第10回と第11回ではウサギの生殖器と繁殖に関係する病気を紹介していきます。今回の第10回でウサギの性成熟を簡潔にまとめ、次の第11回で病気に関する情報を解説します。
ウサギの性成熟
性成熟とは生まれてから繁殖ができるようになるまでの期間をいいます。性別や種類によって異なります。メスの性成熟は、小型種は4~5カ月、中型種は4~8カ月、大型種は9~12カ月です。オスの性成熟は7~8カ月です。
ウサギの発情と交配
ウサギは1年中繁殖ができます。1~2日の休止期と4~17日の発情期を繰り返し、発情中のメスは、外陰部が腫脹し、ロードシス(尾を上げる姿勢を取ろうとする)を行うことがあります。オスは尿スプレーや頻回の排便、マウント、チンマーク(顎下の下顎腺をこすりつける)をすることがあります(写真1)。
交尾(写真2)は1分以内に終わり、交尾の10時間後にメスのウサギは排卵するため、交尾排卵動物と呼ばれています。
このような特徴から、ウサギは繁殖力が強い動物として知られています。
妊娠
妊娠期間は30~32日です。また、ウサギは偽妊娠をすることがよくあります。偽妊娠とは実際には妊娠していないにもかかわらず、妊娠したかのように巣を作り始めたり、乳腺が張り泌乳がみられることがあります。偽妊娠は15~16日ほど続きます。
授乳
ウサギの母乳は人のものと比べタンパク質や脂肪が多く、授乳を1日に1~2回行います。母ウサギからフェロモンが分泌され、これによって子ウサギが乳頭に吸い付くことができます(写真3)。
完全な離乳は生後約8週ほどです。
ウサギの子宮
(写真4、5)
ウサギは人間の子宮とは異なり、左右の子宮角がそれぞれ外子宮口を形成し、子宮頸に開口しています(重複子宮、写真4)。
この連載は、一般社団法人日本コンパニオンラビット協会(JCRA)「ウサギマスター認定者(ウサギマスター検定1級)」の獣医師で分担しながら、飼い主さんにも知っておいてほしいウサギの病気を解説しています。
・一般社団法人日本コンパニオンラビット協会
https://jcrabbit.org/
[出典]
・写真1~3…『ウサギの医学』(著:霍野晋吉、緑書房)
【執筆】
谷本眞帆(たにもと・まほ)
獣医師、CRAウサギマスター検定1級。2018年北海道大学大学院獣医学研究院獣医学部を卒業。同年、浜村動物病院院長に就任(2023年退職)。
【監修】
霍野晋吉(つるの・しんきち)
日本獣医畜産大学(現 日本獣医生命科学大学)獣医畜産学部卒業。獣医師、博士(獣医学)。1996年古河アニマルクリニック開業(茨城県)。1997年エキゾチックペットクリニック開業(神奈川県)。現在は株式会社EIC(https://exo.co.jp)の代表を務め、エキゾチックアニマルの獣医学の啓発や教育に関わる活動を行っている。その他、日本獣医生命科学大学非常勤講師、ヤマザキ動物看護大学特任教授、(一社)日本コンパニオンラビット協会代表理事、(一社)日本獣医エキゾチック動物学会顧問なども務める。著書に『カラーアトラス エキゾチックアニマル 哺乳類編 第3版』『同 爬虫類・両生類編 第2版』『同 鳥類編』『ウサギの医学』『モルモット・チンチラ・デグーの医学』(いずれも緑書房)。
[参考文献]
・霍野晋吉. 第10章 生殖器疾患・繁殖疾患. In: ウサギの医学. 2018: pp.318-363. 緑書房.