教えて!飼育員さん:キリンのはなし

特徴的な長い首とスタイル抜群の美脚(日立市かみね動物園)

キリンはこんな生き物

キリン(キリン科キリン属・学名Giraffa camelopardalis)は、ケニアやソマリア、エチオピアなど、サハラ砂漠以南のサバンナ地帯の草原に10~20頭の群れで生活しています。
高さは4~5.5メートルと哺乳類の中では最も長身で、体重は700~1,500キログラムにもなるとても大きな体をしています。

左から、キリンの「キリナ」、2025年5月に誕生した第5子「ココナ」、「ナツネ」、右奥に「シゲル」

特徴は長い首で、野生下では朝と夕暮れにアカシアなどの高い木の葉を食べ、昼は「反芻」をします。舌は45センチメートルと長く、枝葉を採食するのに適しています。
動物園では、マメ科の牧草や草食動物用のペレット、飼育員が切ってきた樹木の葉を食べています。

当園では現在、お父さんのシゲル(オス、21歳)、お母さんのキリナ(メス、16歳)、2022年に誕生した第4子のナツネ(メス、2歳)、2025年5月に誕生した第5子(ココナ、メス、0歳)を飼育、展示しています。

※情報は2025年6月時点のものです。

キリンの日常

朝は、キリンの頭数、ケガや異常行動などの健康状態、獣舎や放飼場に不備が無いかなどを確認します。その後、朝の給餌をします。キリンは「不断給餌」を行っていて、マメ科の牧草はいつでも食べられる環境になっているので、朝は草食動物用のペレットと生菌剤やサプリメントを与えています。

当園の飼育員は、8時30分に園全体の朝礼に参加し、9時ごろからキリンや他の動物を放飼場へ移動させます。現在キリンは、繁殖制限のためにオス1頭とメス3頭に分けて展示を行っています。キリンが放飼場に出たら、獣舎の清掃を行います。糞の状態などをよく観察します。糞は人の言葉を話せない動物たちからのメッセージです。床材の様子からも夜の行動が分かります。

10時30分ごろから、昼給餌の準備のために青草切りをします。3~10月にかけて生の牧草などを購入し、押切で長さを調整して与えています。水分が多いので便が緩くなることもありますが、美味しそうに食べてくれます。キリンのエサの準備が終わったら、他の動物のエサの準備や獣舎の清掃も行います。

土曜日・日曜日・祝日限定ですが、11時30分からキリンの食べ物の話や体の仕組みなどを説明する「ガイドエサやり」を実施しています。キリンの頭骨を使ったガイドも人気で、実際にキリンの頭骨に触ることもできます。

昼の給餌後に昼休憩を取り、13時ごろに動物たちの健康と獣舎の確認をします。このときに各動物のオス・メスで放飼場の入れ替えを行う場合もあります。

13時30分ごろ、園外へキリン用の枝葉を切りに行きます。市内の公共施設内の樹木や、市道の街路樹をキリンのエサとして利用しています。樹木の種類は、マテバシイ・スダジイ・シラカシ・ケヤキなどです。

14時30分からは他の動物のガイドを行い、15時ごろから夕方の給餌準備をします。キリンの寝室内にエサを準備し、入舎後すぐにキリンがエサを食べられるようにしておきます。枝葉は、キリンの目線の高さに設置しています。

16時30分ごろに動物たちを獣舎に戻し、歩き方や食べる様子などに異常がないことを確認します。その後、放飼場の清掃と夕方の給餌としてペレットを与えて、近くで動物を再度観察します。現在は、「キリナ」の歯の状態などをよく確認するようにしています。仔が生まれた後なので、母子共に体調と行動をこまめに観察しています。

キリンの授乳の様子

飼育員さんの小話

キリンは食べ物の状態をよく確認しており、少しでも気に食わないと意図的に落とすことがあります。
また、キリンのうんちは思っているより小さいです。

キリンのうんち

これは、反芻をする動物の多くに当てはまる特徴です。反芻によって食べ物のほとんどが吸収されてより細かくなるので、小さなうんちになります。

ウシと同様に、キリンには胃が4つあります。1つ目の胃に微生物を飼っていて、食べた物を分解します。
2つ目の胃は、食べたものを口に戻してより細かくするために、ポンプのような役割を果たしています。微生物がさらに分解しやすいようにします。1つ目と2つ目の胃は胃液を出さないので、ヒトのように酸っぱいものが口に戻ってくるわけではありません。キリンは首が長いので、食べたものを飲み込んだり、戻したりする様子をじっくりと観察することができます。
反芻が終わると3つ目、4つ目と順番に胃に食べ物が送られ、微生物もろとも吸収されていきます。このような過程を経て、食べたものはほとんど吸収されて、小さくコロコロしたうんちになります。

一方で、仔どものうんちは成獣のような黒くコロコロしたうんちではありません。ミルクを飲んでいるので、水っぽい黄色いうんちをします。人の赤ちゃんがするうんちと同じような匂いです。しかし、黄色いうんちの期間は短く、今回生まれた仔どもの場合は生後4日目から親の真似をして草を噛み始めたので、黒っぽいうんちをするようになりました。一般的に、キリンの哺乳の期間は10か月とされていますが、当園のキリンでは2歳を過ぎても飲んでいる姿が確認されています。

草を食べる仔キリン

ところで、皆さんはキリンの鳴き声を聞いたことはありますか? 「キリンの仔どもはよく鳴く」と聞いたことがあります。しかし、11年以上キリンの担当をして、5頭の哺育を経験しましたが、一度も聞いたことがありません。一般的に危険を感じたときに鳴くそうなので、鳴き声を聞かないことは良いことなのかもしれません。鳴き声を聞いたことがある人は、どういう風に鳴くのかをぜひ教えてください。

飼育員さんが教えるキリンの見どころ

キリン同士の関係性をよく観察してみてください。お母さんはもちろんですが、お姉さんキリンも仔キリンの面倒をよく見ています。野生下では、お母さんキリンがごはんを食べるときに別のメスが複数の仔キリンの面倒を見る習性があるそうです。これは動物園でも例外ではありません。お姉さんのナツネも、昔は面倒を見てもらっていました。成長を感じられて感動します。

お姉さんのナツネが仔キリンの毛繕いをしている

また、仔どもだからこそ見られる現象があります。それは、ツノがぺちゃんこになっていることです。

角が立っていない仔キリン

キリンの角は「オッシコーン」と呼ばれ、頭蓋骨と一体化しています。シカなどとは違い、生え変わりません。生まれたばかりのころは、ヒトと同じで骨のくっ付きが柔らかく、角が立ちません。お母さんキリンが仔キリンへ毛繕いをしているときに、角を引っ張る行為が確認されています。その甲斐があってかは分かりませんが、1~2週間ほどで角が立ってきます。もし生まれたばかりのキリンを見る機会があれば、注目してみてください。

【文・写真】
日立市かみね動物園
〒317-0055 茨城県日立市宮田町 5-2-22
TEL 0294-22-5586
公式サイト:https://www.city.hitachi.lg.jp/zoo/
X:@HitachiCity_Zoo
Facebook:日立市かみね動物園
YouTube:かみね動物園

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