はっけん!日本の爬虫類・両生類【第25回】ヨナグニスベトカゲScincella dunan (Koizumi, Ota et Hikida, 2022)

日本の最西端に位置し、サツマイモのような形をしている与那国島は、断崖絶壁に囲まれた周囲27キロメートルほどの小さな島です。亜熱帯気候に属し、平均気温は24.0度と過ごしやすいです。なんと、台湾まで約111キロメートルしか離れていません。

この小さな島には固有のいきものが多く暮らしていることが知られています。特に、爬虫類には今後この連載で紹介予定のヨナグニシュウダ(Elaphe carinata yonaguniensis)やヨナグニキノボリトカゲ(Diploderma polygonatum donan)など、「与那国」を冠し、与那国島でしか見られないいきものがいます。この島の固有種として、2022年に1種新たに仲間入りしたトカゲのことは、あまり知られていません。そのトカゲは、ヨナグニスベトカゲです。

画像1.ヨナグニスベトカゲ

日本最西端での新たなはっけん!

スベトカゲの体の特徴は、茶色っぽい体色で落ち葉に擬態した姿です。広葉樹林の森の林床で見られ、林道を歩いているときにカサカサ音がするとこのトカゲの可能性が高いです。似通った音を立てるいきものももちろんいるので要注意です。

ただし、音はすれども姿が見えないことが多く、逃げ足は非常に早いです。頭が小さく、落ち葉に潜り込みやすい姿をしており、四肢が短いため引っ掛かりが少なく、障害物をスイスイとすり抜けます。いずれにせよ、発見することはとても難しく、出会えるとラッキーないきものです。

画像2.日光浴をするヨナグニスベトカゲ

サキシマスベトカゲと同種と考えられていましたが、形態的・遺伝的に大きくことなることから2022年に新種として記載されました。近縁種であるサキシマスベトカゲは、体側にある暗褐色の縦条が尻尾まで伸びて上下が白色で縁取られていますが、ヨナグニスベトカゲの縦条は胴体部分のみで上下を縁取る白色はありません。

画像3.横から見たヨナグニスベトカゲ

学名の種小名”Dunan”は、与那国島の別名「ドナン」に由来します。まさに固有種にふさわしい名前です。与那国島は長い間他の島々と隔離され続けた結果、独自性の高い自然が残りました。ヨナグニスベトカゲのように、他の島と同種だと思われていたいきものでも、今後研究が進むにつれてさらなる発見があるかもしれません。その研究が進まないまま素晴らしい自然環境が壊れてしまうといけないため、しっかりと守ることが大切です。このことをしっかりと心に留めて、また近いうちに出逢いに行きたいです。そして、このいきものの魅力を、写真を通してたくさんの方に知ってもらえると嬉しいです。

画像4.与那国島の美しい自然環境で生きるヨナグニスベトカゲ

【文・写真】
関 慎太郎(せき・しんたろう)
1972年兵庫県生まれ。自然写真家、びわこベース代表、日本両棲類研究所展示飼育部長。身近な生きものの生態写真撮影がライフワーク。滋賀県や京都府内の水族館立ち上げに関わる。『日本のいきものビジュアルガイド はっけん!』シリーズ(田んぼのいきもの、カナヘビ、小型サンショウウオ、ニホンイシガメ、ニホンヤモリ、トカゲ、イモリ、ニホンアマガエル、オタマジャクシ、オオサンショウウオ)、『野外観察のための日本産両生類図鑑 第3版』『同 爬虫類図鑑 第3版』、『世界 温帯域の淡水魚図鑑』、『日本産 淡水性・汽水性エビ・カニ図鑑』(いずれも緑書房)、『うまれたよ! イモリ』(岩崎書店)、『日本サンショウウオ探検記 減り続ければいなくなる!?』(少年写真新聞社)など著書多数。

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