フォトエッセイ 猫に呼ばれて世界の街へ【第11回】キャットタワーになった日(ギリシャ)

ギリシャのイドラ島に到着してすぐに迷子になった私ですが、猫に宿泊先へと導いてもらい(第6回)、その後の3日間の滞在では、迷子を楽しみながらも島のいろいろなところを歩きまわりました。島内は車やバイクの乗り入れが禁止されているため、静かな雰囲気が漂います。そして、どこを歩いても可愛らしい風景が広がっていて、まるで絵本の中にいるような気持ちになりました。

散策の途中で、猫たちが集まる広場に出くわしました。猫たちは互いに程よく距離をとって、それぞれの時間を過ごしているようでした。

私の姿に気づくと、数匹のフレンドリーな猫が近寄ってきてくれました。そのなかの1匹の子猫が、非常にハイテンションで私に飛び掛かってきました。

その子猫は好奇心旺盛で、ぴょんぴょんと元気に走りまわり、私の肩に飛び乗ったり、背中の上でゴロゴロ転がったり、カバンに乗って他の猫にちょっかいを出したり、やりたい放題でした。恐らく、その子にとって私はキャットタワーのような存在だったのだと思います。勢いにただただ圧倒されるばかりだった私の背中には、たくさんの爪跡が残りました。

やがて子猫は、大はしゃぎして疲れたのか、突然に電池切れを起こしてゴロンと横になりました。その姿は、先ほどとは別の猫のように可愛らしかったです。この個性が際立つ子猫と過ごした時間は、とても印象に残っています。

【文・写真】
町田奈穂(まちだ・なほ)
埼玉県出身。世界中を旅しながら、地域の猫を撮影している。猫の表情や仕草、猫が暮らす環境の色と光に重点を置いた写真が特徴。2023年に世界一周旅行を達成し、初の個展を開催。その他、企業カレンダーやグループ展など精力的に活動中。
Instagram:cat_serenade
X(旧Twitter):naho_umineko