前回はウズベキスタンの旅の全体像を紹介しましたが、今回は滞在中に泊まったホテルで出会った、印象的な猫の話です。
そのホテルは、かつてメドレセ(神学校)として使われていた建物を改装したものでした。重厚な扉を開けて中に入ると、外の喧騒とは切り離されたような静けさが広がります。建物の中央には緑豊かな中庭があり、時間の流れまで緩やかになったように感じられました。異国情緒に満ちた、とても居心地の良い空間です。

そこで暮らしていたのが、生後5ヶ月の子猫「ティゴちゃん」です。まん丸な顔に、まだあどけなさが残る猫でした。

出会った初日、そっと手を伸ばして触れようとすると、するりと身をかわして距離を取られてしまいました。そのつれない態度に少し寂しさを覚えましたが、嫌われたというより、こちらを慎重に観察しているようにも見えました。
ところが2日目の朝、状況は一変します。寝ぼけていた私は、前日のそっけない対応をすっかり忘れ、いつもの癖で「おはよう」と声をかけながら何も考えずに撫でてしまいました。すると、ティゴちゃんは逃げるどころか、身体をすり寄せてきたのです。あまりの豹変ぶりに拍子抜けしてしまいましたが、その瞬間からようやく友達として認識してもらえた気がしました。

それからは、一緒に過ごす時間が増えました。ティゴちゃんのお気に入りの場所は中庭です。鳥がやって来ればじっと目で追い、風に舞う葉っぱを見つければ夢中になって追いかける。遊び疲れると、クッションの上で丸くなって眠る。そんなふうに、のびのびと過ごしていました。

9月のウズベキスタンは昼夜の寒暖差が大きく、日中は半袖で過ごせますが、朝晩はダウンを羽織りたくなるほど冷え込みます。夜になると、ティゴちゃんはフロントでスタッフと一緒に過ごしていました。スタッフみんなに愛されている猫でした。

外出しようとすると、出入口までついてきてくれることもありました。そのたびに出かけるのが惜しくなり、結局また中庭に戻ってしまいます。ティゴちゃんが可愛すぎて、なかなかホテルから離れられないのが、この旅で一番の悩みでした。

旅先のホテルで猫に出会うことは、決して珍しいことではありません。けれど、こうして一緒に走り回れるほどの広い空間があったのは、初めての経験でした。ティゴちゃんと過ごした時間は、ウズベキスタンの旅の思い出の一つとして、深く心に残っています。
【文・写真】
町田奈穂(まちだ・なほ)
猫写真家。水中写真家・鍵井靖章氏との出会いをきっかけにカメラを始める。「猫×彩×旅」をテーマに、世界中を旅しながら各地で出会った猫たちを撮影。これまでに35ヶ国以上を訪れ、2023年には念願の世界一周を果たす。2023年、2024年に富士フォトギャラリー銀座にて個展を開催。その他企画展やSNS等を通じて作品を発表している。
Instagram:@cat_serenade
X:@naho_umineko
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