い方&原色図鑑』(コスミック出版)、『部屋で楽しむテラリウム』(緑書房)など著書多数。
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