Zhangixalus amamiensis (Inger, 1947)
東洋のガラパゴスと呼ばれる鹿児島県の奄美大島に、久しぶりに訪れました。初めて訪れたのはもう25年以上前のことで、爬虫類・両生類の写真を撮り始めるきっかけになった島でもあります。奄美大島の森は深く、生物多様性に満ち溢れており、この自然の虜になったことがその後のカメラマンの道を切り開いてくれました。
そんな奄美大島への訪問で楽しみにしていることの一つは、アマミアオガエルの鳴き声を聞くことです。

声のする方へ近づいても……?
鳴き声が近づくと、そこに水辺があることが分かります。その水辺をハブに気を付けながらそっと近寄ると、カエルに出会える機会が増えます。
カエルの中には、出会いやすいカエルと、声は聞こえてもなかなか見つからないカエルがいます。その見つけにくい代表的なカエルが、アマミアオガエルです。アマミアオガエルは、本州のモリアオガエルほどの大きさで緑色の体色をしており、葉に溶け込むように木の上で身を潜めています。地面の上で見かけることはほとんどありません。日中は葉っぱを揺りかごのようにして休んでいるか、高木の上でじっとしていることが多いため、慣れないと見つけられません。

産卵と成長
産卵は春先に行われます。側溝枡(そっこうます)や池の水際、低木上などに産卵している姿を見かけます。
卵は泡に包まれていて、紫外線や乾燥から守られています。外はパリパリになっても中は湿っており、すくすくとオタマジャクシに成長します。

ある程度育つと、オタマジャクシは泡を溶かして外に出ようとします。表面まで出てくると、雨でポタポタと近くにある水辺に落ちていきます。落ちた水域でしっかりと育ち、子ガエルになります。

子ガエルになってからは成長が早く、天敵から身を守りながら成体になり、また産卵にやってきます。
面白いことに、奄美群島にはアマミアオガエルが、沖縄諸島にはオキナワアオガエルが、先島諸島にはヤエヤマアオガエルという近縁種がいます。よく似ていますが脚の模様で区別がつきますし、鳴き声も異なります。これらのカエルの鳴き声を聞きに、それぞれの地域を訪問しても風情があるかもしれませんね。
【文・写真】
関 慎太郎(せき・しんたろう)
1972年兵庫県生まれ。自然写真家、びわこベース代表、日本両棲類研究所展示飼育部長。身近な生きものの生態写真撮影がライフワーク。滋賀県や京都府内の水族館立ち上げに関わる。『日本のいきものビジュアルガイド はっけん!』シリーズ(田んぼのいきもの、カナヘビ、小型サンショウウオ、ニホンイシガメ、ニホンヤモリ、トカゲ、イモリ、ニホンアマガエル、オタマジャクシ、オオサンショウウオ)、『野外観察のための日本産両生類図鑑 第3版』『同 爬虫類図鑑 第3版』、『世界 温帯域の淡水魚図鑑』、『日本産 淡水性・汽水性エビ・カニ図鑑』(いずれも緑書房)、『うまれたよ! イモリ』(岩崎書店)、『日本サンショウウオ探検記 減り続ければいなくなる!?』(少年写真新聞社)など著書多数。
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